その他 2018.09.28

Vol.37 口うるさい上司に突っ込まれがちな言葉

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2018年10月号

「うがった見方」はどんな見方?

第3問!会議で発言した若手社員が上長から言われました。「君は、うがった見方をするね」。言われた若手は、どうリアクションしてよいのか戸惑いました。ケチをつけられたのか、褒められたのか、判断できなかったからです。

さて「うがった見方」の本来の意味はどっちでしょうか?

①「君は、ひねくれた、人を疑ってかかるような見方をする」→ネガティブ評価

②「君は、物事の本質を捉えた見方をする」→ポジティブ評価。

今のところ、正解は②「物事の本質を捉えた見方」です。うがった見方の「うがつ=穿つ」は「表面に出ていない、本当の姿を捉える(三省堂国語辞典第7版)という意味だからです。明鏡第2版ではもっとハッキリ「プラス評価で使う。深読みしてツボをはずす意で使うのは誤り」とネガティブ評価を完全否定しています。辞書、参考書はこぞって②のポジティブ評価であると断言しています。

しかし、部下が「うがった見方」の本来の意味=ポジティブ評価を知っていたとしても、上司側が本来の意味で発言しているのか、本来とは違う意味で声を掛けてきたのかは不明です。なぜならこんなデータがあるからです。国語に関する世論調査(2011年度)によれば10代から60代以上の全世代で「疑って掛かるような見方をする」を本来の意味だと選択しています(全体では①の48.2%に対し②の26.4%)。辞書とはまるで逆の結果ですね。

第3問の正解発表のところで「今のところ」とあえて添えたのは、本来の意味と違う使われ方が定着すると、辞書にも「俗に」と断り書きを入れながら本来の意味とは違う意味を併記し始めるため、一概に「誤用」「不正解」とは言えなくなる場合もあるからです。

とはいえ、自分にとってなじみのない言葉を見たりを聞いたりしたときは、まず辞書で確認。本来の意味を知った上で、本来とは異なる解釈の存在を合わせて知っておくのが賢明です。


筆者プロフィール
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梶原 しげる (かじわら ?しげる)

早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20年のアナウンサー経験を経て、1992年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定審議委員も務める。

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