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コラム
海外リポート
タナベコンサルティンググループ主催の海外企業視察リポートです。
コラム 2024.05.08

ポルトガル「第41回 M&A Worldwide Convention 2024年春」視察リポート 御舩 浩次郎

 

 

M&A Worldwideは、国境を越えたM&Aや資金調達、その他コーポレートファイナンスの課題に対して支援を行う独立系アドバイザリー・ファームの世界的なネットワークで、タナベコンサルティンググループ(TCG)のグローウィン・パートナーズが加盟している。
この団体は、毎年、春と秋に1回ずつコンベンション(会議・集会)を開催しており、世界中の加盟メンバーや専門家、講演者、メディア、その他ゲストが参加し、クロスボーダーM&Aに関する情報共有、案件共有、共同提案の可能性などについて議論する。
TCGは、急増するクライアントのクロスボーダーM&Aに対する要望に、グループ一丸となって応えるため、同コンベンションへ参加した。

 

 

 

ポルトガルのビジネス概況

2024年春のコンベンションは、2024年4月3日~5日の日程でポルトガルの首都リスボンにて開催された。ポルトガルは、ユーラシア大陸の最西端・イベリア半島に位置し、地中海と大西洋に面する国で、ヨーロッパとアフリカ・米国の交通の要所となっている。年間を通して過ごしやすい温暖な地中海性気候と治安の良さ、美しい街並みから、観光客にとって魅力的な目的地でもある。

 

ポストコロナで個人消費と純輸出が大幅に改善し、2021年第2四半期にGDP(国内総生産)成長率がプラスに転じて以降、8期連続で成長が続いている(JETRO「ポルトガル概況 2023年7月」)。

 

近年、ポルトガルでは、欧州のスタートアップ主要都市(独・ベルリン、英・ロンドン、仏・パリ)に続き、スペインとともに、外国人起業家が進出しやすい仕組みが整いつつあり、スタートアップ・エコシステム(スタートアップ企業の成長を支援する環境)としても注目を集めている(JETRO「スペインとポルトガルのスタートアップ・エコシステム調査」(2024年2月)。

 

1543年のポルトガル人の種子島漂着・鉄砲技術の伝来から、日本とポルトガルとの交流は2023年で480周年を迎えた。現在は、1971年に進出したトヨタ自動車をはじめ、丸紅、富士通、NTTなど、約100社の日系企業がポルトガルに進出しており、高い技術力を持つグローバル企業による投資が進み、地場企業との好循環を生んでいるという(JETRO「ビジネス短信」2019年12月11日)。

 

今回、新たに加盟したパナマのメンバーファームによるプレゼンテーション

 

 

 

在るべき姿の実現に向け、連携を深化

本コンベンションは、M&A Worldwideに所属するメンバーファーム同士が緊密かつ定期的にコンタクトすることで、一体となったチームとして行動できるようにすることを主目的としている。年2回行われるコンベンションのうち、春開催は主にM&A Worldwideの内部体制、ネットワークについてのインターナルな議論が行われる。

 

今回のコンベンションでは、前回に引き続きM&A Worldwideの新たな未来のステージへのディスカッションがなされた。クライアントへの価値提供のあり方や、それを正しくタイムリーにマーケットへ伝えていくためのマーケティングやブランディング、そしてそれをネットワーク組織として円滑に推進していくためのシステムやチームワークなど、多岐にわたるテーマにおいて盛り上がりをみせた。

 

各ファームがそれぞれのマーケットやクライアントを想定しながら、M&A Worldwideとしての最適解を熱く議論。今後の在るべき姿(=New Formula)の実現に向け、ポジショニングを中位に上げる、ターゲット顧客・ターゲットディールサイズをより高いものに設定する、提供サービスを拡充する、マーケティングシステムを改善するなど、全メンバーのビジョンのベクトルを合わせ、連携を深めることができた有意義なコンベンションとなった。

 

その他、クロスボーダーM&Aに関するディール情報の共有、ベストプラクティス共有、共同提案の可能性検討など、本団体に属するディールメーカー同士の連携やレベルアップを図るテーマについても、各プロジェクトチームやインダストリーチームから発表があり、議論をし、理解を深めた。

 

今回の「ディール・オブ・ザ・イヤー」は、欧州と米国のメンバーファームの連携による、アグリ系国際企業の売却案件だった。主な買い手はアジア、クライアントの親会社は英国、法律顧問は米国とアイルランド、バンカーはアイルランドと米国、売却主体は米国とメキシコなど、まさに多国間にわたるクロスボーダーM&Aで、会社間の財務上や税務上の問題、情報の質を巡る問題、タイトなスケジュールといった課題があったが、メンバーファーム同士の緊密な連携により、成功裏にプロジェクトを完遂したことが評価された。

 

世界各国から約70名のメンバーが集まり、M&A Worldwideの今後について、またクロスボーダーM&A案件に関する情報を共有

 

 

 

2025年秋は日本で開催予定

本コンベンションの開催は、各回、各国のメンバーが持ち回りでホスト役を務める。2025年の秋は東京開催を予定しており、今回その開催に向けての事前予告も十分に周知することができた(次回2024年秋はイスラエルでの開催を予定していたが、情勢悪化により開催場所は未定)。

 

M&A Worldwideは現在、範囲を6大陸に拡大し、35カ国、45のオフィスから構成されるが、元々が欧州発の団体であるため、欧州および米国における連携は深く、日本を含むアジアにおいてはそのポテンシャルに注目が集まり、大きな成長への期待が寄せられている。

 

実際、本コンベンションを機に、さまざまな国のファームから多くの連携オファーが届き、新たな分科会の組成や共催ウェビナーなど具体的な話が出てきている。TCGは、今回のコンベンション参加や2025年の日本開催、またクロスボーダーM&Aの実績を積み重ねることで、世界における日本のプレゼンスを高め、各国ファームとの連携を深めて、日本・他国間のクロスボーダーM&Aを推進していく。

 

現在、日本では、海外への事業拡大に当たっての課題や後継者不足の問題を抱える企業が急増している。そのような企業が、クロスボーダーM&Aをより身近に感じ、一つの戦略オプションとして検討できるよう、TCGは引き続き活動を進めていく。

 

PROFILE
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御舩 浩次郎
Kojiro Mifune
タナベコンサルティング グローバル チーフ
国内大手IT企業にてさまざまなエンタープライズ向けのアカウントおよびソリューションセールスを担当。国際部門では米国グループ会社へ出向し、現地日系企業のITインフラのサポート・改善に従事。帰国後、米国スタートアップの日本拠点立ち上げに参画し、マーケティング・新規顧客開拓を実施。タナベコンサルティング入社後は、コンサルティングサービスの海外展開に向け、グループ各社との連携・社内プロジェクトの推進に関わる全体総括を担当。