請求書や契約書などの電子保存のルールなどを定めた「電子帳簿保存法」(以降、電帳法)が経理の電子化による生産性や記帳水準の向上を目的に改正され、2022年1月に施行された。全体ではスキャナ保存などに大幅な要件緩和がある一方、電子データで受け取った取引情報を印刷して紙で保存することを廃止する「電子保存の義務化」が大きなポイントの1つである。この電子保存の義務化は、2023年12月31日まで約2年の猶予が設けられているものの、対応は急務だ。実務への影響が大きいデータ保存の方法を中心にポイントを確認する。
■電子データ保存の事前申請が廃止に。
必要とされるスキャナや会計システムなどをそろえて基準を満たせば、すぐに電子帳簿保存を始められる
■電子データで受け取った取引情報は電子データでの保存が必須。紙での保存は廃止
■解像度200dpi(A4サイズで約387万画素相当)以上、カラー画像※1で読み取る
■タイムスタンプ※2を付与する期限は最長約2カ月とおおむね7営業日以内
■保存期間は7年間(決算書や総勘定元帳などは10年間)
■電子データの保存には下図の「真実性の要件」と「可視性の要件」を満たす必要がある
■保存場所はデータの送信あるいは受信側の納税地(納税地で出力できればクラウド可)
■メールに添付された請求書のPDFや、ECサイトで購入した商品の領収書など、電子取引に関する書類は紙ではなく電子データで保存することが必須
■システムを導入する前に、社内での運用ルールを明確に設定・周知する
■バックオフィス業務の効率化を目指し、場当たり的な対応や煩雑な処理にしない
■2023年10月に施行される「インボイス制度」への対応も見据えて準備する
※1…見積書、注文書、検収書など、資金や物の流れに直結しない「一般書類」を保存する場合には、グレースケール画像でも可
※2…総務省の指針に基づいて(一財)日本データ通信協会が認定した第三者機関の事業者が提供しているマーク。電子データと時刻を組み合わせて構成されており、文書が改ざんされていないことを証明する
※3…検索機能とは①取引年月日、取引金額、取引先により検索できること、②日付または金額が範囲指定できること、③2つ以上の項目を組み合わせた条件により検索できること(データのダウンロードができれば②③の要件は不要)