その他 2016.02.29

vol.6 どんな人材を採用するか 自慢だらけの自己PR
梶原しげる

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2016年3月号

自慢話に代わる新たな判断材料に注目

近頃、就職面接で注目されている形式に、「履修履歴面接」があります。
採用面接の時に、エントリーシートではなく、学校側が学生の学習履歴を記した「履修履歴書」を見ながら学生に質問する面接形式をいいます。

詳しいことは『履修履歴面接』(辻太一朗著、東洋経済新報社)をお読みいただくとして、私が「勝手に感心したポイント」を書き連ねてみることといたします。

冒頭で紹介した、就活に成功した先輩や面接必勝法がしばしば説いている「学業成績にこだわらず、サークル活動やバイト、ボランティア活動など、課外活動での活躍ぶりを聞き取ることこそが、採用面接のポイントだ」なんて話を一方的に信じることは賢明ではない、というのが辻さんのお考えのようです。私はこれまた勝手に、大いに共感しました。

サークル、バイトなど課外活動は、それに関わる若者自身の好み、趣味嗜好で選択が可能です。「面白そうだ」と思って始めたサークルも、「そうでもない」と思えば、辞めて次を探す自由が担保されています。なぜならそれが課外活動だからです。

一方で履修履歴は、学業成績だけでなく、全ての学生個々人の、客観的に標準化された学校での就学実態を表しています。自分で選んだ主観的なタスクの結果ではなく、与えられた課題を、指定された範囲で履修しなければ単位が与えられません。決められたミッションにどう対応したのか? 客観的な履修の記録が全てそこにあります。

例えば、他に比べて評価の低い科目があるかもしれません。そこについて問えば、苦手をなんとか克服しようと努力したが果たせなかった、その学生の無念さや何かの事情が聞けるかもしれません。単に粘りの足りない学生と分かることもあるでしょう。

少なくとも客観的なデータをもとに公平な質問ができるというのは、人物評価において大きなメリットです。学生がどういう態度で、どういう考えで、与えられた課題にどのように取り組んだのか? 取り組む資質があるのか? どういうことに関心を向け、どういう解決策を見いだす傾向にあるのか? 単なる学業評価ではなく、気になるポイントを拾い上げ、対面での面接で直接、疑問点を本人にぶつけて「本性」をあぶり出すことも可能です。

客観的な記録から、コツコツやる人か、爆発力のある人か、多様性のある人か、意欲はどうかなど、仕事に必要な能力を判定できる可能性が高まるのではないでしょうか。