特集1:学び方改革
2017年11月号
企業向け研修サービス市場8年ぶりに5000億円の大台へ
企業の外部研修需要が復調してきた。このほど矢野経済研究所が発表した推計結果によると、2016年度の「企業向け研修サービス」市場規模(事業者売上高ベース)は前年度比2.2%増の5080億円と5年連続で増加し、2008年度以来8年ぶりに5000億円の大台を突破した。(【図表1】)
新入社員研修が好調なことに加え、新入社員を教える若手社員・リーダー職への指導研修需要も拡大した。また新入社員研修を機に、それ以外の研修需要にもつながるなどユーザー企業の開拓が進んだ。特に、経営幹部や幹部候補者の育成に課題がある中堅・中小企業では、上層部を対象とした階層別プログラムが好調に推移した。一方、新入社員研修の開催時期が4、5 月に集中したことから、講師や研修会場が不足し、全ての需要に対応し切れず受注を調整する研修事業者もあったという。
同社は今後の見通しについて、新入社員研修を中心に需要の拡大が続くとみられることから、2017年度は5170億円(前年度比1.8%増)、18年度では5240億円(同1.4%増)と拡大基調を維持すると予測している。ただ、講師・研修会場の需給ひっ迫も継続するため、伸長率はやや鈍化する見込みだ。
今後の成長分野としては、受講者数・利用企業数がともに伸びているeラーニングに注目が集まっている。店舗運営を行うサービス事業者や全国規模で事業所を展開する企業、地方に拠点を構える企業など、社員が一堂に会する集合研修の実施が困難な企業に対する有効な研修手法として需要が高まっている。
同社の推計によると、BtoB(法人向け)のe ラーニング市場規模は2016年度で597億円(同1.8%増)と4年連続で増加。17年度は600億円を突破(604億円)する見通しだ(【図表2】)。クラウド環境の進展やスマートフォン・タブレット端末の普及が後押しするほか、導入に対するコンサルティングや個別の顧客課題に応じたカスタマイズプログラム需要も増加しており、市場の拡大が続くとみられている。
現在、スマートフォンなどモバイル端末を利用した「mラーニング」によるクラウド型の研修サービスが活発化しており、今後は従来型eラーニング(デスク上のパソコンで学習する形式)に代わって成長をけん引すると予測される。mラーニングは移動中などの隙間時間に携帯機器でどこでも、いつでも学習できるメリットがある。集合研修前に事前学習を行い、研修当日は知識習得ではなく実践的な実技演習に比重を置いて研修効果を高めたり、集合研修後の反復学習ツールとして活用したりなど、集合研修を補完する手段としても注目されている。
厚生労働省の「能力開発基本調査」によると、自社の人材育成に「問題がある」と考えている事業所の割合は増加傾向にある(【図表3】)。問
題点として(16年度、複数回答)、「指導する人材が不足」(53.4%)や「人材育成を行う時間がない」(49.7%)などが上位を占めており、m ラーニングはこれらを解決する学習スタイルとして期待されている。