その他 2017.09.29

vol.25 部下とのコミュニケーションに効く質問法

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2017年10月号

2つ目の質問目的は共感すること

國分 「質問目的、2つ目は、部下から情報を取って理解し共感するため。これも話題は人生の大問題ではなく、部下の日常のさりげないシーンから。例えば……『だいぶ日に焼けたね。そうか!昨日は接待だったよね、○○社さんのゴルフ大会、どうだった? おー、君も頑張ったねえ。え、それなりに楽しんだ?すごいぞ!お客さんと真剣に遊ぶ。つらいこともあるけど、大事だよね』。このように、尋ねつつねぎらっていくことが、2つ目のポイントだ」

部下の日頃の動きに関心を寄せ、苦労に共感することの大切さを強調していました。自分の仕事ぶりや、大変さを分かってもらえていると知った部下の、上司への信頼感は、部下のやる気につながりそうです。

 
3つ目は指導するための質問

國分 「質問技法3つ目は、相手ではなく、自分について問う、指導するための質問。私の疑問をあなたはどう思う?と自分の気持ちを相手に開いて尋ねる、自己開示を伴う質問技法だ。例えば部下が書いたあいさつ状や報告書の文章が、読みにくいことがある。学生の論文指導ではしばしばだ。ワンセンテンスが4行5行と長くなると読む側はつらい。それを『君、長過ぎるじゃないか!』と相手に直接ぶつけるのではなく、質問技法の3つ目“自己開示”で尋ねる。『どれが主語で、どれが述語と理解すればいいのか、私は迷うなあ?』。すなわち、“私は迷っている”と自己開示しつつ、尋ねていることになる。とはいえ、開示された相手が、理路整然と正解を語り始める、ということもなさそうだ。そんな時は『この主語とその述語を短くくっつけるようにしたら、お客さんにも分かりやすくなると私は思うが、どうだろう?』と提案するように質問するのがよい」

質問が詰問になっては、部下と上司の関係を悪化させます。

一方的に欠点を指摘するのではなく、質問で気付かせることに意味がある。これこそが「部下を育てる鉄則だ」「こういう時こそ、自己開示だ」。そんなふうにおっしゃっていたと記憶しています。

と、私から、國分先生の「名講義」のさわりを聞いた友人の反応はどうでしょう?

友人 「部下を持つって、みんな、大変なんだなあ(しみじみ)。3つ全部はともかく、質問技法の1つ目から始めてみることにします、じゃ!」

来た時よりも、ずっと明るい表情で、私の事務所を後にした友人でした。

(参考文献:國分康孝著『上司のための心理学』生産性出版)


筆者プロフィール
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梶原 しげる (かじわら  しげる)

早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20年のアナウンサー経験を経て、1992年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定審議委員も務める。

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