本連載では「チームコンサルティングバリュー クライアントを成功へ導く18のブランド」(ダイヤモンド社、2023年)から抜粋したメソッドをご紹介します。Vol.2では、現状を正しく認識し、価値判断基準を設定、重点を絞った行動でビジョンを実現する「知・選・行」のリーダーシップサイクルについてご説明します。
企業変革の鍵は「知・選・行」のリーダーシップサイクル
「優秀なリーダーほど、戦況を正しく把握しようとする」。前著『チームコンサルティング理論』で、企業変革における「知(ち)・選(せん)・行(こう)」のリーダーシップサイクルを紹介した。自社の現状を「知る(現状認識)」、仮説を設定して「選ぶ(価値判断基準)」、最後には重点を絞って「行動する(突破口)」という経営メソッドである。それを、トップマネジメントのレイヤー(階層)でいかに運用できるかがポイントとなる。
フェーズⅠの「知る(現状認識)」とは、自社の経営体質の現状を総点検して、事実を、素直な心であるがままに俯瞰(ふかん)し、問題の本質と戦略の方向性をつかむこと。すなわち、成長のための「決定的・本質的問題点」を明確にしておくことだ。具体的には、「成長過程と成長要因分析」「自社の環境分析」「核となるコアコンピタンス分析」「意思決定(リーダーシップ)構造分析」「事業構造分析」「組織構造分析」「財務・収益構造分析」「経営システム分析」という八つの分析から現状を認識する。
フェーズⅡの「選ぶ(価値判断基準)」は、正しい価値判断基準(原点)から貢献価値をつくる作業だ。自社の原点となる創業精神と経営理念の確認、ビジネスモデル(バリューチェーン)の強み、利益の源泉、人材育成、企業文化、日常業務の判断基準となるKPI(重要業績評価指標)などから自社の貢献価値を明らかにするとともに、中期ビジョンコンセプトの仮説を設定する。つまり、決断のプライオリティー(優先度)を決める仕事である。
フェーズⅢの「行動する(突破口)」は、自社のビジョンを実現する変革のブレークスルーと、そのロードマップを明確にしておくこと。具体的には、現状認識と価値判断基準から明らかになった対策の優先度をつける「全社統合のプライオリティー」「経営戦略上の決定的ポイント」「事業戦略への投資の決定的ポイント」「人・組織が成長する決定的ポイント」「業績&KGI・KPIの決定的ポイント」「ビジョンコンセプト」に展開し、そして「ビジョン実現の突破口は何か(一言集約)」を突き止め、「定量ビジョン(数値計画)とロードマップ」をデザインする仕事である。あれこれと欲張ったところで、経営資源には限りがある。すべての改善策を実行することは困難だ。何が最も重要なのか「重点」を絞り、経営資源の配分を明確にして、徹底する組織体制をつくり上げる。経営とは〝知識〟ではなく、経営者の「志」であり、「組織行動」であり、その「成果」である。中長期ビジョンや方針を画餅に終わらせてはいけない。実装のデザインに変化の技術を駆使することである。
これら「知・選・行」のサイクルを最高の意思決定機関である取締役会において回し、的確な「決断」と「実行」ができるようにしておくべきなのである。