その他
2017.04.27
vol.20 おべっかの効用
2017年4月号
仕事を円滑に進める
詳細は原典に当たっていただくとして、いくつか例を挙げましょう。
「(客先から)いただいた名刺はしまう前に1 文字残らず読む」。受け取ってろくに見もしないでしまってしまう、なんてのはおべっかの風上にも置けない振る舞いです。
(ああ、これが憧れの○○さんのお名刺ですか、あ、役職もすごいなあ……)
こんな具合にうっとりした表情で眺めることで、相手に十分な「賛意・尊敬」が伝わり、好感を持ってもらえそうです。
また、相手への敬意や称賛を表すには、自分側を「低める表現」が原則です(拙著『すべらない敬語』新潮社)。自分を下げることで相手を高める。まさに戦略的おべっかになっています。
多くの事例でおべっかの「対人関係を促進させる力」「他者への好意、賛意を表す力」「仕事を円滑に進める力」を確認できます。
上司も、取引先も、もちろん私も。ひょっとしたら世界のYAZAWA も?意外にも「賛意・敬意・配慮」が香るおべっかは「嫌いではなさそう」です。
「他者への配慮は面倒」「仕事上の人間関係に気を使いたくない」「こびへつらう人生はまっぴら」。そんな考え方があって当然です。一方で、そうでない考えも、なくはないと知るのも、悪くないかも……しれません。
筆者プロフィール
梶原 しげる (かじわら しげる)
早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20年のアナウンサー経験を経て、1992年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定審議委員も務める。
\著書案内/
不適切な日本語
梶原しげる著/新潮新書
821円(定価)