Vol.40 語彙力がないと、勉強しても意味がない!?
2019年1月号
若手棋士の語彙力にビックリ!
西岡さんの著作でさらに語彙ブームが加速していますが、ブームのきっかけはこの方だったと、私はにらんでいます。大東文化大学の山口謠司先生です。
私の担当するラジオ番組にしばしばご登場くださる山口先生が書き上げたばかりの著書を手にスタジオにお越しになったのはもう2年ほど前、2016年も押し詰まったころ。
「これなんですが……」と手渡して下さった本のタイトルを見て「これ、絶対売れますよ!」思わず声を上げたのが『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)でした。
「マジで、ガチで、ガッツリ、ぶっちゃけ、ほぼほぼ大丈夫」なんて感じで十分OKだった学生時代を終え、社会人になった人々の多くが「これだ!」と、すがり付きたくなるようなタイトルもあり、若い読者だけでなく広い世代に読まれ、あっという間に大ベストセラーになりました。
私を含むおじさんたち、ひょっとして本誌をお読みの皆さまの中にも「まさに自分のことを言い当てられた気がする」と、慌てて書店に駆け込んだ方がいらっしゃったかもしれませんね。山口先生の本以外の語彙力本も、書店のビジネス書籍コーナーを中心に平積みされ、次々にベストセラーとなりました。
折しも当時、天才棋士として頭角を現し始めた中学生だった藤井聡太四段が次々と大先輩を撃破して、そのたびに発した勝利の感想も、語彙力ブームに拍車を掛けたように感じます。インタビューで口にした「強くなるのが僕の使命です」。小林裕士七段に勝利した場面での「自分の実力からすると望外の結果」。さらには、澤田真吾六段を下して連勝記録を20に伸ばした時の「僥倖としか言いようがない」など、語彙力満載の受け答えがニュースで繰り返し茶の間に流され、自らの語彙力不足に不安を抱いた人々の間で広がった「語彙力を付けなければ……」という切迫感が、「語彙力ブーム」をあおっていったのかもしれません。