その他 2022.05.02

人材ビジョンと人事KPI:長尾吉邦

上場企業を中心に、「サステナビリティ推進室」を組成する企業が増えている。その背景には、非財務情報であるサステナビリティリポートを開示し、投資を呼び込むESG(環境・社会・ガバナンス)評価を向上させたいという狙いがある。

 

現在の経営環境において、サステナビリティ経営は全ての企業に求められている。リポートには、経営理念やSDGsなど社会課題の解決、事業のチャンスとリスク、知財や技術などの蓄積資源、ガバナンス・リスクマネジメント、企業カルチャー、人材基盤の現状とビジョンといった、企業の大切な非財務情報が網羅されている。

 

この中でまず着目したいのが、人材ビジョンの設定である。サステナビリティを実現する人材基盤の現状を把握し、人材ビジョンを意思決定して、人事KPI(重要業績評価指標)を設定。全社目標として達成を目指すことを提言したい。

 

多くの経営者は、経営の神様・松下幸之助氏の「企業は人なり」という訓えを実践している。しかし、「人材基盤の目標はありますか? ビジョンはありますか?」と問われると、「ない」と答える企業が大半である。

 

そこで、人事KPIの設定を次の2つの視点で考えていただきたい。1つ目は「人的資本KPI」。社員数・リーダー人材数・技術者数・有資格者数・社内資格者数などである。

 

2つ目のKPIは「エンゲージメントスコア」。エンゲージメントとは「熱意・愛着・信頼」。社員の業務に対する熱意・熱量、自社への信頼や愛着を測る指標だ。

 

エンゲージメントスコアを向上させるためには、ビジネスモデルや働き方改革、教育、ダイバーシティー&インクルージョン、チームワーク向上など、さまざまな手を打っていくことが必要となる。また、こうした施策が経営者の自己満足ではいけない。だからこそ、エンゲージメントスコアをKPIとすることをお勧めしている。

 

再度言うが、「企業は人なり」だ。人材ビジョンと人事KPIを開発し、イノベーションを呼び起こそう。サステナビリティは“人財”が決め手である。

 

 

 

 

PROFILE
著者画像
長尾 吉邦
Yoshikuni Nagao
タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。