持続的成長を支える「サクセッションプラン」
HR エグゼクティブパートナー
古田 勝久(ふるた かつひさ)
自動車部品メーカー、食品メーカーの人事部門での採用・人材育成・人事労務業務を経て、タナベコンサルティングへ入社。現場で培ったノウハウを基に、戦略的な人事・組織の実現に向けて経営的視点からアプローチし、上場企業・中堅企業の成長を数多く支援している。著書に『経営者のための「戦略人事」入門』(ダイヤモンド社)。
「サクセッションプラン」とは、継続・継承を意味するサクセッションと計画を意味するプランを組み合わせた言葉で、「後継者育成計画」とも言われます。中堅・中小企業では「社長・取締役の後任は社長が決める」という暗黙の習慣が散見されますが、上場企業では「コーポレートガバナンス・コード」においてサクセッションプランの策定が推奨されています。
サクセッションプランの策定は、後継経営者の育成・指名について客観性・適時性・透明性を担保するのが目的で、ポイントは次の3つです。
❶ 取締役会が主体となって後継経営者のサクセッションプランを策定・運用する
❷ 役員の選解任基準を策定する
❸ 指名委員会などの設置・活用を通じた指名・報酬については独立社外取締役が関与する
コーポレートガバナンス・コードは上場企業に対するガイドラインですが、サクセッションプランに関する内容は「事業承継を見据える全ての企業に共通した指針」と捉えることができます。
サクセッションプランを取締役会が主体的に設計・運用することにより、優秀な後継者が育成され、自社の持続的な成長につながります。
サクセッションプランを検討するに当たっては、まず運用体制を決めます。ポイントは取締役会の諮問機関として「指名委員会」を設置すること。社外取締役を含めた取締役が少人数で構成することで、効率的かつ濃密な議論を進めることができます。
運用体制が決まればプランの設計に着手します。まず、求める役員像を描きます。ポイントは「理念(不易)」と「ビジネスの方向性(流行)」の2軸で検討すること。加えて、社外取締役や外部アドバイザーの意見・知見を取り入れ、客観性・透明性を高めることも必要です。
次に、候補者の人選基準を策定します。「経営者の育成には10年かかる」という長期的な目線の下、人事評価や外部アセスメントなどの情報を基に選抜基準・方法を策定します。
最後に、候補者の育成計画の立案・実施を行います。求める役員像との整合性を確認しつつ、①戦略的配置、②研修(個別・集合)、③アセスメントの3 本柱で育成計画を組み立てることが重要です。
戦略的配置では、取締役が意図的に、候補者へ経営チームを率いる経験や、部門の立て直しなど強固なリーダーシップを発揮する経験を積ませることが重要です。
「誰が育てるか(運用体制を決める)」「どうなってほしいか(求める役員像を決める)」「どう育てるか(育成計画を立てる)」が、サクセッションプラン策定のポイントです。