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【特集】

地域プロデュース

高齢化や人口減少といった地域の課題を克服するには、地域産業に関わるさまざまなプレーヤーが連携し、ビジネスを創り、事業価値を高めて、地域経済を活性化させる必要がある。自律的で持続可能な地域社会の実現に向け、人と事業をつなぎ、育て、地域の未来を協創する取り組みを紹介する。
メソッド2024.02.01

「経営目線」で地域課題を解決する:森重 裕彰

行政の課題解決にTCGの強みがマッチ

 

2020年1月、これまでの業績モデルを大幅に変えなければならない出来事が起きた。そう、コロナショックだ。あらゆる企業の事業領域を脅かす外部環境の大きな変化である。特に、対人ビジネスが主軸である業界が大きなダメージを受けることは明白であった。

 

加えて、顧客が消費者ではなく企業であるBtoBビジネスの場合、クライアントの業績が悪化すると予算が削られる傾向にあることも、リーマンショックなどの過去の経験から容易に予想できた。一体どうすれば、このピンチをくぐり抜けることができるのか。

 

タナベコンサルティンググループ(TCG)が出した答えの1つは、行政を通じた企業の経営支援だ。ピンチはチャンス。新たな挑戦に向けてコンサルタントメンバー数名で集い、その具体策を話し合った。

 

まずは、価値をどう生み出すかを検討した。TCGは創業以来、地域に根差した経営コンサルティングを行っており、北は北海道、南は沖縄まで、地場の中堅・中小企業の経営者の相談に応えることをミッションとしている。そして、そのための「地域密着型」の組織体制こそが強みであり、それが行政側の顧客価値につながるのではないか。そう仮説を立てて検証を行った。検証結果はイエスだった。

 

というのも、一般的にはコンサルティングファームは本社を東京に置き、支社があったとしても大阪などの都市部にある。地方には拠点を置いていないことが多く、行政の担当職員から何か相談事があったとしても、すぐに駆け付けることは難しいといった、隠れた“不”があったのだ。

 

また、TCGには経営コンサルティング以外にも、経営幹部から若手社員までを対象とした階層別研修や各種セミナーを開催してきた経験とノウハウがあり、その強みが行政側の顧客価値につながった。行政主催で行われるセミナーや研究会は多々あり、その運営も一括で請け負うことができるため、行政担当者からは重宝いただいた。

 

何より、行政が価値提供しなくてはならない「企業側の困り事」に関しても、TCGは熟知している。経営者や経営幹部が今、何に困っていて、どのような事業を進めていけば、県内企業の成長につながるかを知っていることから、TCGは担当職員の相談相手になれたのだ。

 

こうしたTCGの強みを踏まえて、この数年で支援させていただいた事業について紹介する。

 

 

DXツールを用いた新たなビジネスモデル構築

 

行政機関は企業に向け、デジタル分野を含む設備投資に対して、助成金などの形で従来から支援を行ってきた。だが、中堅・中小企業の場合、デジタルツールを導入しても活用や運用が難しく、投資に対して十分な効果が得られないことも多いのが実情だ。

 

そうした状況を踏まえ、行政機関はデジタルツールの選定から導入後のサポートまでを一貫支援する事業を実施。TCGはその事業を受託した。受託事業の一般的な流れは次の通りである。

 

❶ デジタルツールの導入フェーズにおいて、さまざまな AI・IoT ベンダーのサービスを検討できるマッチングプラットフォームの提供を通じ、デジタルツールの選定を支援

 

❷ 最新テクノロジーを開発しているベンダーと、デジタルを用いて経営課題を解決したい地域企業、テクノロジーの実装アドバイザー企業によるコンソーシアムを構成し、実証実験プロジェクトを実行

 

❸ デジタルツール導入後、ITコンサルタントを派遣して運用サポート
いずれも行政機関と地域企業の2者間で支援が完結するのではなく、専門知識を持つ民間企業を含む3者間、またはそれ以上の連携によって企業の DX 推進をサポートしている。

 

 

企業における女性活躍支援

 

2022年7月の女性活躍推進法の改正・施行により、女性活躍に関する情報開示項目が増えたことは記憶に新しい。常時雇用 301 名以上の企業において、「男女の賃金格差」を含む女性活躍に関する情報公表が義務化されたことを受け、地方行政においても、地元企業の女性活躍を支援する取り組みが活発化した。

 

特に増加したのが伴走型支援だ。地域の女性活躍をけん引するモデル企業を選び、数年をかけて行政と企業が二人三脚で女性活躍推進に向き合う、といったような支援内容である。モデル企業は、行政から委託されたコンサルティング会社のサポートを受け、女性活躍における目標設定、取り組みの推進や振り返りを行う。

 

取り組みを通じ、数年後には女性活躍の成功事例企業となり、その企業を参考に、地域全体に女性活躍の取り組みが拡大することが期待されているのである。

 

 

アフターコロナに向けた成長戦略立案支援

 

この支援事業は、県内企業数社を対象に成長戦略を一緒に構築するコンサルティング事業である。新規事業立案やブランディング戦略構築、DXビジョン策定といったテーマなど、各社の課題に合わせて柔軟にサービスをアレンジし、提供していった。

 

中でも「営業DX戦略の構築」については、まさにアフターコロナに向けて取り組むべきテーマであり、複数社の企業が選んだテーマであった。

 

というのも、コロナ禍において最も組織機能を阻害されたのが営業機能である。新規の開拓営業は当然ながらできず、アポイントを取ろうにも、「不要不急の訪問は避けてほしい」と言われ、どうすることもできなかった。

 

また、既存顧客の担当者はテレワークでリアル面談することができず、どれだけ優秀な営業パーソンであったとしても、個人の業績を上げることは難しかった。

 

そんな中、顧客側も情報収集の手段が少なくなり、ウェブ検索はもちろんのこと、メールマガジンやウェビナーなどから欲しい情報を拾い上げていった。営業DXは、この顧客行動の変化を捉えた、企業が取り組むべき営業機能の進化である。

 

簡単に説明すると、①ウェブサイトからリード(顧客・案件情報)を獲得、②インサイドセールスによるナーチャリング(顧客の発注するタイミングとニーズが顕在化するまで育成)、③顕在化したニーズに対してフィールドセールスが提案・クロージングする、といった流れである。

 

この流れを企業側がコントロールできるよう、組織と戦略的施策によって取り組むことで、営業機能を進化させ、業績向上に直結させる取り組みとしてコンサルティングを行った。

 

今後もTCGの強みを生かしながら、行政の課題を「経営目線」で解決できるよう提案を続けていきたい。

 

【図表】インサイドセールスを活用した営業DX戦略

※ 新規顧客獲得や見込み顧客の育成を含むマーケティング活動をサポートするためのツール
出所 : タナベコンサルティング作成

 

 

 

Profile
森重 裕彰Hiroaki Morishige
タナベコンサルティング エグゼクティブパートナー
大手自動車メーカーの生産技術担当を経てタナベコンサルティングへ入社。2017年に尖端技術研究会を立ち上げ、米シリコンバレー視察など、デジタルテクノロジーのビジネスへの展開について研究を深める。2022年より中四国支社支社長。企業の生産性改善、顧客価値創造を目的としたDXビジョン構築や、業務のデジタル化に向けた戦略立案から実行支援まで、一貫したサポートで成果を生み出すコンサルティングを得意とする。
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