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100年経営対談
100年経営対談
成長戦略を実践している経営者、経営理論を展開している有識者など、各界注目の方々とTCG社長・若松が、「100年経営」をテーマに語りつくす対談シリーズです。
100年経営対談 2017.09.29

自動車部品の100年オンリーワン企業がさらなる持続的成長へ挑む SPK 代表取締役社長 轟 富和氏

 

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1917年創業のSPK(東証1部上場)は、自動車部品・用品の専門商社として100年にわたり実績と信頼を積み重ねてきた。自動車が主な交通手段となる地方都市に営業拠点を構え、人々の生活を支える一方、20期連続増配(2018年3月期、予定)という優良企業としても各方面から熱い視線を集めている。連続増配を可能とする経営体質はどのように生み出されているのか。同社の代表取締役社長・轟富和氏に100年企業の要諦を伺った。

 

創業100周年を迎え理念経営で新たな時代を拓く

 

若松 創業100周年を迎えるSPKは、自動車部品・用品や産業車両部品の専門商社として実績と信頼を積み重ねてこられました。その歴史の中で当社とも長いご縁をいただいていることに感謝します。2018年3月期(連結)の業績予想は売上高400億円(前期比5.5%増)、経常利益は18億6000万円(同6.5%増)、また20期連続の増配を見込まれるなど、優良企業として国内外から注目を集めていますね。

 

轟 今期も順調に業績が推移しており、8年連続増益、4年連続過去最高益、20期連続増配という、良い数字が重なる100周年を迎えられそうです。

当社の創業は1917年。伊藤忠商事の機械部より分社した系列会社として、外車・外車部品の販売を行う大阪自動車としてスタートしました。戦後は社名を大同自動車興業に改め、自動車部品に特化した専門商社として全国に営業所を拡大。現在のSPKに社名を変更したのは1992年です。

 

若松 社名を変えるのは会社にとって重大な決断です。「SPK」にはどのような意味が込められているのでしょうか?

 

轟 前会長である中嶋功が、誠実(Sincerity)、情熱(Passion)、親切(Kindness)を柱とする経営理念を作り、その頭文字を採りました。まだ英語の社名が珍しく、反対する声もありましたが、そこまでの思い切った改革が必要でした。

 

当時は業績が低迷しており、1989年に初めて赤字に転落しました。赤字となったのは、その1度だけです。中嶋はこうした状況を打開しようと、1989年から1997年にかけて新創業運動を展開。社外にも協力を求め、タナベ経営創業者の田辺昇一先生にご指導いただきました。

 

若松 私は日ごろから「経営理念そのものが企業の戦略」であり、「戦略は理念に従う」と言っていますが、SPKは会社名、経営理念、会社の戦略・方向性が一致しています。新創業運動以来の活動が今のSPKをつくっているのですね。

 

轟 経営理念は何よりも大切にしています。社名とリンクしていますから、社員全員が経営理念を知っている。言葉の力はすごいですよ。2007年の社長就任直後にリーマン・ショックに見舞われるなど厳しい環境に立たされましたが、経営理念がしっかりとしていたから乗り越えることができたと思っています。

 

 

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考え方次第でマーケットは変わる。
私から見れば、国内はまだまだ宝の山

 

ピンチはチャンス思い切った改革を進める

 

若松 1995年にジャスダック上場後、2000年に東証2部へ市場変更し、2003年に東証1部に昇格されました。とりわけ19期連続増配(2017年3月期)によってSPKの名前が広く知れ渡りました。轟社長は就任されたのが2007年でしたが、その成果方針を承継されています。

 

轟 上場のメリットはいくつかあります。例えば、お付き合いのなかった海外企業や日本のOEMメーカーなどからの問い合わせが増えていますし、連続増配が注目を集めたことで社員のモチベーションが高まり、新卒採用にも良い影響が出ています。配当については、私が社長に就任してから毎年2円ずつ計画的に上げています。当社の業態は外から分かりづらい部分もありますが、連続増配によって社会的な信用が高まっている。これまでの配当を合わせると約40億円以上に達します。しかし、経営品質が上がるなど金額に換えられない価値を実感しています。

 

若松 連続増配がブランドとなり、社員のロイヤルティーが高まっています。社員の成長という点で見れば、轟社長は就任直後から時代に合わせた社員の処遇・待遇に高い関心を持たれていました。

 

轟 処遇については、首脳陣が率先して改革しました。私が入社した年に役員の退職金制度が廃止されたのをはじめ、役員専用車もありませんし、飛行機もビジネスクラスは原則禁止、接待もほとんどありません。リーマン・ショックの影響も大きかったですが、これをきっかけに時代遅れになっていた習慣を見直す機会にもなりました。社員の処遇を見直したことで離職率も大幅に改善しています。かつては入社から数年以内に辞める社員が少なくありませんでしたが、現在は入社6年以内の離職率は約10%まで下がりました。

 

若松 ピンチはチャンスです。危機に直面したからこそ、必要なものとそうでないものを整理できた。トップの行動を見習って社員にも誠実、情熱、親切が浸透しており、それがSPKのカルチャーとなって競争力を高めているように思います。

 

轟 お客さまからは「SPKの人間は真面目だ」と言っていただけます。人が育ってきたことが、ライバル会社との差別化につながっているのではないでしょうか。前会長の中嶋は、「SPKがつぶれる時は、SPKらしさを失った時だ」と言いましたが、まさにその通りだと感心します。

 

若松 「らしさ」という言葉はよく耳にしますが、ぼんやりしていて空気のように捉えどころがありません。らしさを追求できるのは、振り返る歴史があるからです。100年企業だから語れることであり、重みがあります。