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コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2017.06.30

組織力を高める:近藤 正晴

 

まずは「社員満足」を向上させること

タナベ経営では、毎年、企業を対象に「経営に関するアンケート」を実施している。アンケートの回答の中には、「人材育成に注力しているが、なかなか成果が上がらない」という声が多数見受けられる。ほとんどの企業では、社員の質を上げ、顧客満足(CS)を高めるためにさまざまな教育を行っている。非常に良いことではあるが、社員の実情を踏まえず、経営サイドが強制的に実施しているというケースもある。

企業が成長するということは、売上高や利益が増加し、規模・組織が充実することである。その際には、顧客満足の向上が必要である。CSを向上させるためには、まず商品・サービスを提供する社員満足(ES)を高め、組織活力を向上させることが何よりも重要となる。顧客に商品・サービスを提供するのは自社の社員である。社員のモチベーションが上がらなければ、提供する商品・サービスの品質も上がらない。

社員は会社が出した指示や命令に従って実行しているように見えても、それは表面上だけである場合が多い。「人は自分の仕事量を自分で決めている」といわれるように、到達点はそれぞれが自分で決めているものである。

コンサルティング先の企業で社員に話を聞くと、「目標は○○ですが、△△が限界ですよ。まあ、それなりに頑張ります」と、会社が示した目標や方針の内容とは違う到達点を、個々に持っていることが少なくない。

会社がどうしたいのかを理解していない上に、仕事の不満を抱えて日々を過ごしている社員が、顧客に満足してもらえる高品質な商品・サービスを提供できるはずがない。

 

組織の活力を8つの着眼点で探る

タナベ経営には、自社が正しく機能しているかを見える形にした「組織活力サーベイ」という分析ツールがある。正しく機能する組織になっているか、成長を妨げる要因はないかなど、8つの着眼(【図表1】)で組織に活力があるかを探る。また、仕事内容・評価に対する従業員の満足度はどうか、ロイヤルティー(帰属意識)、今後の向上意欲はどうかなどの社員のやる気・やりがいを5つの着眼(【図表2】)で見る。

このサーベイによると、成長優良企業では、仕事にやりがいを感じ、進んで自己啓発する人材であふれている。会社も社員のキャリアパスを助長する教育制度を完備し、社員が自社で働くことを喜んでおり、会社のビジョン・目標を十分に理解しているという結果が出ている。社員一人一人が自分の役割を認識し、成長意欲が旺盛であるからこそ、顧客に対しても常に高いモチベーションで対応できるのである。

一方、低迷している企業においては、「会社の方向性が分からない」「キャリアアップできる環境ではない」「いつまでもこの会社にいたいと思わない」などの意見が多く、不平・不満に満ちている状態であることが多い。

まず、自社は将来どういう方向に進んでいき、どういう会社になりたいのかというビジョンを社員に浸透させることだ。その上で、仕事の喜び・やりがいをそれぞれが感じ、「自分から成長していこう」とする社風を築くことが重要である。そして、社員が頑張ることのできる環境をつくることである。

企業(組織)には育った環境、年齢・性別、知識・技能・態度の良しあしなど、それぞれ異なる人材が存在する。そこで一人一人の価値観の違いを前提として、顧客のために、企業発展のために、自社に最も適した環境をつくり上げなければならない。社員が会社での仕事を通じ、成長し続ける仕組み(システム)が必要なのである。

すなわち、「人材育成」のことであり、最高の資産・最大の戦力である人材を、計画的・継続的に育成することが大切なのだ。人材育成は「教育」である。

教育の必要性は、会社がその社員に期待する知識・技能・態度などと、その社員が現に保有する知識・技能・態度などとのギャップとして表れる。このギャップを埋めることによって人材は育ち、会社の発展に貢献でき、職務が遂行されることになる。

そのために、採用時から退職時まで、企業生活において一連の人材育成システムを構築し、人材の能力を最大限に高めるための教育体系システムづくりと運用を行うことが重要である。

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教育体系のシステム

教育体系のシステムは、

① 会社の経営理念・哲学を理解させる

② 職種別・階層別に教育ニーズを整理する
③ オリジナルの教育体系として設計する

④ 教育カリキュラムを開発する

――という4つに大きく分けられる。

教育体系システム構築のステップは、それぞれ次の通りである。

STEP1:自社人材能力の把握
まず、自社の風土・人材の棚卸しにより人材基盤を総点検する。

(1)階層別、職種別などのモラル実態と風土の詳細を分析・調査する
(2)人材のコンピテンシー、姿勢・態度・特性・適性を診る
(3)職種別・階層別知識・技術・能力の棚卸し・不足能力を診る
  (スキルマップ分析)
  ① テクニカルスキル(専門技術)
  ② マネジメントスキル(管理技術)
  ③ ヒューマンスキル(社会技術)
(4)人事考課表から階層別不足能力を診る(人事考課表分析)

STEP2:3つのスキル(テクニカル・マネジメント・ヒューマン)強化に向けた教育体系の設計

(1)教育体系の設計
  ① 職種別・階層別スキルマップ(能力開発図)の策定
  ② 不足能力を補うためのオリジナル階層別・職種別教育プログラムの策定
(2)教育カリキュラムの策定
  ① 現状認識に基づく、重要度・緊急度の高い教育対象層と
    カリキュラム設計(OJTとOff-JTに分類する)
  ② OJTカリキュラム設計
  ③ Off-JTカリキュラム設計

STEP3:運用の仕組みづくり(自己啓発力向上)

(1)あるべき人材像に基づく採用基準の明確化と、採用戦略の策定
(2)社員の特性を生かすキャリアパスの策定

キャリアアッププランで目標を設定し、職能要件やスキルマップで現状認識をする。このことにより目標とのギャップが分かり、明日からの行動が明確になる。

会社における目標、個人・家庭の目標をシートに記述することで目標が明確となり、その目標に向かって前向きに業務に取り組むことで自発的な行動が生まれる。

これらSTEP1~3により、教育体系システムを構築・運用していく。会社と社員が成長する喜びをつくっていくことこそが、組織力を高めることにつながるのだ。

 

 

 

 

PROFILE
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近藤 正晴
Masaharu Kondo
建材メーカーの営業部門、開発部門を経験後、タナベ経営入社。「全ては基本動作から」を信条に、人材育成や組織力を高めるマネジメントシステムを構築。社員のモチベーションアップや営業力強化を実現している。トップ・幹部と一体になって、常に進化し続ける企業づくりに定評がある。