エコリング 代表取締役 桑田 一成氏
「何でも買い取る」「全て売り切る」リユースビジネスモデル
タナベコンサルティング・巻野(以降、巻野) 株式会社エコリングは、創業者である代表取締役の桑田一成氏が2001年5月に設立されました。ブランド品や不要品の買い取りを中心に、リユースサービス事業を軸に業界をけん引するパイオニア企業です。
エコリング・桑田氏(以降、桑田) 大学を卒業して7年間勤めた後、IT系企業を起業しましたが、より高い技術を持つ競合が現れてやめました。生活のために自宅で、身の回りの物をネットオークションで販売するうちに「これはビジネスとして成り立つ」と気付き、買取専門店を立ち上げました。しかし、資金がないのでボロボロな商品しか買えず、しかも早く全てを売り切らないといけません。
ただ、お客さまはもちろん「高く買ってほしい」のですが、それよりも「部屋をすっきりさせたい」から何度も利用されるのです。結果的に、必死になって編み出したのが「何でも買い取る」ことで、店頭から手ぶらで帰っていただくスタンス。質屋さんとは違う、当時の世の中にはないビジネスモデルでした。先行者利益で競争相手がなく、勢い良く事業を伸ばしました。海外展開やフランチャイズ事業、オークション事業も始めて、今は国内外21社のホールディングスグループです。
何でも買う、ということは、さまざまな不要品も買い続けるわけです。国内で徹底的に売る努力をして、それでも売れない商品はタイで販売します。また、フリーマーケットへの出品や、恵まれない生活環境の方々を支援したり寄付したりしています。買い取った物は100%リユースし、世界をもっとハッピーにすることを目標に日々、活動しています。
巻野 苦労の多いスタートから、何でも買い取り早く全て売り切る原体験が生まれ、顧客ニーズともマッチングして独自の強みになったのですね。創業以来23期連続の黒字で、コロナ禍も伸び続けた理由は何でしょうか。
桑田 2017年11月に立ち上げた「エコリング・ジ・オークション」(エコオク)が、コロナ禍で飛躍的に伸びました。買取専門店の伸びが鈍化し、私たちにできる新たなモデルとしてウェブオークションのプラットフォーム事業にもかじを切りました。
全国にあったリアル市場がコロナ禍で経営難になり、姿を消しました。でも、私は「雇用調整などで生活に困る人が増えるこんな時こそ、お金になる物を買い取る仕組みを動かさないといけない」と危機感を抱きました。企業体力が続く限り支援していこうと続けた結果、リアル市場を利用していたお客さまや取扱商品の物量が、一気に増えました。
巻野 事業モデルの転換と社会課題解決型の使命感が、成長につながりました。直近の利益率は10%超と非常に高収益で、本当に素晴らしい業績です。
戦わずに「共に勝つ」戦略
巻野 エコリングの使命感の根幹を成すのが、経営理念「価値を見いだす使命共同体」です。
桑田 リユース業界は江戸時代から明治、大正、昭和へと、扱う商品が移り変わってきました。私たちは時代に合わせて商品の価値を見いだし、ラインアップを変えることで永続する企業になれるということです。その思いから「価値を見いだす使命共同体」という経営理念をつくりました。
もう一つ、困っている社員がいたら、残りの全社員でバックアップし助け合う組織を目指すことも、「共同体」の言葉に込めています。
巻野 在りたい姿を、端的に分かりやすくまとめた一文で、社員の皆さんの旗印になっています。理念を実現する戦略も独特の考え方です。
桑田 切磋琢磨して業界自体を盛り上げる「共に勝つ」という考え方です。それは、戦わないということ。「戦いを略す」ことから本当の「戦略」が生まれます。競合他社と同じことをやるのは足を引っ張るだけです。それは競争じゃなく業界のパイを取り合う戦争で、何も生まれない。私たちがやるのは競争で、業界でまだ誰もやってないことをすれば邪魔にならないし、成功することで業界に気付きが生まれ、まねしてもらえば良い。そんな立ち位置で戦略を練り、全社員に伝えています。
巻野 戦略とは一般的に、ライバルにどう勝つかを考えます。「共に勝つ」はエコリングが先行して業界を引っ張り、同業他社にも新たな市場を提供していく「戦わない戦略」なのですね。
桑田 戦わないためには、競争相手を知る必要があります。やりたいことがあってもバッティングしたら、戦争になってしまいますから。絶対に戦わずに協調性を保ちながら、競合他社の社長になった気分で、どんな方向性へ進もうとしているのかを見極めています。必ず誰もやってない「穴」がありますから、そこを狙って進みます。
また、業界の慣習にそぐわず利益至上主義で高収益を上げるライバル企業からも、好ましくない感情はいったん抜きにして、そこに必ずある何かしらの「学ぶべき魅力」を研究し続けることも大切だと思っています。
マッピングしてブルーオーシャンを見つける
巻野 ライバルを知るアプローチも、独自の手法なのですね。
桑田 私は「ブルーオーシャンの見つけ方」と呼んでいます。戦略的なポジションとして誰もやっていないブルーオーシャンを確認する考え方です。
自社と競争相手の強みを「商品・サービス・技術、人財、財務、経営」の項目別に整理し、X軸とY軸に振り分けます。例えば、Y軸は売上高、X軸は事業者販売(BtoB)と一般顧客販売(BtoC)で考える場合、売上高が多いBtoCのポジションには有名・大手企業の競合がたくさんいて、参入しても戦いは避けられませんから「しちゃいけない戦略ポジション」となります。(【図表】)
【図表】ブルーオーシャンの見つけ方
出所 : エコリング提出資料を基にタナベコンサルティング戦略総合研究所作成
一方で、Y軸を在庫量、X軸を小売りとウェブオークションにしてプラットフォーマー市場を考えると、変化が生まれます。自社で在庫を持つウェブオークション企業はほとんどいないので、ここが「ブルーオーシャンの戦略ポジション」になります。全国に260店舗以上ある私たちは在庫量が豊富で、海外に店舗を構えて連携がしやすいのも強みです。そうやって数百、数千の組み合わせから、ブランド品専門の古物ウェブオークション事業「エコオク」のアイデアにたどり着きました。
巻野 まず自社を中心に置くこと。そして、強みを配置するX軸とY軸の決め方が大切です。数え切れない組み合わせが考えられますが、諦めずに検討し続ければブルーオーシャンが見つかるということですね。ライバルの設定やその強みのマッピングも、とても重要だと感じました。
桑田 その通りです。競争相手の実力や方向性を踏まえて、自社の強みをブラッシュアップし続けることが大事です。ただ、強みは明確に見えない部分があります。例えば、フランチャイズ(FC)事業の出店成功率が99%だった時も、それが自社の強みだと気付きませんでした。あるコンサルティングファームからFCビジネスの成功率が70%だと教わって、初めて強みであると分かったのです。
巻野 自社の強みを明確にするにはまず、「これを強みにする!」と決めることです。強みだと信じて突き詰めていく先に、別の強みが見つかることもあります。ぜひ、参考にしていただけたらと思います。
新たな挑戦としては、2021年に業界初、国内で7社目の「Bコーポレーション」※(B Corp)認証を取得されました。B Corp認証の環境分野で世界上位5%の「Best For The World 2022」表彰も日本で唯一、受賞されています。
桑田 当社は初年度の年商1億円からグループ年商400億円企業に成長する中で、事業規模に合わせた組織コントロールをしてきました。最初は「収益力を高めよう!」と言い続けましたが、やがて社会的な問題解決にも貢献しなければいけないという思いが芽生え、寄付やボランティアを続けてきました。
巻野 ボランティア協力で人員不足に陥り、収益力が下がると思い込んでいる経営者もいます。
桑田 でも実は、自社の技術やサービスで社会問題を解決する方法があるはずで、それは何だろうという切り口で事業を進めていくと、次の段階で融合し始めます。収益を上げるほど、事業をやればやるほど、社会のためになっていく。私たちの立ち位置は、捨てるはずの不要品を買い取ってリユースする事業と、日本のゴミ問題の解決を重ね合わせる、社会課題解決型企業としてのイメージです。
その結果、社員にも私たちの事業や仕事が世の中に役に立つ実感が生まれます。社風が大きく変わって「エコリングの社員」というプライドを社員が持ち始めたことが、最も価値ある成果だと思っています。
B Corp認証取得後は、全国の経営者から「認証を受けたい」という相談も増えました。認証を取得するプロセスが社風改善やブランディングにつながることが大切ですし、必ずプラスに働くので「ぜひ、チャレンジしてください」と伝えています。
巻野 社会性と経済性の両立は「言うは易し、行うは難し」です。中長期的なビジョンで、できなかったことが1つずつできるようになっていくことが何より大切です。
エコリングが実践したように、事業の成長が社会のためになり、それが社員の自負心につながる、良いスパイラルで社風が変わっていくことが、在るべき姿だと思います。
グレートリセット=SXでイノベーションを
巻野 さらなるエコリングの戦略ストーリーを教えていただけますか。
桑田 買取専門店から始まって、オークション事業やフランチャイズ事業を展開し、B Corp認証も取得して「イノベーションを起こしましたね!」と言われますが、私は今この時こそ、非常にイノベーションしやすいタイミングだと考えています。
経済学者のシュンペーターは「既存の技術+既存の技術」で「新しい価値」を生み出すと提唱しましたが、既存技術をどう掛け合わせれば良いのかは迷いがちです。しかし、今の時代には、非常に分かりやすいキーワードがあります。それは「環境保護関連+自社の技術=新しい価値」です。環境保護のために自社の技術で何ができるかを徹底的に考え、追求し続けることで、新しい価値が必ず生まれます。それが私たちの未来だと思っていますし、コロナ禍のダボス会議で「グレートリセット」と提唱されたSX(サステナビリティトランスフォーメーション)につながると思います。
全ての業界・企業が、SXの方向性にビジネスチャンスがあります。自社が持つ仕事や技術の1つずつを、どのように環境に優しい方向性へとかじを切っていくかが、今後強く問われる世の中になっていきます。1日でも早くアイデアを出し、かじ取りをして、取り組んでいただきたい。それが、私からのメッセージです。
巻野 SXで企業が成長し続けるイノベーションを体現し、さらに成長を遂げていくエコリングは、「何でも買い取る」「全て売り切る」という創業時からの強みに磨きをかけ、戦わずに「共に勝つ」という独自の戦略を実践しています。また、戦略ポジショニングは、X軸とY軸でどんな強みを軸に設定するかを検証しながらブルーオーシャンを見つけ出しています。
さらに、環境という世の中が避けては通れないテーマと自社の強みを掛け合わせるSXで、新しい価値を生み出すイノベーションを起こそうとしています。その全てが経営理念に通じる、見事な戦略ストーリーになっています。桑田社長、本日はありがとうございました。
※ 米国の非営利団体B Labによる国際的な民間認証制度。環境や社会に配慮した事業を行っている企業が認定される
PROFILE
巻野 隆宏
Takahiro Makino
タナベコンサルティング ストラテジー&ドメイン エグゼクティブパートナー
専門分野は事業戦略の立案をはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたる。中小企業、中堅企業から大手企業まで、数多くの企業の持続的な変化と成長をサポートし、志ある企業・経営者のパートナーとして活躍中。「高い生産性と存在価値の構築」を信条とし、明快なロジックと実践的なコンサルティングを展開。建設業、製造業を中心に、事業の選択と集中による高収益ビジネスモデルへの変革を手掛けている。