DXの領域について、タナベ経営では「ビジネスDX」「マーケティングDX」「バックオフィス(マネジメント)DX」「ヒューマンリソース(HR)DX」という4つの領域に分類し、それぞれに3つの推進カテゴリーを設けている(【図表3】)。本誌19ページからは、この4つの領域別に、DX実装戦略の基本と成功企業の取り組みを解説・紹介する。
【図表3】DXの4つの領域
DXにおいて、最も重要となるのは「トップダウンとボトムアップのバランス」である。すなわち、改善意欲やイノベーティブな視点を持った現場の社員からのアイデアを具現化するために、トップの強い推進力で全社を動かすことが重要だ。
現場のことを一番よく知っているのは、実際に手を動かしている現場の社員である。現場からの意見やアイデアを、トップが推進していくというプロセスなくしてDXは実現しない。したがって、自社にデジタルを実装するためには「トップ×マネジャー×現場メンバー×デジタル・開発担当者」をバランス良く配置し、プロジェクト形式で進めることが前提となる。役割の例としては、次の通りとなる。
トップ(責任者)
デジタル戦略意思決定、推進のための全社プロモーション
マネジャー
プロジェクトマネジメント、他部門との折衝、トップへの報告
現場メンバー
課題整理、解決策立案(アイデア出し)、実行フェーズでのPDCA
デジタル・開発担当者
外部パートナーなどのアライアンス、テクニカルサポート、実務担当者
ほとんどの現場メンバーは、日々の業務とDX業務を兼務することになるだろう。したがって、デジタル・開発担当者が専任でプロジェクトにリソースを投下できるよう、DX組織の構築が必要となる。
DXの実装プロセスは、大きく5つのステップに分けられる。具体的には、①検討→②分析→③設計→④実施→⑤評価であり、これらは全てのDXカテゴリーに共通する基本的なプロセスとなる。(【図表4】)
【図表4】DX推進の5ステップ
DXは「改善の連続」である。スタート時点で定めた目標に対し、何パーセント改善したか、何が改善できなかったか、どう変わったのか、モニタリングを通して細かく分析を行い、課題を1つずつ潰していく。このプロセスを徹底することで、社内にDXを浸透させ、最適な形で運用していくことができるようになる。実施に関わったメンバーだけでなく、全社員にアンケートやヒアリングを行い、社員の意見を取り入れていくことで、より良い形でDXを促すことができる。
定量的な評価に基づいて課題の分析を行い、再設計、システム改善、ツールの導入などを進めて徐々にデジタルを浸透させる。このステップを繰り返すことで、DXは実装されていく。
Profile
タナベ経営 取締役 戦略総合研究所 本部長
奥村 格 Itaru Okumura
大手メーカーにて営業を経験後、タナベ経営入社。「常にクライアントの立場で問題解決を図る」を信条に、事業戦略・営業サポートを軸としながら、その推進に当たってのプロジェクトマネジメント、風土改革、人材育成に携わる。九州本部副本部長を経て、2021年4月より戦略総合研究所本部長、同年、取締役就任。タナベ経営のマーケティング、プロモーション戦略の立案・推進に携わる。(株)リーディング・ソリューション取締役(非常勤)。
〈共同執筆〉
タナベ経営
戦略総合研究所 課長代理
久保 多聞 Tamon Kubo
タナベ経営入社後、主にHR領域(組織・人事・教育)におけるコンサルティング業務、階層別研修の集客・運営業務などに従事。その後2019年4月より戦略総合研究所に配属され、人材開発専門チームのリーダーとして、セミナー・階層別研修における企画・集客・オペレーションの全社統括を担う。現在は全社プロモーションのチームリーダーとして戦略推進に携わりながら、DX商品の開発プロジェクトのマネジメントや各種アライアンスの連携にも従事している。