vol.14 気の利いたあいさつは1日にしてならず
2016年11月号
メモはストーリー化しておく
見出し(タイトル)を付けた単語から「年齢・性別・職種」など多様な聞き手に対応できるよう、場面・客層に応じて使えそうなものを抽出、ストーリー化しておきます。
突然のスピーチに限らず、仕事仲間との雑談や番組の打ち合わせ、雑誌のインタビューを受けたりするとき、決まり文句のように言われるのが「最近、何か面白い話ありましたか?」です。
これは何も、私がラジオやテレビ業界の端っこにいるせいとばかりはいえません。ビジネスパーソンの日常会話にも「最近、何か面白い話ありましたか?」が登場することでしょう。
「最近、何か面白い話ありましたか?」は、いわば雑談を始めるときの常套句(じょうとうく)です。雑談ですから、イベントでの突然のスピーチに比べればハードルがぐっと低いとはいえ、「いや、別に」「さあ」ばかりでは「気の利かない人だなあ」と愛想を尽かされかねません。雑談でのネタのやりとりも社交マナーだからです。
「見出しを付けた単語集」は思った以上に使えます。好奇心のアンテナを伸ばさず、アンテナに引っ掛かった言葉をメモしない。メモを取っても放置したまま、見出しも付けない。これは大変もったいない話です。
面白い話は、それを捕まえようとしない人の前を素通りしてしまいます。スピーチだけでなく「最近、何か面白い話ある?」と言われたときのためにも「メモ作り」を続ける意味はありそうです。
メモの中から「これぞ!」と思うものを繰り出しても「なにそれ?」とスルーされることだってあります。しかし、「面白いですねえ!!」と感心される場合もあります。この瞬間こそ、単なる見出し付き単語がネタに成長するチャンスです。
書き留めておいた見出し付き単語がいろいろな人の好奇心にもまれて繰り返し語られるうち、1つの物語に昇華され、「なるほど!」と感心してもらえる完成度の高いストーリーが出来上がるのです。
「出会った言葉をメモする」→「忘れないように見出しを付けて保存する」→「他人に話し、共同作業で物語に仕上げる」。私は「ネタ」をこんなふうに作っています。
ネタさえあれば、突然のスピーチへの恐怖はだいぶ減衰します。