2016年3月号
今回は、企業にとって重い課題「採用」を、あえて軽く語ってしまいたいと思います。
「どんな人材が求められるのか?」。学生は日々その答えを探しさまよっています。
私が「口頭表現トレーニング」を教えている学生たちも、「就職」という言葉にとても敏感です。講義中、学生の集中力が途切れたときは「例えば就職面接では」なんてことをちらっと話に挟むと、すっと振り向く空気が露骨に感じられます。それを分かって、「就職面接では」なんてことを発する私の方がよほど露骨であくどいのですが。
学業より課外活動? 就職面接の不思議
学生は、先輩たちからこんな話をしばしば聞かされているらしいのです。
「公務員を目指すなら別だが、企業への就職では、学校の成績は役に立たない。それより学生時代に情熱を燃やしたサークル、アルバイト、ボランティア。活発な課外活動で活躍する自分をアピールする方がより評価される。講義は単位の取りやすいものを集めて、必要最低限を履修しろ」
「エントリーシートは見栄えが命だ。課外活動では肩書をもらっておけ。バイト先でも“○○チーフ”なんていう称号がもらえるなら、もらっておけ。学生時代、好きなことで活躍した証しをしっかりアピールしろ」
また、先輩だけでなく、いわゆる「就活本」にも、「勉学だけでなく、趣味やスポーツなど自分の好きな分野でアピールできるものがあれば有利。人生の棚卸しをしておきましよう」という調子で書かれています。
その手の就活本を見せながら、学生が涙ながらに訴えるのです。
「自分はサークルにも入らず、バイトも週3日のコンビニだけで、これといった売りがないのですが大丈夫でしょうか?(半泣き)」
彼が指し示す“面接必勝法”を読んでみたら、確かに「学校の授業を真面目に受けなさい」というように、本業を強調する内容のものは、むしろ少数派です。ほとんどが、「学生時代に経験した中で得た、優れた自分を主張する自己アピールをしろ」と訴えています。
自己をしっかり主張することは大事ですし、自分の優れた点を適切に伝える技も心得ておくべきでしょう。しかしながら、インターネット上では「欠点は押し隠し、いかに自分が“イケているか”を並べ立てる方法」が親切に書かれています。
「自責的で落ち込みがちな人」には、自分の長所探しを通して、「自分も捨てたものじゃない」という前向きな感覚を取り戻してもらうことが大事です。自信を失ったうつ傾向の人に使われる心理技法の1つでもあります。
さて、自分の良いところを探し出すまではいいとしても、それをそのまま他人に自慢げに語るのはいかがなものでしょうか。
日本では昔から「自慢は控え、謙虚であれ」と教えられてきました。若者世代は、私たち厚かましいオヤジ世代以上に自慢を慎みます。自慢するヤツは「空気を読まない」と仲間はずれにされるからです。ところが、ひとたび就活となると「目一杯、自分をアピールしろ」と、なぜ自慢を勧めるのでしょうか?
仲間への自慢は「ヤバイ」が、採用担当相手なら「自慢しまくりでも嫌われない、いや評価される!」とタカをくくっているのでしょうか?