タカショー 代表取締役社長 高岡 伸夫氏
タナベコンサルティング・濵(以降、濵) 株式会社タカショーは、東証スタンダード市場に上場する国内最大手のガーデン・エクステリア用品メーカーです。まず、創業時のお話を聞かせてください。
タカショー・高岡氏(以降、高岡) 私は大学を卒業して建築金物商社に就職し、3年間の東京勤務を経験した後に退職しました。その後、郷里の和歌山県海南市に戻り、1980年に大学時代の音楽仲間とタカショーを設立。日本各地、世界各国への玄関口である関西国際空港まで約30分でアクセスが可能という地の利を生かせる海南市を拠点に、庭を起点とした心豊かな生活を提案するライフスタイル事業をスタートさせました。
創業当初は人材不足で苦労しました。職業安定所に通い詰めましたが、当社の希望にぴったりな人材はなかなか見つかりません。そのうち、新卒を採用してみようと考えて就職情報誌に広告を出すと、結構な数の応募がありました。東京や大阪などにある大学に入学した学生は、卒業して故郷に帰りたくても就職先がなかったのですね。そんな学生たちの思いを受け止める、キャッチャー的な存在になろうと思いました。新卒採用の1期生には、1998年に当社がジャスダック(当時)に上場した際に28歳で総務部長を務め、現在は専務として経営に参画している者もいます。
濵 事業の特色をお話しください。
高岡 「庭」「外構」「建築」の3領域を中心に、各種ガーデン資材やエクステリア商品、屋外照明、非住宅施設の内外装施工まで幅広く扱っています。事業分野としては、設計・施工を必要とする商品を事業者(住宅メーカーやリフォーム店、設計事務所、建材商社など)向けに販売する「プロユース」、消費者が使うDIY商品をホームセンターや通販事業者などに販売する「ホームユース」、DIY製品を各国(米・英・豪・印・韓)のガーデンセンター・代理店・ECに向けて販売する「海外事業」の3つのセグメントで構成。このうちプロユースの売り上げが全体の約7割を占めます。現在は全国6支社10営業所を展開するほか、欧米、中国、豪州、東南アジアなどへ事業を拡大しています。
濵 事業ドメインを「ガーデン」に絞り込んだのはなぜですか。
高岡 タカショー創業時の日本経済はバブル絶頂期へ向かう過程にあり、衣食住のライフスタイルが大きく変化していた時代でした。ただ、「住」については西洋式の間取りや外観など家屋ばかりが注目され、庭はほとんど重視されていませんでした。しかし、日本には坪庭や箱庭、盆栽、生け花といった庭づくりの要素を、日常生活の装飾や鑑賞に取り込む伝統的文化があります。家と対をなす庭を整備してこそ心豊かな家庭が実現すると考え、当時、誰も目を付けていなかったガーデンにカテゴリーを絞り、“庭暮らし”というライフスタイルを提案するメー
カーとして出発しました。
濵 業績の推移を教えてください。
高岡 近年は、コロナ禍では外出自粛の影響によるDIYブームで業績が大きく伸び、2022年1月期の連結売上高が207億円、経常利益は15億円と過去最高を更新しました。コロナ禍明けはブームの反動減と在庫調整による受注減、円安による仕入れ原価の上昇などから利益率で苦戦しましたが、DXを活用した販売促進や新商品の開発強化により、2024年1月期には連結売上高194億円を計上。中長期経営計画では2030年1月期に売上高500億円、営業利益50億円を目指します。
上場総合建設会社での注文住宅営業、リフォーム営業、広報企画を経て、タナベコンサルティングに入社。ハウスメーカーや建設会社の中期経営計画策定や長期ビジョン策定などの事業戦略立案、IT化構想確立支援や業務標準化支援などの業務改善や企業内大学(アカデミー)設立の支援などを担当。「絵に描いた餅に終わらせない実務に直結するコンサルティング」をモットーに、クライアントの課題に真摯に対峙している。