
2025年2月にタナベコンサルティングが主催する研究会とトップマネジメントカンファレンスの参加者が合同視察したUAE ドバイ&アブダビ。
その経済とビジネス環境の現状をリポートする。
経済・貿易・観光の中心地、UAE
7つの首長国で構成されるUAE(アラブ首長国連邦)の2大都市・ドバイとアブダビ。世界各国から富豪が集まる世界屈指の富裕層マーケット、世界ナンバーワンを目指して建設される多数の巨大・高層建築物、世界有数の産油国でありながら未来を見据えた再生可能エネルギー都市の構想など、豊富な財源をてこに、世界最先端の取り組みを続ける中東のイノベーション国家だ。
「最後のフロンティアマーケット」と呼ばれているアフリカへのゲートウェイともなっており、天然資源だけでなく、金融・貿易・観光など多くの産業が発展を遂げている。1000万人超の人口のうち、エミラティーと呼ばれる自国民は全体の約1割程度という超多国籍国家であり、その多様性がイノベーションを推進させ、経済の成長と発展を支えている。
本稿では、2025年2月にタナベコンサルティングの研究会とトップマネジメントカンファレンス参加者が合同で視察した現地での学びをベースに、日本にとっては未知の世界でもあるUAE ドバイ&アブダビの経済、ビジネスの現状をリポートする。
社会環境や経営環境、ビジネス基盤といった、UAEの土台を支えるアブダビ。面積は国土の8割以上で、GDP(国内総生産)の約6割を占めている。一方、ドバイはハブ機能を生かして非石油経済をリードしている。経済構造としては、アブダビは石油・ガス。ドバイは経済・貿易のハブ機能に分類できる。
これまでUAEの経済を支えてきたのはアブダビの石油・ガス関連産業で、近年では太陽光発電や原子力発電の導入など、エネルギー源の多様化も推進している。ドバイは経済多角化に向けて、脱炭素事業、インフラ、農業、ヘルスケア、金融、AI、デジタル分野に注力している。エネルギー産業の中心はアブダビにあるが、貿易投資、交通運輸、金融、観光などのハブ機能はドバイにあり、両首長国がUAE経済をけん引している。
UAEが他の中東諸国と異なるのは、湾岸諸国(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、UAE)の中で特に経済多角化が進み、ビジネス環境が開かれた国であることだ。政治的な安定度が高く、外資規制が少ないため、国際企業の進出が容易であり、地域統括拠点が多く見られる。
一方、サウジアラビアは湾岸諸国最大の経済規模を持つが、石油依存度が高く、外資規制も多い。カタール、クウェートはエネルギー依存が強く、経済多角化が遅れ気味である。観光産業ではUAEが他国を大きくリードしており、特にドバイが世界的な観光ハブとして成長しており、総じてUAEは湾岸諸国の「経済・貿易・観光の中心地」と言える。
最後に、UAEへのビジネス進出の視点で優位性をまとめると、次の3点である。
1点目は、政治的・社会的に安定しており治安も良好であること。君主・首長制の下で、自国民に対する手厚い福祉や社会保障がある。
2点目は、生活・社会インフラが充実していること。物価は高いが、物やサービスは豊富で酒類に関わる規制も緩和された。
3点目は、英語が広く通用し、外資誘致を意識したビジネス環境の整備に注力していること。人口の9割は外国人で10年のゴールデンビザを取得可能、フリーゾーン(外資系企業誘致のための経済特区)、優遇税制などがある。
Expo City Dubai
エキスポシティー・ドバイは、2020年のドバイ万博のレガシー(遺産)を活用し、未来志向の都市として再構築された象徴的なエリアである。広大な敷地には、持続可能性(Sustainability)、モビリティー(Mobility)、機会(Opportunity)をテーマにしたパビリオンが再利用され、訪れる人々にインスピレーションを与えている。
その中心に位置するドーム状のアル・ワスル・プラザの天井は、プロジェクション用メッシュ膜のパネルでつくられた世界最大級の360度スクリーンとなっており、万博後もさまざまな式典や祭事が行われている。
サステナブルという観点で特に注目すべきは、パビリオン「テラ(Terra)」だ。エリアの中心部にある両面のソーラーパネルは97%が再生素材で構成され、その素材も自動車で15分程度の距離にある地元から調達されているため、物流エネルギーの削減にも成功している。これにより、持続可能性の理念を建築そのものに反映させた。
エキスポシティー・ドバイは、未来の都市設計や環境配慮型の開発を学ぶための生きた教材であり、訪れる人々・企業へ革新のヒントを提供している。

エキスポシティー・ドバイのパビリオン「テラ」にある太陽光パネルの「木」
The Sustainable City
ドバイのサステナブル・シティーは、砂漠に建設された中東最大規模の「持続可能都市」だ。都市開発の最前線を体現するモデルケースである。住宅だけでなく、商業エリア、モスク、学校、研究機関、さらにはスタートアップのインキュベート施設までが一体となり、生活とビジネスが共存するコミュニティーを形成している。
2030年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言したが、現時点ですでにカーボンポジティブ(排出する二酸化炭素よりも吸収・削減量が上回っている状態)を達成している。
市内の植樹は全て生産性を持ち、例えば、年間500tのデーツ(ナツメヤシの実)を生産。また、スタートアップ企業による垂直栽培も行われ、サラダや果物が地産地消の形で住民の食卓に届けられている。
環境負荷を最小限に抑えながら、経済活動と生活の質を両立させたこの都市は、未来の都市計画の指針となる存在である。

「サステナブル・シティー」の全体模型
BITEX REAL ESTATE BROKERAGE
アブダビで唯一、日本企業として不動産ライセンスを保有する不動産仲介会社・バイテックス社は、アブダビの政府資本企業「Modon(モドン)」と提携し、アブダビの不動産の販売や購入後のサポートサービスなどを提供している。
アブダビ・グローバル・マーケット内に位置する高級不動産プロジェクト「Muheira」など、安定した需要と価格上昇の可能性を持つハイエンド居住地を販売。単なる不動産仲介にとどまらず、投資家や企業への戦略的なアドバイスも提供している。

バイテックス社の講演が行われたフダリヤット島。Modon社による住宅開発プロジェクトが複数進行中
Masdar City
アブダビは、夏季の日中の最高気温が40℃を超え、時には50℃近くに達する都市である。この環境の中、石油資源ではなく自然エネルギーを活用し、気温を調整するスマートシティーとして建設されたのがマスダールシティーだ。同市は、面積6.5㎢にわたる巨大な開発プロジェクトであり、持続可能な社会の実現を目指して資源を最大限に活用している。
マスダールシティーでは、自然の力を利用してエリア全体の気温を調整している。太陽光発電に加え、エリア内に設置された高さ45mの「ウインドタワー(風の塔)」で、風を利用した省エネ技術を取り入れている。円筒状の構造を持つウインドタワーは、上部から比較的涼しい空気を取り入れ、地上に向かって流れる空気を霧で冷却することで、周囲の温度を下げる仕組みである。
さらに、マスダールシティーは、個人型の無人交通システム「PRT(Personal Rapid Transit)」を導入し、電気自動車(EV)や急速充電拠点、高度なコミュニケーションインフラを整備することで、信頼性の高い公共交通システムの実現を目指している。この都市は、石油資源に頼らない再生可能エネルギー開発の拠点と位置付けられている。

砂漠に建設されたゼロ・カーボン都市「マスダールシティー」
世界ナンバーワンへのこだわり
UAEの都市開発には、「世界ナンバーワン」への揺るぎないこだわりがある。ドバイフレームは、世界最大の額縁型建築として、過去と未来をつなぐ象徴的な存在。ブルジュ・ハリファは、世界一高い建物としてその名をとどろかせ、ドバイモールは世界最大級のショッピングモールとして、訪れる人々を圧倒する規模を誇る。
さらに、人工島パーム・ジュメイラは、世界最大の人工島として、建築技術と自然の融合を実現。アブダビに目を向ければ、大統領官邸の敷地内にある宮殿「カスール・アル・ワタン」は、世界的に美しい大統領府としてその威厳を放つ。
これらのプロジェクトは、単なる観光資源ではなく、UAEの国際的な競争力を高めるための戦略的な取り組みである。大胆なビジョンと迅速な実行力が、UAEを世界の舞台で際立たせる原動力となっている。
壮大なアラビア建築が映える「カスール・アル・ワタン」。UAEの文化と歴史を象徴するランドマークである

村上 幸一
むらかみ こういち
タナベコンサルティング 常務取締役

高島 健二
たかしま けんじ
タナベコンサルティング 上席執行役員

御舩 浩次郎
みふね こうじろう
タナベコンサルティング グローバルビジネスマネジャー