社会的価値視点に立った企業ブランディング
ストラテジー&ドメイン大阪本部 本部長代理
巻野 隆宏(まきの たかひろ)
専門分野は事業戦略の立案をはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたる。企業の持続的な変化と成長のサポートに取り組み、志ある企業・経営者のパートナーとして活躍中。「高い生産性と存在価値の構築」を信条とし、明快なロジックと実践的なコンサルティングを展開。建設業、製造業を中心に中・長期ビジョン構築において事業の選択と集中で高収益ビジネスモデルへの変革を数多く手掛けてきた。
2030年の達成を目指すSDGsに関連する、持続可能なビジネスモデルがもたらす経済的機会は12兆ドル(1ドル133円換算で約1600兆円)に達すると言われ、大きな市場を発見するチャンスがあります。経営戦略の構築には、サステナビリティ(持続可能性)が非常に重要なキーワードになります。自社が社会課題や環境課題に対して、どの分野で貢献できるかを見極めて計画・実行し、社会と企業のサステナビリティを同時に実現することが重要です。そのためには、自社が提供できるSX(社会体験価値)とは何かを考えることです。
SXを向上させるには、次の5つのプロセスがあります。①解決すべき社会課題を認識する、②事業で課題解決へ挑戦する、③社会課題解決事業の取り組みを社内外に発信する、④企業の社会的価値・企業価値をブランディングする、⑤新たな社会課題解決へ取り組む、です。このサイクルを回して社会的課題に積極的に関与し、公器としての責任を体感できる環境とブランドをつくることで、事業を通して社会課題を解決することで組織としての稼ぐ力が強化され、中長期的な経営への持続へとつながります。
ESG経営で長期的なブランド価値を高め、サステナビリティの可能性を高めていくことも大事です。E(環境)では「汚染と資源」「気候変動」にKPI(重要業績評価指標)を設定し、S(社会)は「顧客に対する責任」「人権と地域社会」、G(ガバナンス)は「腐敗防止」「リスクマネジメント」などに取り組み、社内外へ発信します。
事業戦略はTechnology(固有技術)とMarket(市場)。事業戦略を支える経営戦略はMoney(金)とMan(人)、Management(管理)。これらを組み合わせた「1T4M」の視点で、ESG経営に取り組むメリットを整理し、トップがリーダーシップを発揮して積極的に関与していくことが重要です。
サステナビリティやESGの関係性をステークホルダーと共有することで、企業のブランド価値は高まっていきます。そのために実施すべきステップを3つ挙げます。
1stステップ:「CI(コーポレートアイデンティティー)の確立」(ステークホルダーが共感できるものとして確立し共有する)
2ndステップ:「ソーシャルネットワークの形成」(社会的価値を持続的に向上させ続けるための仕組みを構築する)
3rdステップ:「ESGへの取り組み」(ESG経営に取り組む意志を固める)
このような取り組みを通じてSXを向上させ、事業に大きなインパクトをもたらす善循環を生み出していきましょう。