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コラム
海外リポート
タナベコンサルティンググループ主催の海外企業視察リポートです。
コラム 2025.01.06

世界最高峰「Made in Italy」のクオリティリーダーシップ戦略 イタリア視察2024:ビジネスモデルイノベーション研究会

 
ヨーロッパ経済の一翼を担うイタリア。製品・サービスの特徴や背景のストーリーテリング、良質な顧客体験、高品質なサービスを軸に、各企業が独自のブランディングで唯一無二の価値を生み出しており、その価値は国境を越えて全世界のファンを引き付けている。ボーダーレスにイノベーションを探求するビジネスモデルイノベーション研究会は、2024年9月15日~22日に、9つの優良企業・組織の講演を聴き、現地を視察した。
   

視察企業 1 Fattoria Lavacchio 有機栽培にこだわる名門ワイナリーのCX

  家族経営で代々受け継いできた伝統を大切にしながらも、地域で最初にオーガニックに取り組んだ革新的な名門ワイナリー。化学肥料や農薬を使用せずにブドウを栽培することで、ブドウの品質を向上させ、自然の風味を最大限に引き出している。   並行してオリーブ栽培を行うことで気候変動・病害虫リスク、市場の多様性へ対応し、土地利用の効率化、収益源の多様化を実現。訪問者向けには、ワインの風味や香りを体験できるテースティングとともに、ブドウとオリーブの栽培農場・製造工場見学や、オーベルジュ(レストラン付きの宿泊施設)で、製品の背景や製造プロセスの体験を提供。顧客のより深い理解と愛着を育んでいる。   ヴェネツィア・ブラーノの街並み(左)化学肥料や農薬を使用せずにFattoria Lavacchioで栽培されたブドウ(右上)Moscattini Farm視察の様子。工場や倉庫を見学しながら製品のストーリーや製造方法を知ることで、より深い理解が得られた    

視察企業 2 Moscattini Farm 伝統と技術を融合させた6次産業CX

  Moscattini Farmは、ボローニャ地域の伝統と現代の技術を融合させた高品質な乳製品を提供。地域とのつながりを大切にしながら、持続可能な農業を実践している。イタリアを代表するチーズの王様「パルミジャーノ・レッジャーノ」は、原産地名称保護制度(DOP)によって厳正に管理されており、細かく定められた製造方法にのっとって、特定の地域で生産された牛乳を使い、熟練の職人が手作業で作っている。   ウシの飼育からチーズの加工・製造、直売所での販売、レストラン経営と、生産から販売までを一貫して行う6次産業化により、付加価値を高めている。また、工場・倉庫の見学とチーズの試食をしながら、製品の背後にあるストーリーや製造過程を消費者に伝えることで、製品理解や愛着を高め、ブランド価値を向上させている。    

視察企業 3 Ferrari Factory 高級スポーツカーとレーシングカーのみを追求

  人口2万人弱の小さな町であるマラネッロに本社を置くフェラーリは、高級スポーツカーとレーシングカーの製造に特化した自動車メーカーである。「跳ね馬」のシンボルとイメージカラーである「フェラーリロッソ」の赤色が象徴的で、世界中に多くのファンを持つ。創業者エンツォ・フェラーリの「F1(フォーミュラ1)で勝ち続ける」という情熱と夢がブランドの根幹にある。強い存在意義を持つ同社は、品質管理と顧客管理を徹底しており、オーナーには転売禁止やカラー変更の際の事前申請が義務付けられている。製品は全て受注生産で、高価格にもかかわらず最新モデルの購入には3年を要するほどに多くのファンから求められている。   フェラーリ・マラネロ博物館の展示品(左上)STEFANO BEMERの職人による技巧、長年にわたるナレッジが詰まった製品が人々の心を魅了する(左下)17世紀の織機を用いてLuigi Bevilacquaで製造されたファブリック(右上)サルヴァトーレ・フェラガモの手掛けた数々の作品が展示されている(右下)  

視察企業 4 STEFANO BEMER “革の魔術師”が生み出した紳士靴

  “革の魔術師”とも称され、伝統的な技術をベースに流行をリードしている高級紳士靴ブランド、STEFANO BEMER。オーダーメードで顧客と話し合いながら、ベストな製品を作り上げる。フィレンツェの職人による技巧、長年にわたるナレッジが詰まった製品は、顧客の心をつかみ、競争の激しいヨーロッパの紳士靴業界において短期間でトップブランドに上り詰めた。   顧客のニーズに応じたカスタマイズを重視し、独自のフィット感とイタリアンテーストを追求することで、顧客のロイヤルティーを高めている。オーダーメードの「ビスポークシューズ」を核として、パターン型・セミオーダー型をシリーズ展開することで、より多くの顧客に製品を提供し、ブランドの成長と持続可能な経営を実現している。    

視察企業 5 Luigi Bevilacqua ベネチア中心部に残る最後の織物工場

  Luigi Bevilacquaは、古代の城や貴族の家、教会の壁を飾る織物の名職人だった創業者の名にちなんで命名された。同社はベネチアの伝統的な織物技術を駆使し、顧客のニーズに応じた特注品を丁寧な職人のハンドメードにより提供。手作業による唯一無二の製品は高い付加価値を持っており、高価格帯での販売を可能にしている。機械の台数が限られる中、わずか5名のスタッフが、各自、専門的な技術を有し、職人としての誇りを持って仕事に従事する。   名門宮殿の修復プロジェクトに関与して歴史的な織物や装飾を再生したり、地域の文化遺産を保護して過去の美を現代に伝えたりするなど、歴史的・文化的に重要な役割を果たす。    

視察企業 6 Ferragamo Museum 世界中で愛されるラグジュアリーブランド

  フィレンツェを本拠地とする高級ファッションブランド創業者、サルヴァトーレ・フェラガモは、靴職人としての卓越した技術と革新的なデザインで知られる。ハリウッドで活躍する数々の名優の靴を手掛けたことから、「スターの靴職人」とも呼ばれる。   彼はイタリアの優れた素材と職人技に魅了され、ルネッサンスの芸術伝統を靴作りに取り入れた。紀元前のデザインや解剖学の知識を活用し、コルクや麻、キャンディーの包み紙など、独自のアイデアを取り入れた革新的なスタイルを確立。1960年にサルヴァトーレ氏が亡くなった後もフェラガモ一族が経営を引き継ぎ、靴だけでなく、バッグやアクセサリー、衣類など幅広い商品を展開する。    

〈講演〉 日伊文化コーディネーター 中橋 恵 氏 イタリアの都市住宅・地方創生

  通訳・コーディネート業務や、地域再生に関する調査・執筆を行う中橋 恵氏にご講演いただいた。   イタリアは少子高齢化や都市部への人口集中など、日本と同じ課題を抱えながらも、経済成長が見込まれる。主な要因は製品輸出と観光、住宅・不動産にあり、不動産分野へは政府が投資している。   経済成長の過程で、大都市には人口集中による負担がかかっているため、エリア開発や都市菜園の導入が進められているという。   また、イタリアの住宅開発には多文化共生の視点が求められており、ソーシャルハブの設立や地域特性を生かした観光地の開発が推進されている。例えばミラノの街は、ローマ時代から続く歴史的な建物が並ぶエリアと、再開発されたモダンな高層ビルや商業施設が建つエリアが混在することが特徴的だ。オリンピックなどのイベントで使用した建物やモニュメントも、再開発の際に取り壊さない工夫をし、実施されたことが記憶に残る “ミラノらしい”街づくりにつながっている。   執筆者 村上 幸一むらかみ こういち タナベコンサルティング 取締役   執筆者 植杉 友哉うえすぎ ともや タナベコンサルティング ストラテジー &ドメインチーフコンサルタント