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コラム
有識者連載
各分野の有識者や、さまざまな領域の専門家による連載です。
コラム 2017.08.31

vol.24 話を終わらせてしまう、こんなひと言

shigeru_banner 2017年9月号 社内でのこんなシーン覚えがありませんか? 休み明けの月曜日。職場では、週末のさまざまな話題が交わされるチャンスもあることでしょう。 「週末、家族で北海道新幹線に乗って、函館まで行っちゃってさあ、てへへ」 さあ、こんなふうに始業早々、直属の上司(40歳前後の男性)から話し掛けられた若い部下のあなた。 何と答えますか? 「仕事と直接関係もない、どうでもいいオヤジの雑談に、どう答えようと、勝手じゃないですか?」 なーんてふうに思ったら、あなたの「返しのひと言」が人物評価に直結して大変なことになる……。今回は、そんな驚愕の事実について述べていきます。 いつもに比べると「グッと軽めなお話」ですが、すみません、お付き合いください。 shigeru_banner 2017年9月号
社内のコミュニケーションを円滑にする雑談 上司 「今年初めて秋刀魚食っちゃったよ!」 さりげなく、部下とのコミュニケーションを取ろうとするおじさんは、どうでもいい話題を軽く振ってくるものです。変に仕事のことを話題にすれば部下が緊張したり、構えたりする。どうでもいい雑談で職場の空気を和らげたいと、上司なりに気を使っているのです。 「季節ネタ」「食べ物ネタ」ほど無難なものはありません。それを糸口に「和んだ会話」のやりとりを2~3往復させてから、本題の仕事に入っていく。これだって、「大人のコミュニケーション」の代表選手といえますね。 「何はともあれ、結論から述べよ」と、ビジネス書は説いているかもしれませんが、風通しの良い職場では「適度な無駄話」が仕事を円滑に進める潤滑油の役割を果たすと、入社4~5年も過ぎれば皆、経験から理解します。 適切な言葉のやりとり、つまり「投げられた話題にしっかり反応する技」は、思った以上に重要なのです。「そうなんですか? いいっすねえ! 駅前の居酒屋から煙がモクモク上がって良い匂いがしてましたが、あれ、秋刀魚の塩焼きだったんだあ。今年のは旨いんすかね、課長?(^o^)」 こんなふうに上手に会話をつなげられる部下なら、上司からの受けも上々です。 上司 「コイツなら、お客さまのところでも、臨機応変にコミュニケーションが図れそうだ。今度の接待に連れて行こうか?」 なーんて思ってもらう可能性が出てきます。
 
会話に距離をとってしまう「ね」 これとは逆に、会話を「盛り下げてしまう、ダメな受け」がこれです。 「そうなんですね~」 こんな返しを受けたことのある人も多いのではないでしょうか。 「そんな気のない間抜けな、ボンヤリした、無感動な相づちを打つ若者など、今どきいませんよ! 少なくともうちの職場では」 そうおっしゃるあなた。本当でしょうか? 私の周囲には「とびっきりのネタ」を振ったのに「そうなんですね」と気のない返事をされてガックリきた、というおじさんおばさんがぞろぞろいます。 「そうなんですか?」と語尾が「か?」の相づちには、新鮮な情報に接した「驚き」「喜び」と、その先の会話への「興味・関心」が表明されています。そういう反応があるからこそ、会話が促進され、より豊かなコミュニケーション空間が出現するのです。 他方、「か?」ではなく「そうなんですね」の「ね」には、「既知の情報で新味に欠ける」「もっと面白いこと言ってください」「そもそも私に関わらないでほしい」という「話題場面を回避したい思惑」が露骨に見えてきます。 どんな話をしても「そうなんです“ね”」と機械的に返答する若者に対し、心ある大人たちは当惑するばかりです。 shigeru_banner 2017年9月号
一緒になって喜んでくれると期待したのに…… 夕方に放送されたあるテレビ番組の「デパ地下特集」で、自社の食品がチラッと映った場面を目撃した、開発部門の管理職(48歳)は、あまりのうれしさに、入社間もない若手社員(24歳)にこう話し掛けたのだそうです。 上司 「うちの新商品の〇〇、昨日、テレビに出てたよね!」 24歳の部下「そうなんですね~(‘o’)」 思わぬ薄い反応に、上司はその場をいったん引き下がったものの、納得がいかず、私に散々愚痴をこぼしたのです。 上司 「『そうなんですね~』って、事前にテレビ局からのオンエア情報でも入手していたのか? 番組を見て、初めて知ってビックリしたり喜んでる私は、脳天気でアホだとばかにしているのか? それとも、自分の会社の商品に、そもそも関心なんてないのか!?」 まあ、ここまでひがむ上司にも問題はありそうですが……。 一方、総務部のベテラン女性も憤懣やるかたがないという感じです。この秋から受け付けの女性が2人、新しいメンバーに代わったのだそうです。 採用業務に一部関わった彼女は、素晴らしい人材を得られたことを誇らしげに思っていました。 そこで社内の反応を知ろうと若手男性社員の1人にこう尋ねたのだそうです。 彼女 「受け付け、今度、また2人新しい女性が加わったのよ」 男性社員 「そうなんですね~」 彼女は男性社員の、サラッと平板に繰り出した無表情な言葉、「そうなんですね~」に激怒していました。 「受け付けに新人登場」は、一昔前であれば、若い男性にとっては確実に「ビッグニュース」でした。 「えっ! まだお目にかかっていませんが、どんな感じの方ですか?有村架純とか、広瀬すずみたいだったりします? 楽しみだなあ!!!」 上司の一言にここまで乗っかるのもそれはそれで問題ですが、上司の提供した話題に「興味・関心を示す」というルールにかなった「受け」は、こちらの方です。 「そうなんですね~」の評判は、想像以上に悪いのです。 shigeru_banner 2017年9月号 「そうなんですか?」でコミュニケーションをつなげる 話を冒頭に戻しましょう。 北海道新幹線開業からすでに1年半にもなりますから、「今さらそれがどうしたの?」という、若者の気持ちは分からないでもないのですが、あえて上司が頭をかきながら「家族で新幹線に乗って、北海道まで行った」という話題を出してきたのです。うそであっても、「そうなんですか?」と驚き、関心を示すことで、職場で有能な上司が、家でも夫として父として奮闘していることへの「称賛の気持ち」を表すのは、社会人として当然のマナーです。 「そうなんですか?」の言葉に誘われて、親子で仰いだ、一足早い北海道の秋の抜けるような空の様子を、うれしそうに語ってくれたかもしれません。 上司と話が続かない。 取引先との間でぎくしゃくする。 真面目でコツコツ働くのに、今ひとつ伸び悩む部下がいたら、ひょっとして「そうなんですね~」のせいかもしれませんね。
筆者プロフィール shigeru_profilepic 梶原 しげる (かじわら しげる) 早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20年のアナウンサー経験を経て、1992年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定審議委員も務める。 \著書案内/ 不適切な日本語 梶原しげる著/新潮新書 821円(定価)