本稿では、タナベコンサルティングが2025年12月に実施した「2026年度 企業経営に関するアンケート調査」の結果に関して、“中堅企業“に着目して読み解いていく。
2026年度の業績見通し
2026年に向けた経営環境は、不確実性の高まりと成長機会の拡大が同時に進行する局面にある。こうした中、中堅企業では成長志向と慎重姿勢が併存している。
業績見通しとして、「増収増益」と回答した中堅企業は43.5%と一定水準を維持している一方で、前年度と比較すると「横ばい」や「不明」とする割合が増加している。
これは、将来の成長機会を見据えつつも、外部環境の不確実性に対して慎重な姿勢を取っていることを示唆する。
すなわち現在の中堅企業は、「攻め」か「守り」かの二項対立ではなく、両立を前提とした経営を求められる段階にある。
【図表1】中堅企業の2026年度業績見通し
2026年度の重点課題と優先テーマ
1.ビジネスモデル:既存と新規、“同時成長”の追求
中堅企業のビジネスモデル戦略としては、既存と新規、両軸での成長をねらう傾向にある。
「コスト構造の見直し(48.5%)」、「製品・サービスの差別化(42.0%)」 といった既存事業の強化に加え、「新規市場の開拓(38.1%)」、「新たな収益モデルの導入(37.0%)」が高水準となっている点が特徴的である。
さらには、デジタルマーケティングの強化やイノベーションの促進といったテーマにも一定数の関心が寄せられるなど、事業の広がりや構造変革を見据えた経営意識がうかがえる。
【図表2】ビジネスモデルにおける経営テーマ(企業規模別)
2.デジタル戦略:現場起点から全社展開への移行期
デジタル戦略においては、大企業と中小企業の“中間”に位置する中堅企業らしい傾向が見て取れる。
「ナレッジや業務ノウハウの共有・活用」は、大企業で24.5%と高く、中小企業では16.3%にとどまる。中堅企業はその中間に位置する17.7%となっている。
一方、「DX推進体制・専門組織の整備」(19.8%)は相対的に高い傾向だ。さらに、「業務プロセスの自動化・効率化(39.1%)」や「AI・生成AIの活用(48.8%)」といった現場起点の取り組みにも意欲的な姿勢である。
これらを踏まえると、中堅企業は戦略設計と現場活用を並行して進める傾向が見られ、全社展開を見据えた段階にあると読み取れる。
【図表3】デジタル戦略における経営テーマ(企業規模別)
3.人的資本:制度改革を軸とした“活躍の高度化”
人的資本戦略において中堅企業は、「人材育成プログラムの充実(53.9%)」、「人材採用戦略の強化(52.0%)」、次いで「人事制度・評価システムの見直し(40.0%)」が高くなっている。
これは、採用・育成にとどまらず、制度整備を通じて人材の価値を引き出す段階に移行していることを示すものである。
特に「人事制度・評価システムの見直し」が相対的に高い点は、資金・人材面で多くの難しさを抱える中堅企業だからこそ、新規人材の確保だけではなく、自社の人的資本を活かした組織としての成長力を高める仕組みづくりに関心が高いことの表れとも言える。
【図表4】人的資本戦略における経営テーマ(企業規模別)
4.企業価値向上:収益性と成長投資の両立
企業規模を問わず「利益率の向上」が最重要テーマとして位置付けられる中、中堅企業では「人的資本への戦略的投資(61.5%)」についても突出しており、際立った特徴となっている。
これは中堅企業が、企業価値向上を単なる収益確保にとどめず、人的資本を起点とした成長創出の手段として捉えていることを示唆する。
経営の高度化や事業の多角化といった高い成長ポテンシャルが期待されている中堅企業では、その実現において人的資本への投資というテーマがより一層重要性を増していると考えられる。
【図表5】企業価値向上における経営テーマ(企業規模別)
5.事業ポートフォリオ・M&A:成長戦略としての本格活用
中堅企業においては、「事業ポートフォリオの最適化(57.4%)」、「新規事業開発(51.2%)」が高く、次いで「戦略的M&A候補の探索(39.0%)」、「シナジー効果の最大化(38.6%)」も一定数の関心が寄せられている。
中堅企業は資金・人材面で厳しい制約がある現実を抱えつつも、内部成長に加えてM&Aを成長戦略の重要な手段として位置付けている点が特徴である。
【図表6】事業ポートフォリオ・M&A戦略における経営テーマ(企業規模別)
6.ブランディング:現場・顧客接点への実装
ブランディング戦略において中堅企業は、「従業員のブランド意識向上(51.5%)」、「顧客体験の最適化(25.1%)」といった方向性を示している。
広くブランドの認知向上をねらうというよりも、インナーブランディングによる自社の組織運営や顧客体験の質向上をより重視する姿勢を示している。
【図表7】ブランディング戦略における経営テーマ(企業規模別)
企業成長を支える戦略設計のポイント
短期的な業績対応と中長期的な成長の両立を図るためには、自社の成長段階や事業特性に即した戦略設計が不可欠である。
つまり、自社の“成長段階を踏まえた戦略テーマの優先順位付け“が非常に重要となる。
大企業では、資本効率の改善やブランド価値の向上、M&Aの活用など、中長期的な価値創出につながるテーマを戦略の中核に据えることが重要となる。中堅企業は、既存事業の収益力強化と新たな成長機会の探索を並行して進める中で、選択と集中を伴う戦略判断が求められる。
中小企業では、収益基盤の安定や人材確保・育成を優先しつつ、将来の成長オプションを見据えた取り組みを段階的に検討していくことが望ましい。
2026年、世界情勢がますます不確実性を帯びる中、中堅企業はより難易度の高い経営を求められている。
持続可能な企業成長の鍵は、個別施策の巧拙ではなく、経営全体をどこまで一体的に設計し、選択と集中を戦略的に行いながら実装できるかどうかである。
今後さらに、賃上げを核とした政府による企業支援も継続・加速化する中、中堅企業は100億宣言企業をはじめとする中小企業から背中を追われ、さらには勢力的に実力を伸ばしているライバル企業の動向にも常に目を光らせておかねばならない。
重要なのは、いち早く自社の勝ち筋を見出すことである。
中堅企業の持ち味である“機動力”を存分に生かして、次なる成長へとつないでいくことが期待される。
完全版のサマリーレポートはこちらより無料でダウンロードしていただけます。
本書では調査した全ての項目をグラフ付きで公開しています。
中堅企業に加え、大企業・中小企業の分析および経済環境を踏まえた提言を掲載していますので、是非ご覧ください。
■調査概要
| アンケート名: | 2026年度 企業経営に関するアンケート |
|---|---|
| 調査目的: | 「企業経営」の実態を把握し、今後の企業の成長発展に向けた取り組みを提言するため |
| 調査方法: | インターネットによる回答 |
| 調査結果: | タナベコンサルティング主催「経営戦略セミナー2026」に参加された経営者・経営幹部:1320件 企業経営に関するアンケート(2025年12月1日~12月19日):600件 計:1920件 |
※本調査では、アンケートにご回答いただいた企業において、従業員規模が2001人以上の企業を大企業、100人超~2000人以下の企業を中堅企業、100人以下の企業を中小企業として分類し、分析を行いました。