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【メソッド】

コンサルティング メソッド

タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
メソッド2021.06.01

サステナブルな中期ビジョンのつくり方:コーポレートファイナンスコンサルティング

未来を向き始めた経営視点

 

コロナ禍における企業経営が常態化して久しい。タナベ経営が実施した「企業経営に関するアンケート」(2021年3月)によると、来期の経営戦略・方針における重点課題(複数回答)について、「中長期ビジョン(サステナブル)」「新規事業・サービス開発」「ビジネスモデル変革(人材育成強化)」との回答が上位を占めた。

 

手探りの状態でDX(デジタルトランスフォーメーション)などを進め、経営資源配分の見直しを図っている企業も多いが、アフターコロナの世界はいずれ訪れる。ニューノーマルの世界では、全てが元に戻ることはない。その時、自社はどう変化していけるだろうか。

 

前述の調査結果からは、これまでの自社の強みに依存するのではなく、ニューノーマルにおいても受け入れられ、必要とされる企業であるために、「今まさにビジョンを描き、行動へ移していく」という経営者の決意が見て取れる。

 

 

 

 

 

【図表】事業ポートフォリオの展開パターン

出所:タナベ経営「2021年度経営戦略セミナー」テキストより筆者が加工

 

 

事業ポートフォリオを再構築する3つのポイント

 

コロナ禍で業績を大きく落とした企業は、1つの事業分野や得意先、また、1つの販売方法やチャネルに偏っていることが少なくない。サステナブルな中長期ビジョンを構築するには、「卵を1つの籠に盛るな」という経営の原理原則の通り、事業そのものを多角化・分散化する必要がある。

 

タナベ経営が2020年11月に開催した「2021年度経営戦略セミナー」では、従来の事業ポートフォリオを多角・分散化していく方法として、「複数ドメイン×複数ブランド」「ドメイン特化×複数業態」「サービス事業を組み込む」「DXによる機能特化」の4つを提言した(【図表】)。この提言と併せて、ぜひ次の3つにも取り組んでいただきたい。

 

(1)ビジョン・ミッションの見直し

 

コロナ禍の影響を受け、これまで自社の強みであった部分が弱みに変わることがある。例えば、非接触型のコミュニケーションが求められる今、顧客への訪問営業を強みとしていた企業は、訪問以外の販売方法や新しい事業を確立できなければ事業規模が維持できないだろう。業績の厳しい外食産業は、コロナ禍が落ち着いたとしても、客足が以前の水準に戻ることは考えにくい。世の中の行動様式がすでに変わっているからだ。

 

単一の販売方法・事業特化型のビジネスモデルでは、事業継続が難しい。そこで、ビジョン・ミッションを再設定し、多角化・分散化を図る。

 

ある地方で総合建設業を営むA社は、建設需要の減少を見据え、早期に事業ミッションを見直した。「建設業は地域密着型の事業」「自社は地域の安心ブランド」という結論から、事業ミッションを「地域社会に密着した事業を行い、暮らしを豊かで幸せなものにする」に変更。地域の暮らしを幸せにする事業の多角化展開を進めた。

 

今では、建設・住宅リフォーム・不動産・家具・カフェ・コインランドリー事業と多角化展開に成功し、今後は介護・福祉事業にも取り組むという。真面目な社風と地元の安心ブランドという強みを生かし、地域密着型でシナジーを発揮し、事業の多角化を図ることでポートフォリオが最適化された事例である。

 

(2)M&Aやアライアンスの積極的な活用

 

条件の良い案件(会社)が出てくるのを待つ時代から、自社に必要な会社を積極的に求めてM&Aを行う「ターゲットM&A」が増えてきた。自社が目指す事業ポートフォリオの構築に向け、不足している事業を埋めるための手段としてM&Aを行うことが重要である。
首都圏で機械部品の卸売業を手掛けるB社は、九州エリアへの進出を果たすために上場企業の子会社を買収し、エリア分散・拡大に成功した。B社はこれまでも、九州エリアに拠点を設けて事業拡大を進めていたが、ライバル企業も多く事業規模の拡大が進まない状況だった。

 

ライバル企業の調査を進める中、ある上場機械メーカーの子会社が不採算部門であることが判明した。そこで、商圏を得るために上場機械メーカーの経営企画室へM&Aを打診したところ、結果的に九州エリアから中四国エリアにかけて3拠点を譲受することになった。互いのサステナブルな成長と発展に向けた戦略的なM&A事例だ。

 

このように、大手企業のみならず、事業承継期に当たる中堅・中小企業も会社の売却を含めて自社の事業ポートフォリオを見直すケースが増えている。

 

(3)グループ経営システムの導入と経営者の育成

 

複数のドメインで事業を立ち上げるために、子会社の設立やM&Aでグループ企業を増やしていくと統制が取りづらくなる。安定した経営に向け、グループ経営の推進やガバナンス体制の整備、グループ経営の効率化に向けたシェアードサービス機能の充実によるグループ経営システムの導入、子会社を経営する人材の育成が必要になる。

 

ある地方の自動車ディーラーC社は、新車販売のみならず、中古車販売、運送事業、整備工場の運営、FC(フランチャイズ)による自動車用品販売店の経営など、自動車に関連する事業を多角展開している。自動車販売業界は、販売チャネルの統合と、それぞれの事業の専門性の高度化を背景に、分社化とグループ経営化が進んでいるものの、グループとしての統制が取れず経営効率が低下する企業が多い。C社においても、ホールディングス会社を設立したが、事業会社の統制には課題があった。

 

そこで、グループ経営システムの仕組みを構築・導入し、グループミッション・ビジョンの設定、ガバナンス体制の整備、シェアードサービスの機能設計を実施。グループ各社のパフォーマンスの最大化とグループ経営機能を集約化し、結果として経営の効率化が進んだ。また、事業を推進していく経営幹部の育成により、今では経営幹部が中期経営計画を作成して運用できるまでに成長している。

 

自社の中長期ビジョンを構築する際、ぜひこれら3つのポイントを取り入れ、サステナブルな成長につなげていただきたい。

 

 

 

 

 

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