コラム
2015.11.30
vol.3 風通しの良い職場づくりに 絶好のチャンス到来! 梶原しげる
2015年12月号
嫌われ者の「飲みニケーション」
「忘年会? 友達やご近所とはやるよ。 会社の飲み会? いやあ、勘弁だなあ」。
今や、若い社員だけでなく管理職たちも、「社内の飲みニケーション」を歓迎しない傾向にあるようです。
私が講演会でお目にかかる企業幹部や組合役員の多くも「今は、なかなか難しいですねえ」とおっしゃいます。「飲みニケーション」でネット検索しても、「嫌い・うざい・くだらない・迷惑・無意味・パワハラ」というネガティブな言葉が次々ヒットします。
昔話で恐縮ですが、私がサラリーマンだった20年前。すでにバブルは崩壊し、景気も思わしくはなかったのですが、私の所属した放送業界に限らず「上司が部下を誘った会社の飲み会」はごく普通に行われていました。
当時は今ほど財務もシビアではなく、仲間同士で飲んだ領収書を経理は「知らん顔して」経費で落とす「伝統(悪習)」が残っていたこともあったのでしょう。上司も部下も懐具合を気にしなくて済んだようです。
「今夜あたり、一杯どうだ?」。上司が部下を誘っても、「それは業務命令ですか?」と冷たく切り返される可能性は、今よりずっと低かった気がします。上司や先輩、部下が入り乱れ「うちの会社の未来」について口角泡を飛ばして議論を戦わせていました。
上司の説教くさい態度にかみついてけんか腰になり、翌朝二日酔いの抜けない顔でわびを入れたら「いやいや、こっちも言い過ぎた」と、笑って許してくれた部長の照れくさそうな笑顔が忘れられません。
後から考えれば、こういうことを繰り返すことで「愛社精神」とか「業界への理解」が育まれていったように感じます。一人前のビジネスパーソンとして成長する上で、単に仕事という「役割交流」を超えた、先輩・上司との「感情交流」も必要だったと、当時を懐かしんでしまいます。
2015年12月号
「会社の飲み会」での上司の役割を心得て
「会社の飲み会」の減少により、上司と部下の間のコミュニケーションの機会が減り、社内の風通しが悪くなっているとしたら大問題です。
そこで、さまざまなリスクを承知の上で、上司や経営者の皆さまに提案します。今こそ「会社の飲み会」を充実させませんか?
「やってるよ、忘年会ぐらい! 梶原は、分かってないなあ……」
頼もしいお言葉、何よりです。「飲み会ゼロの会社」に比べたら、御社はすごい!
ただし、私が問題にしたいのはその中身。今回の本論はここからです。
ホテルの大宴会場を借り切って社員数千人が一堂に会する「大忘年会」といった、イベント性の高いものは脇に置いておきましょう。
一部署で働く30~50人規模が参加する「忘年会」を想定しましょう。互いに膝を突き合わせて懇親を深めるのには、このくらいの規模が限界です。
ここで大事なのは宴会の進行を務める幹事、ではなくて、その部署を統括する職場のリーダーです。
課長か? 部長か? マネジャーか? 役職はともかく、その集団で一番職責が上の地位にある人物が、「職務」として配下の老若男女を徹底的にもてなす覚悟を持つことが何より大事です。
「上座で部下の酌を待っていればいい」などと尊大な態度で臨んでいては、会社や配下の社員たちに、金銭的、時間的、精神的に甚大な損害を与えることになります。
あなたの役割はファシリテーターなのです。
ファシリテーターとはカウンセリング用語。人間関係トレーニングの場面で使われる言葉です。人と人の関係性を円滑にするべく、参加者の行動を観察。状況を把握し、心の動きを捉えるため、あらゆる手段を尽くす人のことをいいます。
ビジネスの場面では、会議を主宰する人をそう呼ぶことがあります。場を司る、まさにキーパーソンです。対人関係促進の全権を担う役割を全うすることが課せられます。ヘラヘラして上座にふんぞり返っている場合ではないのです。
「上座で部下の酌を待っていればいい」なんて、あぐらをかいていませんか?
2015年12月号
5つのポイントで飲み会を成功に導く
では、忘年会を含む「会社の飲み会」においてファシリテーターであるあなたは、何をどうしたらよいのでしょうか?
ポイントは次の5つです。
1.参加者を名前で呼ぶこと
就職の最終面接以来、口を聞いたことがない若手社員に向かって「君はなんという名前で何をしているの?」などと言ってはいけないということです。
人の耳に一番心地よく響くのは自分の名前だ。これは自己啓発本の元祖、デール・カーネギーの言葉としても有名です。
「あなた」とか「君」とか「おたく」とか「ちょっと」とか「お兄ちゃん」とか「カーノジョー」と呼ばれて「うれしい」と感じる人はいないということです。名前で呼ぶということは、その人の存在を認め、敬意を表すことにつながります。あいさつの文言をあれこれ考える前に「名前を諳んじる」。何をおいてもこれが大事です。
本誌連載もこれでめでたく第3回となり、読者の反響をいただくことがあります。何ともうれしいかぎりです。
先日も読者の方から声を掛けていただきました。「『FCC REVIEW』の連載、毎回、楽しく読んでます! 頑張ってください、梶山さん!」
「ありがとうございます!(梶原なんだけどなあ)」。うれしいような、ちょっと微妙な気がしたものです。「呼称」とは、かように大事なのです。
「とはいえ、50人もいて全部を覚えるなど不可能だ!」とおっしゃる場合は、プロンプター(カンペ要員)を用意し、そっと耳打ちさせるぐらいの配慮が必要だ、と申し上げたいぐらいに重要だと心得てください。
これは宴会に限らず、普段から大切なことなのです。
2.乾杯を終えたら即座に上座を降り、所在なさげにしているメンバーを見つけ出し、さりげなく近づいてさりげなく話し掛ける
「〇〇さん、ビールのまま? お酒? ああ、焼酎?」
何でもない、どうでもいい話題で会話を始めるのが、場を緊張させないコツなのです。「会話のきっかけ」は双方が共通に見ているもの、体験していることを言葉にするだけでいいんです。この場合は、自分と彼の前にあるのはビールと日本酒と焼酎だったというわけです。
会話に入り込めない、場になじめない人を自然に和ませていくことを繰り返し、全体の空気を盛り上げていく努力をします。
「なぜ?」
それが、あなたの役割だからです。
2015年12月号
3.孤立している人を見つけたらコネクティングさせ、リレーションを付けてあげる
仲間とうまく打ち解けられない2人を見つけたら、ごく自然な形で結び付けるように声掛けし、共通点を探り出します。目に留まったことや、事前に読み込んだ資料を思い出し、両者の関係性を指摘することでつなげていきます。
「焼酎はお隣の〇〇さんだったか。あ、ひょっとして、2人とも実家は九州じゃなかったっけ?」
まるで今ひらめいたように、仕込んでおいたネタを引っ張り出して、気まずそうなお隣さん同士を結び付けるという具合です。これも大事なテクニックです。
「おいおい、おれは、座持ちのいい太鼓持ちか!」とお怒りのあなた。ズバリおっしゃる通り! あなたの役割はそれに近いのだと覚悟しましょう。
あなたはもてなされる側ではなく、おもてなしをする側だという認識をしっかり明確に持っていただくためにも……。
4.説教はするな、教訓は垂れるな、武勇伝は語るな!
会社の飲み会に出たくない理由に「上司が熱く語る3つの話」が上げられます(梶原独自調査より)。
説教「若いんだから、もっとガンガン飲んだり食べたりしないといけない。貪欲であるとは若さの特権だ。ところがだ! どうかね君、最近の若者は? ゆとり世代だの草食男子だのご託を並べる暇があったらだ、まず食べる、すなわちだねえ君……」
若手「……(もう、分かったよ……)」
教訓「若い君に伝えたいのは3つの気が大事だということです。やる気! 元気! 負けん気! この3つの気があれば怖いものはない、3つの気。やる気とは……」
若手「…………(くどい)」
武勇伝「君は警察につかまったことがありますか? 僕は2度ある。東大紛争、そして70年安保。権力に弾圧され、やっと釈放され、渡米してハーバード大学を出て帰国。そして今がある。君はどうだ?」
若手「……(ところであんた年齢はいくつなの?)」
熱く語る、オヤジのドヤ顔がうっとうしくて仕方がありません。
若い世代との共通ネタが見つからないと、ついこの3つのどれかを話し始めてしまいがちなのがオヤジ世代の特徴です。話す側は気分も高揚、おじさん絶好調のこの話題が、若い世代には最も嫌われるものだと知っておくことが必要です。
飲み会の3大タブー=「説教・教訓・武勇伝」は暗記しておきましょう!
5.年上の部下にはしっかり敬語で話す。職場を離れたら人生の先輩を立てる
「〇△さんには、いつも助けてもらってばかりで、本当に感謝しております。なにかこちらのテーブルで足りないものがございましたら、なんなりとお申し付けください」
「あ、〇△さん! 危ない、足元! 段差!! ……ふー、よかった。大事なわが社の大黒柱ですから、お気を付けくださいますように……」
入社年次は3年も上で、いまは嘱託社員の〇△さんです。日頃は忠実な部下として粛々と業務をこなしてもらっています。上司としてきつい言葉も投げ掛けます。しかし、この宴席では職務上の立場や役割を離れ、一人の人間対人間として、筋を通す自分の姿をしっかりと周囲に見せつけます。
「いつもは偉そうなあの人が、場面が変わればこういう態度なのか……。年長者をリスペクトするけじめを心得た、立派な上司だったんだなあ」
会場をほのぼのとさせる光景です。実はこれが部下掌握術の1つでもあります。
いかがでしょうか?
先に述べた5つの要件を満たせば、「飲みニケーション」=「嫌い・うざい・くだらない・迷惑・無意味・パワハラ」という「世間の評判」を払拭できそうな気がしませんか?
「冗談じゃない、そんな社内の飲み会、こっちが願い下げだ!!」。激怒する上司の気持ちも分からないではありませんが、そのくらいの覚悟がないと「飲みニケーション」が職場の風通しを良くすることにはならないのも事実、のようです。
今年の忘年会、どうなさいます?
筆者プロフィール
梶原 しげる (かじわら しげる)
早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20 年のアナウンサー経験を経て、1992 年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49 歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定審議委員も務める。
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