タナベコンサルティング・久保(以降、久保) 「UMU(ユーム)」の概要をお聞かせください。
小仁 当社は2014年にシリコンバレーで創業しました。2022年6月現在、208の国・地域でテクノロジーを活用した学習支援事業を展開しており、ユーザー数は延べ1億人。クライアントの中には、米国のビジネス誌『フォーチュン』が年に1回発表する全米総収入上位500社(フォーチュン500)のうち100社も含まれています。
UMUは当社が提供する、AIテクノロジーを活用したデジタル学習プラットフォームです。オンラインからオフラインまで幅広いスタイルの研修をワンストップで行うことができ、学びを自己成長につなげます。
UMUの特徴は、一方通行の学びからAIなどの活用によって双方の学びに転換していることです。「分かる」を「できる」に変える研修体験によって、企業の業績向上に寄与するだけではなく、従業員のキャリアアップや夢の実現に貢献しています。
久保 企業の成果を上げるための学習は、ありそうでなかったように思います。
小仁 これまで、HR(ヒューマン・リソース)領域は投資の成果があまり求められませんでした。ただ、今のような変化の激しい時代は、学びこそが企業の競争優位性につながります。本当の意味での業績向上や、イノベーションを起こす源は学びにある。そこに多くの企業が気付き始めたと感じています。
久保 最小限の時間やコスト、人員でいかに業績を上げていくか。生産性を上げるために、多くの企業はここ数年、積極的にDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んできました。多くの作業がシステム化される中、次に取り組むべきは早期戦力化のための人材開発や製品・サービス開発。本当の競争優位性に向けた戦いが始まっています。
小仁 実は、UMUのユーザーで最も多いのは営業部門です。新たな製品・サービスを広げるには製品教育が必要ですが、知識の習得だけでは不十分。製品・サービスの良さを訴求できないと口コミは広がらないからです。効果が見やすい営業部門に多く利用いただいていることは、他社との大きな違いと言えます。
久保 教育の成果が数字に表れやすいのが営業部門です。「できる」を実感できる研修体験が高く評価されているのでしょう。
小仁 学びを行動変容や成果に結び付けることを「パフォーマンス・ラーニング」と言い、鍵となるのが成果をどう定義するかです。パフォーマンスの測定方法には4つの段階があります。
第1段階は「認知」、知っている状態です。第2段階は「理解」、自分の言葉で説明できるかどうかです。第3段階は「記憶」、脳への定着です。そして第4段階が「業務適応」、実際にできる段階です。筋肉のように定着してパフォーマンスとして表れる状態ですが、第1~3段階と第4段階の間には大きな壁があります。業務適応できるかどうかの壁であり、ここを超える最良の方法が練習です。
久保 座学だけではトレーニングまでカバーできません。そこを支援できるのが特長ですね。
小仁 はい。練習で重要なのはフィードバックです。間違ったやり方を続けると悪い癖が付くため、アドバイスを受けて修正しながら練習するサイクルを回していく。そのサイクルをいかに多く回すかが上達のポイントになります(【図表】)。テクノロジーを活用することで質と量は大幅に向上します。
【図表】「分かる」を「できる」に変える学習デザイン
久保 フィードバックは対面研修が得意とする部分ですが、練習の回数は限られてしまいます。一方、座学は反復練習ができる半面、フィードバックが難しい。
小仁 おっしゃる通りです。一般的にタブレットやスマートフォンを使い、動画で製品知識を学ぶ仕組みは一方通行になりがちです。しかし、UMUは学習者が質問を投稿できたり、ほかの学習者がそれに答えたりと、情報が全員に共有されます。
さらに、学習後に理解度を測るテストが届いたり、現場で実施したロールプレーイングの動画をUMUにアップロードすると、AIが学習者の話すスピードや表情、製品説明の質などを評価してフィードバックしたりします。学習者は、フィードバックを参考に反復練習することでスキルが上がっていく。加えて、現場の成功事例やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)、集合研修の最善の方法を仕組みに取り入れると、時間と場所を超えて繰り返し練習することができ、業績向上につながります。