特集1:ブレーン・ネットワーク
2017年4月号
中小企業経営者の2人に1人が「明確な相談相手が外部にいない」
神戸大学経済経営研究所(RIEB)が2017年1月16日に公表した研究論文※によると、中小企業経営者の約2人に1人が「外部に日常的な相談先がない(または分からない)」ままに経営を行っており、うち7~8割が自社の自己資本比率を把握せず、経営計画も策定していないという。
RIEB・家森信善教授と金沢星陵大学経済学部・北野友士准教授が、中小企業経営者3000人を対象にWebアンケート調査(2016年9月、楽天リサーチ)を行った。その中で外部の日常的な相談先を聞いたところ(複数回答)、「ない」と答えた経営者が25.5%、「分からない」も24.0%となり、合わせて半数近くが明確な相談相手を持っていなかった。(【図表1】)
このうち「外部に相談先はない」と答えた経営者に理由を尋ねると(複数回答)、「効果が期待できない」(26.9%)が最も多い。次いで「相談すべき課題や悩みがない」(26.0%)、「相談できるということを考えたこともない」(25.1%)、「費用がかかる」(18.9%)などが続く。外部の専門家の助言が有効であると認識していない、または相談の必要性を感じていない経営者が目立つ。(【図表2】)
その他、「誰に相談したらよいか分からない」(13.6%)や、「相談すべき課題が具体化できていない」(13.2%)など、相談先の情報や現状の経営課題を整理できていない経営者も一定数存在した。
相談先がないと答えた経営者に対し、経営状況の把握について聞いたところ、「自己資本比率を把握していない」という回答が70.9%と高い水準だった。さらに経営計画も「策定していない」が77.7%を占めた。(相談先が誰か)分からないという経営者も、それぞれ82.5%、87.1%と8 割を超えた。相談先がない経営者は、“自社(自分)で対処できるから外部に相談しない”というわけではなさそうだ。
また相談先がない理由に「課題や悩みがない」を挙げた企業の業績状況を見ると、「2 期連続黒字企業」の割合は55.3%と高かったが、「2期連続赤字」と低迷している企業も25.6%あった。必ずしも相談すべき課題がない企業ばかりとはいえない。
一方、外部に日常的な相談先がある企業の中で、最も多かった相談先は「公認会計士・税理士」(27.1%)だった。「特に頼りにする相談先」の質問項目でもトップ(23.2%)で、中小企業経営者にとり公認会計士・税理士は非常に身近な存在であることがうかがえる。その他、「取引先・同業者仲間」(19.9%)や「他の経営者」(18.8%)、「メインバンク」(14.2%)を挙げる経営者も多い。
論文では、外部に相談しない理由として「効果が期待できない」が最も多いことから、「相談による経営改善には効果があることを企業経営者の意識に浸透させていくことが重要」と指摘している。
※ 神戸大学経済経営研究所「中小企業経営者の経営能力と金融リテラシー- 2016 年調査の概要-」(同・家森信善教授、金沢星陵大学経済学部・北野友士准教授)、2017年1月16日公表
【図表1】 外部の日常的な相談先(複数回答、上位11項目)と経営状況の把握の関係
【図表2】 外部に相談先がない理由(複数回答、上位8項目)、理由別の業績状況