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コラム
FCC FORUMリポート
タナベコンサルティングが年に1度開催する「FCC FORUM(ファーストコールカンパニーフォーラム)」のポイントをレポート。
コラム 2024.10.01

オンリーワンを加速させるライフスタイル創造戦略 タカショー

タカショー タカショー 代表取締役社長 高岡 伸夫氏  
“庭暮らし”というライフスタイルを提案
 
タナベコンサルティング・濵(以降、濵) 株式会社タカショーは、東証スタンダード市場に上場する国内最大手のガーデン・エクステリア用品メーカーです。まず、創業時のお話を聞かせてください。   タカショー・高岡氏(以降、高岡) 私は大学を卒業して建築金物商社に就職し、3年間の東京勤務を経験した後に退職しました。その後、郷里の和歌山県海南市に戻り、1980年に大学時代の音楽仲間とタカショーを設立。日本各地、世界各国への玄関口である関西国際空港まで約30分でアクセスが可能という地の利を生かせる海南市を拠点に、庭を起点とした心豊かな生活を提案するライフスタイル事業をスタートさせました。 創業当初は人材不足で苦労しました。職業安定所に通い詰めましたが、当社の希望にぴったりな人材はなかなか見つかりません。そのうち、新卒を採用してみようと考えて就職情報誌に広告を出すと、結構な数の応募がありました。東京や大阪などにある大学に入学した学生は、卒業して故郷に帰りたくても就職先がなかったのですね。そんな学生たちの思いを受け止める、キャッチャー的な存在になろうと思いました。新卒採用の1期生には、1998年に当社がジャスダック(当時)に上場した際に28歳で総務部長を務め、現在は専務として経営に参画している者もいます。    事業の特色をお話しください。   高岡 「庭」「外構」「建築」の3領域を中心に、各種ガーデン資材やエクステリア商品、屋外照明、非住宅施設の内外装施工まで幅広く扱っています。事業分野としては、設計・施工を必要とする商品を事業者(住宅メーカーやリフォーム店、設計事務所、建材商社など)向けに販売する「プロユース」、消費者が使うDIY商品をホームセンターや通販事業者などに販売する「ホームユース」、DIY製品を各国(米・英・豪・印・韓)のガーデンセンター・代理店・ECに向けて販売する「海外事業」の3つのセグメントで構成。このうちプロユースの売り上げが全体の約7割を占めます。現在は全国6支社10営業所を展開するほか、欧米、中国、豪州、東南アジアなどへ事業を拡大しています。    事業ドメインを「ガーデン」に絞り込んだのはなぜですか。   高岡 タカショー創業時の日本経済はバブル絶頂期へ向かう過程にあり、衣食住のライフスタイルが大きく変化していた時代でした。ただ、「住」については西洋式の間取りや外観など家屋ばかりが注目され、庭はほとんど重視されていませんでした。しかし、日本には坪庭や箱庭、盆栽、生け花といった庭づくりの要素を、日常生活の装飾や鑑賞に取り込む伝統的文化があります。家と対をなす庭を整備してこそ心豊かな家庭が実現すると考え、当時、誰も目を付けていなかったガーデンにカテゴリーを絞り、“庭暮らし”というライフスタイルを提案するメー カーとして出発しました。    業績の推移を教えてください。   高岡 近年は、コロナ禍では外出自粛の影響によるDIYブームで業績が大きく伸び、2022年1月期の連結売上高が207億円、経常利益は15億円と過去最高を更新しました。コロナ禍明けはブームの反動減と在庫調整による受注減、円安による仕入れ原価の上昇などから利益率で苦戦しましたが、DXを活用した販売促進や新商品の開発強化により、2024年1月期には連結売上高194億円を計上。中長期経営計画では2030年1月期に売上高500億円、営業利益50億円を目指します。  
経営計画書が「勝てる経営」の基本
 
 企業理念に対するお考えを聞かせてください。   高岡 私の郷里の近くの和歌山県和佐村(当時)は松下幸之助氏の出生地であり、子どものころからその生き様を学んで人生の指針としてきました。そして「終始一貫」の精神を尊び、ナンバーワンとなって社会に貢献できる会社になることを目指して、「私たちタカショーグループは常に変化を先取りして新たな価値を創造し、広く都市環境庭文化づくりに貢献するグローバルなオンリーワングループを目指します。」という企業理念を掲げました。 また、「より良い庭での暮らしをグローバルに提供する会社」をミッションとして、世界を意識したビジネスを展開しています。    創業当初から経営計画書を作成されていたとのことですが、その重要性をお聞かせください。   高岡 創業時、私は経営計画書のことを知りませんでした。中小企業家同友会に入会して最初の会合で経営計画書を見せられ、「経営が成り立つのは、経営戦略があってこそ」と言われました。創業の思いに基づいた経営資源に対する考え方を短期・長期に分けて明文化する経営計画書の重要性を知り、年末に和歌山のホテルにこもって経営計画書の作成に取り組む作業を10年間続けました。経営トップが目的を明確化して、それを実現できる組織づくりに励み、その後は徹底した運営を行う。それが「勝てる経営」の基本だと考えます。    経営計画書の内容を全社に浸透させるためには、社員との深いコミュニケーションが必要です。日頃から心掛けていることはありますか。   高岡 フレンド社員さん(パート社員)に理解してもらえるような言葉遣いで、全社員へ向けたメールを2001年から毎週欠かさずに発信しています。社員からは「会社を取り巻く環境や課題、経営トップの考え方がよく分かる」と好評です。また、Googleカレンダーなどを使って社員のスケジュールを全社的に共有できるシステムを導入しています。    
国内外へ拠点を広げライフスタイルを提案
 
 市場を急拡大させた拠点展開についてお話しください。   高岡 創業から間もない1982年、群馬県伊勢崎市に関東営業所(現・北関東営業所)を開設しました。1985年には自社工場(和歌山・海南市、奈良・曽爾村)を新設し、1986年に代表商品である「エバーバンブー」の製造・販売をスタート。エバーバンブーは優れた耐候性を持つ特殊強化樹脂を使用した人工強化竹垣で、市場シェア約70%を占めるヒット商品になりました。 そして1990年に開催された「国際花と緑の博覧会」(大阪花博)をきっかけに日本でガーデニングブームが到来。その需要の高まりに応じて福岡・愛知・徳島・千葉・東京など各地に営業所を次々と開設し、業容を拡大させました。 海外展開のきっかけは、米国ロサンゼルスのリトル・トーキョーを訪れた際に、ホーム・デポなどのライフスタイル事業のカテゴリーキラーの盛況具合を見てしまったこと。このような小売店に商品を供給できるメーカーが求められると確信し、準備を進めました。まず1995年に中国・天津市に初の海外子会社「天津高秀国際工貿有限公司」を設立。以降、台湾、豪州、ドイツ、カナダ、韓国、ベトナムなどに製造・販売拠点を開設しました。 また、欧州市場の強化に向けてガーデニングの本場である英国の園芸用品会社ベジトラグ社を買収したほか、米国、インド、フィリピンにも拠点を開設し、グローバルネットワークを構築しています。    
先進的なDX戦略で文化型ライフスタイル創出
 
 オンリーワンを加速させるDX戦略についてお聞かせください。   高岡 政府が2016年に提唱した「Society5.0(ソサエティー5.0)」とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の高度な融合により経済発展と社会課題の解決を両立させる「一人一人が多様な幸せ(ウェルビーイング)を実現できる社会」であり、その市場規模は2030年で760兆円と推計されます。 当社では「常に変化を先取りして新たな価値を創造し、広く都市環境庭文化に貢献する」というビジョンに基づいてSociety5.0に取り組み、園芸用品や外構資材を作って売るだけの「モノ売り」から脱して、ハード・ソフトを含めた「コト売り」によってガーデンライフスタイルという新たな価値を提案。「ウェルビーイングな暮らし」の実現を目指しています。 例えば、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)・MR(複合現実)といったXR(クロスリアリティー:現実と仮想世界の融合)ツールや、3D(3次元空間)情報に時間軸(時間帯や季節、天気など)を加えた4Dシミュレーションモデルを作成。従来の紙カタログだけではなく、ウェブやスマートフォン、HMD(ヘッドマウントディスプレー)などを通じ、百人百様の趣味・趣向に沿ったライフスタイルを提案しています。 また、人気住宅デザイナーや大手ハウスメーカー、住宅設備・建材会社などとコラボレーションを展開。家と庭が一体となった「5thROOM®(フィフスルーム)」を組み込んだ企画住宅やライフスタイルに最適な庭・外構のパッケージプランを訴求するほか、施工会社向けプラン検索サイトで生成AI技術による対話型チャットボットを活用するなど、変化を先取りして新たな価値を創造する取り組みに力を入れています。 さらに、テレビCMやSNS、オウンドメディアサイトを連動させた「DX型販売促進」を展開。放送と通信のクロスメディアにより、プロ向けコンテンツから一般消費者向けへのプロモーションを行い、認知度の拡大を図っています。    時代の流れを読みながら、現在展開している事業にどのような価値を付加していくかという観点でDXを活用しているのですね。今後の成長戦略をお聞かせください。   高岡 「リアルとデジタル空間のハイブリッド経営」を拡大していきます。リアルの「モノづくり工場」に関しては、子会社のガーデンクリエイトが鹿沼・徳島・和歌山の3工場で生産システムを本格スタート。屋外照明やネオンサインを製造するデジテック新工場も稼働を始めました。 デジタルな「ソフト工場」に関しては、2022年、鳥取県鳥取市に3Dパースや動画・VRなどの開発・販売を担う子会社のGLD-LAB.(ジーエルディーラボ)を設立。スマートフォン上で外構の施工イメージを簡単に作成できるシミュレーションアプリ、VRショールームの取り組み、メタバース空間上でスピーディーに外構プランを提案できるツールといった「空間体感型VR提案システム」を次々とリリースしています。    ハイブリッド経営戦略によって、どのようなライフスタイルを創造していくお考えですか。   高岡 これからはヨーロッパのような“文化型”のライフスタイルになっていくと思われます。日本でも50歳以上のマーケットが拡大するのを機に、ライフスタイルが文化型へ移行するでしょう。その中で平均寿命と健康寿命の差を縮めるような取り組みが求められます。このようなニーズに応えるのは「住民が自ら健康になれる住宅」の提供であり、当社の5thROOM®は昔ながらの“人が集って笑い合える暮らし方”を現代風に再現できるバイオフィリックデザインの商品になると考えます。    ウェルビーイングな暮らしの実現に直結しますね。最後に皆さまへのメッセージをお願いします。   高岡 企業に求められるものは、時代によって変遷します。時代の流れを見つめ、いかに自社を変革していくかが経営者の大きな課題と言えるでしょう。良き伴走者を得ることで、経営者は冷静に時代を見抜くことができると思います。    お話の内容を3つにまとめると、1つ目は地方で興した事業を早々に全国・世界へ展開できたのは、「ライフスタイルを創りたい」という創業の熱い思いを経営計画書で戦略として明文化し、社員と共有できたから。2つ目は、Society5.0に対応した先進のDX戦略によってモノ売りから脱し、ハード・ソフトを含めたコト売りへの転換を図っていること。3つ目は、リアルとデジタルを融合させたハイブリッド経営戦略によって文化型のライフスタイルを創出し、ウェルビーイングな暮らしの実現を目指していることです。本日はありがとうございました。     家と庭が一体となった「5thROOM®」を展開(上) GLD-LABでは、VRやウェブで住宅や外構のプランを共有できるサービスを展開(下) 家と庭が一体となった「5thROOM®」を展開(上) GLD-LABでは、VRやウェブで住宅や外構のプランを共有できるサービスを展開(下)  
PROFILE
著者画像
濵 大輔
Daisuke Hama
タナベコンサルティング ストラテジー&ドメイン ゼネラルパートナー 上場総合建設会社での注文住宅営業、リフォーム営業、広報企画を経て、タナベコンサルティングに入社。ハウスメーカーや建設会社の中期経営計画策定や長期ビジョン策定などの事業戦略立案、IT化構想確立支援や業務標準化支援などの業務改善や企業内大学(アカデミー)設立の支援などを担当。「絵に描いた餅に終わらせない実務に直結するコンサルティング」をモットーに、クライアントの課題に真摯に対峙している。