メインビジュアルの画像
コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2022.11.01

DXを実装し、高収益を生み出す「3カテゴライズ」ビジネスモデルとは:本間 貴大

 

3カテゴリーに分類されるビジネスモデルDX

 

ビジネスモデルDXは3つのカテゴリーに分類することができる。互いに関わり合い、全体的に拡張していく関係であると言える。以降、カテゴリーごとの特徴を見ながら、理解を深める機会としたい。

 

カテゴリー1:バリューチェーンへのDX実装

 

このカテゴリーではコスト・リスクの最小化を目的としてDX実装を行う。言い換えれば、自社の機能別DX戦略をデザインするという解釈ができる。

 

バリューチェーンへDXを実装する際に押さえるべき検討ポイントは3つ。「付加価値を創出するポイント」「投資配分(=コスト)」「情報の連鎖性」である。

 

例えば、マンションの設計・施工から管理・運営、リフォーム、大規模修繕、建て替えまでを手掛ける長谷工コーポレーションは、新築分譲マンション探しをサポートするためのLINEアプリ「マンションFit」を開発している。

 

同アプリでは、簡単な質問に回答するとお勧め物件がレコメンドされ、モデルルーム見学の予約もできる。ここでは営業担当者との同行見学に内在する機会損失(日程調整、ミスリレーションなど)を回避しながら、営業対応の省人化を実現させている。

 

同社のケースを3つの検討ポイントに当てはめると、「付加価値を創出するポイント=お勧め物件が自動的にレコメンドされる」「投資配分(コスト)=LINEアプリ『マンションFit』の開発」「情報の連鎖性=機会損失の排除と営業対応の省人化の両立」となる。つまり、適切なポイントを踏まえたバリューチェーンDXの実装は、リスクヘッジと省人化の両立であり、高収益モデル構築の要点でもあると言える。

 

カテゴリー2:サービスのデジタル化

 

このカテゴリーでは、収益の最大化を図ることを目的としてDXを実装する。ここでは、DX実装支援企業、既存事業DX化企業の2タイプの企業が存在する。

 

前者のDX実装支援企業は、「XaaS」が典型例である。XaaSとは、さまざまなサービスやアプリケーションをインターネット経由で提供・利用するサービスのことと定義され、Everything as a Serviceとも呼ぶ。XaaSの「aaS」がビジネスモデル、そして「X」がその対象となる機能・サービスを指す。

 

X、すなわちサービスに対して、多大な投資によって「所有」するのとは異なり、必要な期間だけ「借りる」という方法で利用できる。導入側はコストメリットが大きい(時には無料の場合もある)上、クラウド上のサービスのため、場所や時間などの制限を受けずに利用できる。社員の多様なワークスタイルにも対応できるということだ。

 

XaaSの中でもとりわけ有名なのは「SaaS(Software as a Service)」提供事業者だろう。ひとえにSaaSといっても垂直統合型(業界特化型)、水平展開型(機能特化型)など多数乱立している。

 

後者の既存事業DX化企業は、Amazon、Netflixなどが代表例である(ビジネスモデルとしては次に挙げるカテゴリー3に分類されるが、この2社がたどってきた過程を見るとカテゴリー2)。国内ではライフネット生命などのネット保険、楽天トラベルなどのオンライン旅行代理店が挙げられる。共通点は既存のチャネルからDXで新たなビジネスモデルへと変革している点にある。

 

カテゴリー3:新たな付加価値の創造(プラットフォームビジネス)

 

「休日の朝、Alexaの目覚ましで起床。リビングに行くと妻がキッチンでスマホを見ながら料理をしている。どうやらクックパッドで朝食レシピを検索しながら何かを作っているようだ。

 

遅めの朝食を済ませると前日ホットペッパービューティで予約した美容室に足を運ぶ。支払いは貯まったポイントで事前に済ませている。自宅に帰ると子どもと妻がNetflixで映画を見ている。妻は子供の面倒を見ながら、スマホ片手にあまり着ていない私服をメルカリに出品。それを元手にお気に入りの健康食品・サプリメントをECサイトから購入するそうだ。

 

午後になり、自室で週明けの業務の準備をしていると旧友からLINEが入る。急きょ旧友を集めて今日Zoomの飲み会をするから参加しないかとの誘いだった」

 

これは、ある男性の休日である。この具体例にはデジタル技術を用いた9のサービス、6つの収益モデルが含まれていることに気が付いただろうか。私たちは日常生活で「DXで加速した6つの収益モデル」を利用しているのである。

 

先に示した6つの収益モデルをまとめた【図表】を確認いただきたい。

 

【図表】6つの収益モデルの特徴と代表例

6つの収益モデルの特徴と代表例

出所:タナベコンサルティング作成

 

 

DXの浸透により、現在私たちの日常生活を支えるサービスの大半はプラットフォームモデルであると言っても過言ではない。選ばれるサービスは、プラットフォームを基礎として、「誰に(ターゲット)×何を(提供価値)×どのように(マネタイズ)」を組み合わせ、新たな付加価値を創造し、独自性を発揮しているのである。

 

 

顧客提供価値の最大化を図るカテゴリー選択を

 

業種・業態・事業特性、さらには自社のDXレベルに合わせたカテゴリー選択とDX実装が求められる。決して背伸びは必要ないのである。

 

象徴的なエピソードとして、日本で唯一国産としてある製品を製造販売し、アフターサービス機能を有しているニッチトップメーカーの社長はこう話してくれた。

 

「同業者がこぞってECサイトを介して自社製品を販売している。当社はEC機能を持っていないので一時期はうらやましく思ったが、今はそうは思わない。当社には同業者が持ち得ない国産品質・アフターサービス機能がある。それに、販売チャネルの拡大よりも、当社を必要としてくれるお客さまにより高い品質、より迅速なサービスを提供するための投資(=バリューチェーン投資)が最も重要だから」

 

劇的な環境変化・消費者の価値観の変化に不安を感じても、先述した全てのカテゴリーを網羅的に取り組む必要はない。顧客価値の最大化を第1ボタンと考え、スモールスタートでDXを取り入れることで、ビジネスモデルの変革、ひいては高収益モデルへの転換が図れるのである。

 

長期ビジョン・中期経営計画の情報サイト

 

 

DXを実装し、高収益を生み出す「3カテゴライズ」ビジネスモデルとは:本間 貴大
PROFILE
著者画像
本間 貴大
Kidai Honma
タナベコンサルティング ストラテジー&ドメイン東京本部 部長代理。不動産コンサルティング会社にて営業兼コンサルタントとして一線で活躍。約1000社の小売・サービス・流通業へ不動産活用・コスト削減を提案。当社へ入社後は、営業戦略・事業戦略に関するコンサルティングに従事。マーケティング・新規事業開発を得意とし、事業性評価・ビジネスデューデリジェンスなどのプロジェクトも手掛ける。