2016年3月号
苦手や失敗も誠実に語る時代へ
エントリーシートにあふれた「やる気、前向き、頑張り、成功」が、得意分野や特定領域だけで語られているとすれば、採用側と受験生の間のミスコミュニケーションが発生する恐れもありそうです。
テレビの仕事が大好きだから、テレビ局を志望したと言う学生がいたとします。「AD体験もあり、テレビの仕事が天職だと信じる」と語る学生と、「自社に貢献できる人を採用したい」という採用側の方向が食い違うことは、十分に考えられるでしょう。志望者がテレビの仕事を「番組制作」という狭い範囲でしか見ていない可能性があるからです。
テレビ局には制作部門以外に、編成もあれば、報道、人事、営業、総務、ネットワーク、デジタルコンテンツ、事業、知財などさまざまな部局があり、それぞれの所属部門で役割を持って働くことが求められます。
入社が決まったあと配属先でこんなことになったら最悪です。
「え? 法務? コンプライアンス担当ですか? ゲ! 法学部じゃないし!」
特定分野での優秀さを本人が強烈にアピールするエントリーシートより、学校側が提出した、より客観性の高いと思われる履修履歴の方が、公平な判断が可能だとの論調が広まっています。同時に「他者に向け、自分の美点を言い募る人は、頼もしい人というより自信がない人だ」というマイナスな印象も一般に共有されてきました。
エントリーシートの自己アピールや見当違いな自慢話は、近々姿を消すことになるかもしれません。今後は「無理やりな自己アピール、自慢話の時代」から「自分の失敗やドジを正直に、誠実に語る人の時代」に変わる予感がします。
皆さんの会社を目指す若者たちは今、このタイプの採用面接に向け対策を練っているようです。
筆者プロフィール
梶原 しげる (かじわら しげる)
早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20 年のアナウンサー経験を経て、1992 年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49 歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定審議委員も務める。
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