その他 2016.08.31

vol.12 目からウロコの敬語の力

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2016年9月号

敬語の機能その3
事態の変化を伝える働き

「ほら、あんた聞いてんの!? どこに耳付いてんのよ!!」

「うるせーな、なんだよ……」

こんな風に、普段は「和やかなタメ語」で親しみの会話を交わしていた妻が、急に敬語で話しかけてきたら、夫婦関係に「深刻な事態が発生した!」と察知すべきです。

敬語は、平和だったわが家に、劇的な変化が直撃した証しです。

「あなた、ちょっとご相談したい件がございます」

「え? そんなに改まった言い方して……。なんか……ありました?」

「私、見てしまったんです、あなたの大切な方からのお手紙」

「ギエー!!」

「認知なさるとか、なさったとか?」

「誤解です! 違います!! 説明させてください、あの、実はですねえ……」

「結構でございます。私、里に帰らせていただきます! 後は弁護士さんにお任せしておりますので、では」

普段は使わない敬語が妻や夫から切り出されたら、これまでとはまるで違った事態が勃発したということです。

「仲良し夫婦」から「赤の他人」へと変化した事態の急変を、きちんとした敬語の会話が的確に伝えています。告げられた夫に、いまさら何ができるかは分かりませんが、妻に殴り掛かられないだけありがたいと思いつつ、善後策を思案すべきです。