その他
2018.04.27
vol.32 “脱サラ”して分かった会社という居場所
2018年5月号
社内の皆に相談
ところが程なく、会社を、サラリーマンを辞めることの本当の意味を思い知らされることになりました。
私が勤務していた東京のラジオ局は、おそらく日本でもまれに見るほど「人情味あふれる温かな会社」でした。そもそも互いを役職で呼ぶ習慣がありませんでした。例えば、村田部長なら「むらさん」、吉田次長は「よしさん」とわれわれ部下は呼んでいました。上司が私を「梶原くん」などと呼ぶのはお小言の時だけで、普通は「おい、梶」とニックネームの呼び捨てです。男性の年長者から「梶原さん」と呼ばれたのは、入社試験の時だけです。
「会社を辞めてフリーになる」という「ぶっちゃけ相談」を、他局ではあり得ないほどたくさんの人にして、周りのいろいろな助言に救われる思いでした。
転職本のセオリー「退職意思を伝える順番を間違えると大変なことになる」からすれば、あってはならない辞め方だったようですが、そういう懸念はありませんでした。良くも悪くも「家族的な会社」だったわけです。
だからこそ、ショックだったのは退職手続きでのことでした。小さな会社ですから、部署が違ってもみんな顔見知りです。エレベーターで顔を合わせれば「おお、梶!昨日のショッピングコーナーで紹介していた羽毛布団、本当に買いか?よかったら買っちゃうよ?」なんて、いつも声を掛けてくれるA先輩が変にかしこまった表情なのです。
私も、いつものように「どうも、どうも」と笑顔を振りまく空気ではないことを察知しました。