三洋貿易株式会社
1.新たな長期経営計画を策定
三洋貿易は、1947年に合成ゴムの輸入から事業を始め、化学品、自動車部品など取り扱い品目を増やしながら規模を拡大。現在はゴム事業部、化学品事業部、産業資材第一事業部、産業資材第二事業部、機械・環境事業部、科学機器事業部の6事業部体制で取引先のニーズに応えている。2013年には東証1部上場を果たし、2015年に策定した長期経営計画の目標「連結経常利益50億円」「新規投資案件5件以上」を3年で達成するなど、順調に成長を続けている。
さらなる飛躍のため、2018年に策定したのが中期ビジョン「VISION2023」である。スローガンに掲げた「最適解への挑戦」を合言葉に、基本戦略として「企業体質の強化」と「収益基盤の強化」を設けた。
【図表】「VISION2023」で掲げる基本戦略
2.既存事業を生かしながら深耕・展開を進める
収益基盤を強化するために設定した戦略は次の4つだ。
(1)事業領域の深化
(2)新規ビジネスの開拓
(3)グローバル展開の加速
(4)新規投資案件の推進
同社は「事業領域の深化」のため、あらゆる移動体を対象とした「モビリティー」、合成ゴムをはじめとした「ファインケミカル」、再生可能エネルギーの資材や畜産関連機器および飼料添加剤を取り扱う「サステナビリティ」、食品添加物や化粧品、在宅医療に関わる「ライフサイエンス」という4市場をメインターゲットに設定。既存領域で新しい付加価値のあるビジネスを仕掛ける計画だ。
2017年2月にスタートした、米・エンジニアリング会社のCaresoft Global(ケアソフト・グローバル)社との、高エネルギーX線スキャンによるベンチマークデータ販売はその計画の1つである。病院のレントゲン解析と同じ原理を用いて、自動車の構成部品、組付け手法、材質などのCADデータ化を行うエンジニアリングサービスだ。
「グローバル展開の加速」では、米国・中国・タイの拠点を中心にグローバル展開の加速を掲げる。同社は、自動車メーカーの製造拠点の海外進出に合わせる形で海外展開を進め、日本国内と同様のサービスを海外でも提供することで、顧客の信頼を獲得してきた。こうした柔軟な対応力を生かしながら、経済発展が著しいASEANを中心にさらなる成長を目指す。
「新規投資案件の推進」では、人間の心理状態を判断するセンサーの開発など、将来の成長市場を中心に優れた技術を持つ既存企業やスタートアップ企業への投資と連携を進めている。
3.さらなる「最適解」の提供を目指して
対外的な取り組みだけでなく、社内の体制整備にも着手している。例えば、「新規ビジネスの開拓」として2020年10月に「事業開発室」を設立したことが挙げられる。これまで事業開発は各事業部の中に存在しており、他事業とのシナジーが生まれにくかったという。
そこで、広い視野を持って新しいビジネスの種を見つけられるよう、6つの事業部を横断し、新たなビジネスチャンスを創出できるような組織をつくったのである。
VISION2023はすでに3年目を迎え、着実に成果を上げている。2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一時的に売上高と連結経常利益が落ち込んだものの、2021年度はV字回復を遂げた。
2度にわたる長期経営計画の策定で進むべき道標を定めた三洋貿易。企業体質・収益基盤の強化とともに付加価値の高いビジネスを創り出し、さらなる「最適解」の提供を目指していく。
PROFILE
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- 会社名:三洋貿易株式会社
- URL:https://www.sanyo-trading.co.jp/
- 所在地:東京都千代田区神田錦町2-11
- 設立:1947年
- 代表者:代表取締役社長 社長執行役員 新谷 正伸
- 売上高:760億円(連結、2020年9月期)
- 従業員数:413名(連結、2020年9月現在)
※ 掲載内容は2021年9月当時のものです。