その他 2019.02.28

どこまで伸びる?「プラットフォーム」市場
アマゾンの時価総額、10年で15.5倍

2019年3月号

 

 

デジタル社会の急速な進行で膨大なデータが飛び交う中、それらを効率よく安全・安心な環境下で利活用できる「場」を提供する――。そんな「プラットフォーム」ビジネスが今、爆発的な支持を集めている。その“市場規模”を各種データから拾い上げてみた。

 

 

「GAFA」(Google/Apple/Facebook/Amazon)がこの10年間で急成長し、世界経済を席巻している。2017年5月末時点での株式時価総額の世界ランキング上位10社を見ると、トップのアップル、2位のアルファベット(グーグル)、4位のアマゾン、5位のフェイスブックは、いずれも10年前(2007年5月末)には圏外だった企業だ。(P30【図表1】)

 

 

【図表1】時価総額の世界ランキングの推移

出典:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室「IT新戦略の策定に向けた基本データ集<デジタル化の現状と課題>」(2018年4月27日)

出典:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室
「IT新戦略の策定に向けた基本データ集<デジタル化の現状と課題>」(2018年4月27日)

 

 

時価総額の伸びも著しい。グーグルは4.0倍、アップルは6.9倍、アマゾンに至っては15.5倍。ちなみに、2012年5月に株式を上場(米ナスダック市場)したフェイスブックは、初値を基に算出した時価総額が約1150億ドル(約9.1兆円)だった。わずか5年間で約5.4倍である。(P30【図表2】)

 

 

【図表2】時価総額の推移

出典:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室「IT新戦略の策定に向けた基本データ集<デジタル化の現状と課題>」(2018年4月27日)

出典:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室
「IT新戦略の策定に向けた基本データ集<デジタル化の現状と課題>」(2018年4月27日)

 

 

これら4社は、いわゆる「プラットフォーマー」である。プラットフォーマーとは、企業または個人が商取引や情報配信などを行うための基盤(製品、サービス、システムなど)を提供する事業者をいう。自らメディア(Webサイト、アプリケーションなど)を所有・運営するが、コンテンツは自ら制作しないことが多い。具体的な提供サービスとしては、検索、EC(電子商取引)、コンテンツ、決済、SNSなどである。(【図表3】)

 

 

【図表3】主なプラットフォーマーの提供サービス

資料:内閣府消費者委員会事務局資料「オンラインプラットフォームにおける取引状況等」(2018年5月15日)を基にタナベ経営作成

資料:内閣府消費者委員会事務局資料「オンラインプラットフォームにおける取引状況等」
(2018年5月15日)を基にタナベ経営作成

 

 

主な市場規模を見ていくと、最も大きいものはEC市場である。経済産業省がまとめた調査結果によると、2017年時点の市場規模は、BtoB(企業間取引)が317兆2110億円(前年比9.0%増)、BtoC(企業対消費者間取引)が16兆5054億円(同9.1%増)。プラットフォームビジネスではBtoCばかりに注目が集まるが、市場規模の総額はBtoBの方がはるかに大きい。(【図表4】)

 

 

【図表4】日本のEC(BtoB、BtoC)市場規模の推移(カッコ内はEC化率)

※EC化率:全商取引総額に占めるECの割合(BtoCは物販系のみ対象)出典:経済産業省「平成29年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備   (電子商取引に関する市場調査)」(2018年4月25日)

※EC化率:全商取引総額に占めるECの割合(BtoCは物販系のみ対象)
出典:経済産業省「平成29年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(2018年4月25日)

 

 

まずは、GAFAが主戦場とするBtoCについて見てみよう。BtoCのEC市場は「物販系」(物品の販売)、「サービス系」(旅行申し込みや飲食店予約、チケット手配など役務の提供)、「デジタル系」(電子書籍や音楽・映像・ゲームなどの有料配信)に大別される。2017年の市場規模は、物販系が8兆6008億円(7.5%増)、サービス系5兆9568億円(11.3%増)、デジタル系は1兆9478億円(9.5%増)である。

 

もうひとつ、BtoCから派生して急成長を続けているのが「CtoC(個人間取引)」だ。要は、消費者同士がインターネット上でプラットフォームを介し、モノやサービスを取引することである。その代表例が「シェアリングエコノミー(共有経済)」と呼ばれるもので、17年度の市場規模は716.6億円(前年度比32.8%増)と伸びが著しい。矢野経済研究所の予測では、2022年度に1386億円と17年度の約2倍に達する見通しだ。(【図表5】)

 

 

【図表5】シェアリングエコノミーサービス
国内市場規模推移と予測

※2018年度は見込み値、19~22年度は予測値出典:矢野経済研究所「シェアリングエコノミー市場の実態と展望2018」(2018年7月31日)

※2018年度は見込み値、19~22年度は予測値
出典:矢野経済研究所「シェアリングエコノミー市場の実態と展望2018」(2018年7月31日)

 

 

シェアリングエコノミーは、①モノ(フリマ、レンタル)、②空間(シェアハウス、駐車場など)、③スキル(家事代行、知識など)、④移動(カーシェア、ライドシェアなど)、⑤お金(クラウドファンディング)という5つに分類できる。このうち、特に注目されているのが「フリマアプリ」市場である。

 

フリマアプリの17年時点の市場規模(推計)は4835億円と、前年に比べ58.5%増と急激に拡大している。初めてフリマアプリが登場したのは2012年ごろで、わずか5年で5000億円近い巨大市場が形成されたことになる。

 

一方、BtoBのEC市場(2017年)を業種別に見ると、「卸売」(前年比12.0%増の94.0兆円)が最も大きく、次いで「輸送用機械」(同10.5%増の47.3兆円)、「電気・情報関連機器」(5.6%増の33.7兆円)、「繊維・日用品・化学」(7.5%増の31.7兆円)などが続く。また、最も前年比伸長率が高かったのは「産業関連機器・精密機器」(18.5%増の14.1兆円)だった。

 

BtoB-EC市場は、BtoC・CtoCほどではないものの成長基調を維持している。市場のパイが大きい上に、GAFAのような“ITガリバー”も存在しない。また、「2024年問題」(固定電話網のIP網への移行)への対応を控え、多くの企業で新規にEDI(電子データ交換)を導入する動きも進むとみられるため、利便性の高いプラットフォームを構築すれば、その分野に欠かせないインフラとして定着できる可能性は高い。

 

 

※NTT東・西日本が2025年1月までに固定電話回線網(PSTN)をIP網(インターネットを使用した電話サービス)へ移行する際、企業の受発注や決済で使われるISDN(総合デジタル通信網)サービスも終了するため、対応が遅れた企業に影響を及ぼすとされる問題。EDIやPOS(販売時点情報管理)、エレクトロバンキング(企業と銀行を通信回線で接続、振り込みや口座照会を行うサービス)、ファクス、企業WAN(拠点間接続)など、固定電話をデータ通信に使う企業は多い。2018年9月末のISDN契約数は280.8万件に上る。