その他 2020.03.31

学習塾・予備校市場2019年の“光と影”
6年連続で市場拡大×倒産件数が過去最多


2020年4月号

 

 

景気変動に強い――といわれる学習塾・予備校業界が、近年、人口変動の影響で大きく揺れている。帝国データバンクの調べによると、学習塾・予備校(各種学校を含む)の倒産件数は2018年に46件に達し、過去10年で最多を記録した。少子化(生徒数の減少)と人手不足(人件費の高騰)が背景にあるとみられている。(【図表1】)

 

 

【図表1】学習塾、学校・予備校の倒産動向推移

出典:帝国データバンク「教育関連業者の倒産動向調査(2018年)」

 

 

矢野経済研究所がまとめた調査結果を見ると、2019年度の学習塾・予備校市場規模(事業者売上高ベース)は9750億円。前年度から0.3%増加し、2014年度から6年連続のプラス成長を維持する見通しだ(【図表2】)。学習塾・予備校市場は2009年度まで前年割れが続いたが、2010年度に増加へ転じ、それ以降は2013年度のマイナス(0.2%減)を除いて拡大基調となっている。

 

 

【図表2】学習塾・予備校市場の推移

※市場規模は事業者売上高ベース、2019年度は予測値
出典:矢野経済研究所プレスリリース(2019年11月28日)より作成

 

 

これは学習指導要領の改定で、“脱ゆとり”教育への転換(2008年~)によって学習量が増加し、学習塾ニーズが高まったことも要因とみられる。また、近年はモバイル端末(スマートフォン、タブレット)やパソコンを使ったデジタル教材の導入が進み、教材の売り上げや受講料収入の増加につながっている。

 

とはいえ、需要の母集団を形成する学生人口は今後も減り続ける。学習塾・予備校に通うボリューム人口(小学4年生~1浪生/10~19歳)の推移を見ると、2015年時点では約1168万人と総人口の1割近く(9.2%)を占めていたが、2030年に約979万人と1000万人の大台を割り込み、2065年には約656万人(総人口比7.4%)まで減ると予測されている。(【図表3】)

 

 

【図表3】10~19歳人口の将来予測(出生中位・死亡中位)

※1000万人割れ→2029年(993.1万人)
出典:総務省統計局「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2017年推計)」

 

 

未来の学習塾・予備校市場はこれからどうなっていくのか。そこで、総務省統計局の「家計調査」と国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計世帯数を用い、今後の動向を予測してみる。家計調査にある2人以上世帯の「補習教育」(学習塾月謝や予備校授業料など)の年間支出推移から、直近5年間の平均額(2015~19年:3万1474円)を算出し、それを社人研の核家族将来推計世帯数と掛け合わせてみたのが【図表4】である。

 

 

【図表4】学習塾・予備校市場規模の将来推計

※1…2020年以降の補習教育年間支出は直近5年平均額(2015~19年)
※2…補習教育費年間支出×核家族の将来推計世帯数=学習塾・予備校市場規模
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(2018年推計)」、総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」

 

 

2019年以前の学習塾・予備校市場は拡大と縮小を繰り返していたが、2020年(約9522億円)以降は縮小傾向が続きそうだ。市場規模は2035年に約8970億円と9000億円台を割り込み、2040年には約8644億円と2019年から約1割減る見通しだ。あくまで単純な予測にすぎないが、いずれにせよ従来の中心年代層(10~19歳)に依存を続ける学習塾・予備校事業者は、20年以内にじり貧状態を迎える可能性がある。

 

こうした需要の先細りを見越して、幼児教育や学童保育、社会人の学び直し教育(リカレント教育)、在日外国人向け教育、介護サービス事業への参入など、年齢層の拡大や事業の多角化に向けた投資が活発になると予想される。一方、生徒数確保のため、中小・中堅規模の学習塾の業務提携や合併・統合といった業界再編も進行するとみられる。