上場企業を中心に、「サステナビリティ推進室」を組成する企業が増えている。その背景には、非財務情報であるサステナビリティリポートを開示し、投資を呼び込むESG(環境・社会・ガバナンス)評価を向上させたいという狙いがある。
現在の経営環境において、サステナビリティ経営は全ての企業に求められている。リポートには、経営理念やSDGsなど社会課題の解決、事業のチャンスとリスク、知財や技術などの蓄積資源、ガバナンス・リスクマネジメント、企業カルチャー、人材基盤の現状とビジョンといった、企業の大切な非財務情報が網羅されている。
この中でまず着目したいのが、人材ビジョンの設定である。サステナビリティを実現する人材基盤の現状を把握し、人材ビジョンを意思決定して、人事KPI(重要業績評価指標)を設定。全社目標として達成を目指すことを提言したい。
多くの経営者は、経営の神様・松下幸之助氏の「企業は人なり」という訓えを実践している。しかし、「人材基盤の目標はありますか? ビジョンはありますか?」と問われると、「ない」と答える企業が大半である。
そこで、人事KPIの設定を次の2つの視点で考えていただきたい。1つ目は「人的資本KPI」。社員数・リーダー人材数・技術者数・有資格者数・社内資格者数などである。
2つ目のKPIは「エンゲージメントスコア」。エンゲージメントとは「熱意・愛着・信頼」。社員の業務に対する熱意・熱量、自社への信頼や愛着を測る指標だ。
エンゲージメントスコアを向上させるためには、ビジネスモデルや働き方改革、教育、ダイバーシティー&インクルージョン、チームワーク向上など、さまざまな手を打っていくことが必要となる。また、こうした施策が経営者の自己満足ではいけない。だからこそ、エンゲージメントスコアをKPIとすることをお勧めしている。
再度言うが、「企業は人なり」だ。人材ビジョンと人事KPIを開発し、イノベーションを呼び起こそう。サステナビリティは“人財”が決め手である。