経営理念やパーパス、また自社商品や事業も、それ単体で見ると言葉と数字の羅列でしかない。他者に対して思いを伝えるには、やはり物語性が必要である。
これは企業が策定する戦略においても同じだ。経営理念と中長期ビジョンに基づき、独自性と卓越性で確立された自社のポジショニングをデザインする「戦略ストーリー」(【図表2】)の構築が重要となる。この思考プロセスは、自社の持続的成長と企業価値向上を実現する上でも不可欠な“物語”だ。
【図表2】戦略ストーリーの目指すべきポジション
出所:タナベコンサルティング・戦略総合研究所作成
会社の歴史的事実や出来事の物語から「目的」を考え、経営理念の本質を共有することを、私は「逸話マネジメント」と呼んでいる。逸話は人から人、次の世代へと伝えられ、それが挑戦と成長の軌跡となり、新しい未来を創造していく。これからの企業経営は、どのような言葉を残すかよりも、逸話として語り継がれる「ノンフィクション物語」をいくつ残せるか、その数と質が重要なのである。
「未来は予測するためではなく、創るためにある」。私は自らにそう言い聞かせて経営し、多くの経営者、リーダー、クライアントの皆さんにもそう提言している。企業や組織は、社会・顧客・社員にどのように貢献し続けるのか、未来へたどり着くまでにどのような持続的成長をするのか。そこには“明るい未来”の実現に向けた戦略ストーリーが必要なのだ。
タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず大企業から中堅企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーから多くの支持を得ている。1989年にタナベ経営(現タナベコンサルティング)に入社。2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て2014年より現職。2016年9月に東証1部(現プライム)上場を実現。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『チームコンサルティング理論』『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。
タナベコンサルティンググループ(TCG)大企業から中堅企業のビジョン・戦略策定から現場における経営システム・DX実装までを一気通貫で支援する経営コンサルティング・バリューチェーンを提供。全国660名のプロフェッショナル人材を有し、1957年の創業以来17,000社の支援実績を持つ日本の経営コンサルティングのパイオニア。