どこまで伸びる?「プラットフォーム」市場
アマゾンの時価総額、10年で15.5倍
2019年3月号
「GAFA」(Google/Apple/Facebook/Amazon)がこの10年間で急成長し、世界経済を席巻している。2017年5月末時点での株式時価総額の世界ランキング上位10社を見ると、トップのアップル、2位のアルファベット(グーグル)、4位のアマゾン、5位のフェイスブックは、いずれも10年前(2007年5月末)には圏外だった企業だ。(P30【図表1】)
【図表1】時価総額の世界ランキングの推移
時価総額の伸びも著しい。グーグルは4.0倍、アップルは6.9倍、アマゾンに至っては15.5倍。ちなみに、2012年5月に株式を上場(米ナスダック市場)したフェイスブックは、初値を基に算出した時価総額が約1150億ドル(約9.1兆円)だった。わずか5年間で約5.4倍である。(P30【図表2】)
【図表2】時価総額の推移
これら4社は、いわゆる「プラットフォーマー」である。プラットフォーマーとは、企業または個人が商取引や情報配信などを行うための基盤(製品、サービス、システムなど)を提供する事業者をいう。自らメディア(Webサイト、アプリケーションなど)を所有・運営するが、コンテンツは自ら制作しないことが多い。具体的な提供サービスとしては、検索、EC(電子商取引)、コンテンツ、決済、SNSなどである。(【図表3】)
【図表3】主なプラットフォーマーの提供サービス
主な市場規模を見ていくと、最も大きいものはEC市場である。経済産業省がまとめた調査結果によると、2017年時点の市場規模は、BtoB(企業間取引)が317兆2110億円(前年比9.0%増)、BtoC(企業対消費者間取引)が16兆5054億円(同9.1%増)。プラットフォームビジネスではBtoCばかりに注目が集まるが、市場規模の総額はBtoBの方がはるかに大きい。(【図表4】)
【図表4】日本のEC(BtoB、BtoC)市場規模の推移(カッコ内はEC化率)
まずは、GAFAが主戦場とするBtoCについて見てみよう。BtoCのEC市場は「物販系」(物品の販売)、「サービス系」(旅行申し込みや飲食店予約、チケット手配など役務の提供)、「デジタル系」(電子書籍や音楽・映像・ゲームなどの有料配信)に大別される。2017年の市場規模は、物販系が8兆6008億円(7.5%増)、サービス系5兆9568億円(11.3%増)、デジタル系は1兆9478億円(9.5%増)である。
もうひとつ、BtoCから派生して急成長を続けているのが「CtoC(個人間取引)」だ。要は、消費者同士がインターネット上でプラットフォームを介し、モノやサービスを取引することである。その代表例が「シェアリングエコノミー(共有経済)」と呼ばれるもので、17年度の市場規模は716.6億円(前年度比32.8%増)と伸びが著しい。矢野経済研究所の予測では、2022年度に1386億円と17年度の約2倍に達する見通しだ。(【図表5】)
【図表5】シェアリングエコノミーサービス
国内市場規模推移と予測
シェアリングエコノミーは、①モノ(フリマ、レンタル)、②空間(シェアハウス、駐車場など)、③スキル(家事代行、知識など)、④移動(カーシェア、ライドシェアなど)、⑤お金(クラウドファンディング)という5つに分類できる。このうち、特に注目されているのが「フリマアプリ」市場である。
フリマアプリの17年時点の市場規模(推計)は4835億円と、前年に比べ58.5%増と急激に拡大している。初めてフリマアプリが登場したのは2012年ごろで、わずか5年で5000億円近い巨大市場が形成されたことになる。
一方、BtoBのEC市場(2017年)を業種別に見ると、「卸売」(前年比12.0%増の94.0兆円)が最も大きく、次いで「輸送用機械」(同10.5%増の47.3兆円)、「電気・情報関連機器」(5.6%増の33.7兆円)、「繊維・日用品・化学」(7.5%増の31.7兆円)などが続く。また、最も前年比伸長率が高かったのは「産業関連機器・精密機器」(18.5%増の14.1兆円)だった。
BtoB-EC市場は、BtoC・CtoCほどではないものの成長基調を維持している。市場のパイが大きい上に、GAFAのような“ITガリバー”も存在しない。また、「2024年問題※」(固定電話網のIP網への移行)への対応を控え、多くの企業で新規にEDI(電子データ交換)を導入する動きも進むとみられるため、利便性の高いプラットフォームを構築すれば、その分野に欠かせないインフラとして定着できる可能性は高い。
※NTT東・西日本が2025年1月までに固定電話回線網(PSTN)をIP網(インターネットを使用した電話サービス)へ移行する際、企業の受発注や決済で使われるISDN(総合デジタル通信網)サービスも終了するため、対応が遅れた企業に影響を及ぼすとされる問題。EDIやPOS(販売時点情報管理)、エレクトロバンキング(企業と銀行を通信回線で接続、振り込みや口座照会を行うサービス)、ファクス、企業WAN(拠点間接続)など、固定電話をデータ通信に使う企業は多い。2018年9月末のISDN契約数は280.8万件に上る。