その他 2020.07.31

2020年度の国内貨物総輸送量
コロナ禍による民需総崩れで3年連続の減少へ


2020年8月号

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大で、医療機関やスーパーマーケットとともに極めて重要なライフラインとして再認識されたのが「物流」だ。電気やガス、水道がいくら正常に供給されても、食料や日用品の供給が止まれば自粛生活は破綻する。空っぽになったスーパーの陳列棚がニュースで報じられるたびに、不安を募らせた人も多いだろう。

 

パナソニックのハウジングシステム事業部が子育て世帯(858世帯)に行った意識調査で、コロナ禍の影響から配送量が増えた物流関係者へエールを募ったところ(自由回答設問)、「皆さんのおかげで私たちは外出自粛ができています。どうかお身体お気をつけください」「休むことなく毎日私たちに荷物を届けてくださっていることにとても感謝しています」など、回答総数の約87%に当たる745 件の応援・感謝のメッセージが集まったという。

 

とはいえ、現実は厳しい。日通総合研究所が発表した3月の「企業物流短期動向調査」によると、2020年第1四半期(1~3月期)の荷動き指数の実績はマイナス38と前期比9ポイント低下とさらに落ち込んだ。2010年第1四半期以降の10年間では最も低い水準となった。第2四半期(2020年4~6月期)の見通しはマイナス35と小幅ながら上昇に向かう見込みだが、緊急事態宣言の発令・延長の影響で下振れは避けられない模様だ。(【図表1】)

 

 

【図表1】荷動き指数の推移
(国内向け出荷量が「増加」回答割合-同「減少」の回答割合、-はマイナス)

※I…1~3月期、II…4~6月期、III…7~9月期、IV…10~12月期
出所:日通総合研究所「企業物流短期動向調査」

 

 

とりわけ、大きな影響を受けているのがトラック運送である。全日本トラック協会が行った調査によると、2020年3月の運送収入は前年同月に比べ平均マイナス1413万円となり、2月(同78万円)から大幅な減収となった。輸送トン数も3月は平均マイナス3033トンと輸送量が大きく減った。また、1~3月までの荷主からキャンセルされた金額を見ると、3月(1681万円)が最も多かった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で輸送キャンセルが多発したとみられている。

 

さらに輪をかけて深刻なのが、人手不足である。日本商工会議所と東京商工会議所が実施した人手不足の状況調査(2020年5月20日)によると、人手不足感が最も強い業種は「建設業」(77.1%)で、2番目に多いのが「運輸業」(71.5%)だった。また数年後(3年程度)の人員充足の見通しを見ると、「不足感が増す」との回答が最も多い業種は「運輸業」(60.3%)だった。「宿泊・飲食業」(56.6%)や「介護・看護」(53.2%)、「建設業」(52.0%)などを上回り、唯一60%を超えた。(【図表2】)

 

 

【図表2】数年後(3年程度)の人員充足の見通し
(全体集計・業種別集計)

※四捨五入の関係上、合計値は100%にならない場合もある
出所:日本・東京商工会議所
「『人手不足の状況、働き方改革関連法への対応に関する調査』結果概要」(2020年5月20日)

 

 

日通総合研究所は、2020年度の国内貨物総輸送量(上下期計)が44億7640万トンと3年連続で減少(前年度比3.4%減)し、マイナス幅も前年度(2.0%減)から拡大すると見込んでいる。特に上期はコロナショックの影響で民需が総崩れとなり、消費、生産、建設関連貨物ともに大幅なマイナスが避けられないとしている。(【図表3】)

 

 

【図表3】国内貨物輸送量の見通し
(単位:百万トン、カッコ内は対前年同期比増減率%、▲は減)

出所:日通総合研究所「2020年度の経済と貨物輸送の見通し(改訂)」(2020年3月30日)

 

 

一方、新型コロナウイルスの感染拡大を機に市場が拡大するとみられるのが「ラストワンマイル物流」市場だ。ラストワンマイル物流とは、最終拠点(物流センターや店舗など)からエンドユーザーへの物流サービスを指す。矢野経済研究所の推計によると、2020年度の市場規模(配送料ベース)は2兆円を突破する見込みという。

 

ただ、緊急事態宣言による外出自粛でフードデリバリー(ウーバーイーツや出前館など)や通販の需要が急増する一方で、ドライバー・配達員不足は解消されておらず、成長は限定的との見方もある。

 

とはいえ、現在は非接触型配達サービスへのニーズも高いことから、配達物を玄関横など指定場所に置いて帰る「置き配」の普及、また海外が先行している自動宅配ロボの実用化に向けた動きも進む可能性がある。