近年、海外各国で個人情報の保護が強化されており、日本でも2022年4月に「個人情報保護法」が改正された。また、AppleやGoogleなどの大手プラットフォーマーによるサードパーティーCookie※1規制強化の流れも相まって、デジタルマーケティングを巡る状況は大きく変化している。企業には、顧客のプライバシーを保護しながらデータを活用し、CX(顧客体験価値)を高めることが求められる。
個人情報保護法、6つの改正ポイント
今回の改正を大きくまとめると、個人情報の取り扱いが厳格化され、漏えい時の報告が義務化され、刑が厳罰化されている。改正ポイントは次の6つだ。
①個人情報の開示請求などの対象が拡大
②個人情報漏えい時の個人情報保護委員会への報告を義務化
③安全管理のために講じた措置の公表の義務化
④「仮名加工情報」の新設
⑤懲役刑・罰金刑の強化(特に法人の罰金刑の上限額が大幅引き上げ)
⑥日本国内の個人情報を取り扱う外国事業者も、罰則付き報告徴収・命令、立ち入り検査の対象
しかし、多くの事業者は改正にまだ対応できていない。個人情報保護委員会が中小規模事業者を対象に行った改正個人情報保護法に関する実態調査※2(有効回答数5232件)によると、法改正に「対応する(予定含む)」と回答した事業者は3割に満たず、「改正したことや改正内容を知らない」が4割、「改正内容は把握しているが何をしてよいかわからない」が1割という結果だった。
また、改正法により「情報漏えい時の報告が義務化」されたことについては、「知らなかった」との回答が75%を占め、「知っている」は22%にとどまっている。
「仮名加工情報」新設で企業のデータ活用を促進
一方、個人情報保護を強化しつつも、DX(デジタルトランスフォーメーション)が重要になった社会の現状を踏まえ、企業のデータ活用促進を目的に新しくつくられたのが、上記のポイント④「仮名加工情報」である。
仮名加工情報とは、個人情報の一部を削除して個人を特定できないようにした情報で、他の情報と照合しなければ個人を識別できないものだ。第三者への提供と、本人を識別する目的での照合は禁止されているものの、個人情報を仮名加工情報にすることで、マーケティング分析やサービス開発などに活用できる。
また、今回の法改正では、Cookieなどの識別子が「個人関連情報」と定義されたため、一定の条件で本人の同意が必要になるなど、取り扱い方に変化が生じている。リスクマネジメントという「守り」も重要だが、デジタルマーケティングで自社の競争優位性を高めるという「攻め」の観点においても、企業は対策が急務と言えよう。
▼参考資料