社員を幸せにする経営を目指し、ユニークな人財育成システムを構築
―― 株式会社ココロココの企業概要をお聞かせください。
ココロココは、四国において高齢者向けマンション(住宅型有料老人ホーム)の運営やデイサービスなど介護事業を中心に19事業を展開しています。従業員数は約180名。2025年度の売上高は17億8000万円。営業利益率は介護事業では珍しく10%を超えています。
―― ユニークな人財育成も特長です。いくつか紹介していただけますか?
生産性を上げる仕組みとして「サービスシフト」があります。1日の業務を10分単位で見える化して1枚のシートにまとめたもので、いつ、誰に、どのような支援をするのかを細かく記載することで、業務の均一化と漏れの防止、効率化を図っています。
2つ目は、「年間休日163日+20日間のフリー出勤」。フリー出勤とは、通常の介護業務をしない日のことで、その時間を研修に使っても良いですし、有給休暇を取得することも可能。また、じっくりと入所者の話を傾聴するなど、普段はなかなか時間を取れない部分に充てています。同制度は2021年に導入し、2022年には163日の年間休日が完成。2023年から20日のフリー出勤の制度をスタートさせました。
ココロココという社名の通り、社員を幸せにする経営を介護業界に広めたいですし、知らしめたいと思っています。また、介護業界で働く人が、もっとプライドを持てる業界にしたいと常々考えています。
―― ココロココの『未来を変える10の約束』の1つ目として、「人が育つ企業になる」を掲げています。新たに人財育成システムを構築された経緯をお聞かせください。
当社のビジョンは、「私たちは日本一働きやすく、働きがいのある会社を目指し、人財不足に立ち向かい福祉の未来を先導します」です。常に、いかに働きやすさや働きがいをつくっていくかを考えています。
―― 2024年6月に「人財育成システム Vol.1」が始動しました。
社内では『ココベース』と名付けて運用しています。「いかに人が成長する環境をつくっていくか」を重視し、人が育ち、成長する環境にフォーカスして体系化しました。
―― 人財育成はどうしてもインプット中心に設計されがちですが、ココロココの場合はアウトカムを重視した設計になっています。
人財育成に投資する以上は業績につなげなければいけません。プロフェッショナルな人財の育成が目的ですから、教育を受けた職員が「お客さまにどのような影響を与えられるか」「どれくらいの収益を生むのか」といったところまで想定しながらディスカッションしてつくり上げました。
人が育つ環境を重視し、体系的に人財の価値を高める
―― 現在運用中の「ココベースVol.1」の特長的な取り組みをお聞かせください。
最大の特長は、人財育成システムを環境として捉えていること。ですから、最初にマインドセット研修を組み込みました。そこでは考え方の共有を大事にしています。例えば、「なぜ163日+20日間のフリー出勤のシフトをつくったのか」など、導入の背景なども伝えるようにしています。
また、OJTにおいて「ココロツイート」を導入しました。これは、ちょっとした気づきを気軽にコメントして、みんなと共有できる仕組みです。何気ないコメントや思い付きレベルの改善案を上げられる風通しの良い環境を大事にしています。
一方、プロフェッショナル人財の育成に関しては、各業務に費やした時間を見える化しました。例えば、現在構築中なのはマイスター制です。排せつの介助に何時間携わったかを見える化し、経験値によってブロンズやシルバー、ゴールドというマイスターの称号を付与します。
―― 興味深い仕組みです。常に仕組みを改善されていますが、力を注いでいる部分はありますか。
ココロココのブランド化には注力しています。当社の事業の核は人財です。まずはインナーブランディングとして「BE A PLAYER.」をキャッチコピーに掲げ、職員一人一人がプロフェッショナルとして最高のプレーヤーに育っていくよう取り組んでいます。
また、会社の方向性や考え方、ビジョンの共有の場としてビジョン合宿を開催。毎年約7割の職員に参加してもらっています。
―― ビジョンの共有は人財育成において最も重要です。最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。
2030年に向けた中期ビジョンとして、「働きやすく働きがいのある会社をつくる」を掲げています。その実現に向けて「しあわせビジョン100」という取り組みを進めています。働きやすい会社、働きがいのある会社になるための企画で、「コミュニケーション」「スキル」「労働環境」「福利厚生」の4項目に関する制度を全職員から提案してもらい、2026年までに100項目となるよう進めます。
2つ目は、ココロココのブランド化。体系的に職員の価値を上げていくために、ココベースのさらなるブラッシュアップが必要だと考えています。
3つ目が、他産業平均並みの待遇改善です。既存事業だけでは難しいので、介護保険外の事業強化や店舗展開による収益改善など、新事業開発や事業変革にも取り組んでいきたいと考えています。

新卒で東海旅客鉄道株式会社に入社し構造物のエンジニアとして4年半従事し、2018年に現在の株式会社ココロココに入社。入社後は介護現場の管理者、人事、エリアマネージャー、副本部長を経験し現在は常務取締役として、主に経営戦略を担当。介護の価値を変えるべく、介護の常識を非常識にしていくように日々取り組んでいる。またプライベートではサッカーのコーチとしても活動、主にU-14(中学2年生)を担当しており、教育分野にも興味があるので日々現場で勉強を行っている。