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研究リポート
建設ソリューション成長戦略研究会
人件費・資材の高騰、地方の衰退など、外部環境の変化に合わせて提供価値を進化させている企業を研究し、建設業界の発展に寄与する機会を作っています。
研究リポート 2025.08.20

新菱冷熱工業の働き方改革 新菱冷熱工業

【第6回の趣旨】
新菱冷熱工業株式会社は、1956年設立の総合設備工事会社である。空調、電気、給排水衛生、コージェネレーションなどの総合的な環境づくりを担う事業を展開する。グループ 17社(国内7社、海外10社)、売上高は単体2,239億円、連結3,084億円、従業員数は単体2,257名、連結5,195名(2024年9月末時点)である。
国内外で数多くのビッグプロジェクトの実績を誇り、羽田国際ターミナルビル、中部国際空港セントレア、シンガポール マリーナベイ・サンズ、沖縄美ら海水族館、また、東京スカイツリー®地域や丸の内・有楽町地域、大阪・梅田・中之島地域といった大都市の地域冷暖房などを手掛けている。
「さわやかな世界をつくる」を経営ビジョンとして業界をリードし、環境リーディングカンパニーとして、環境に積極的に貢献し、地域冷暖房シェアNo.1を誇る。2016年からは中期経営計画の重点テーマとして、働き方改革に全社的に取り組み、成果を上げている。その取り組み内容とポイントを学んだ。

開催日時:2025年7月9日(東京開催)


同社施工実績(例)

 

「働き方さわやかProject」の概要と目的

 

同社は働き方改革の取り組み開始と同時に掲げた、新菱冷熱の「働き方のありたい姿」を目指し、「働き方改革さわやかProject」を推進している。新菱冷熱の「働き方のありたい姿」は以下の4点に集約される。

 

1.働きやすい職場環境の実現
2.社員が誇り・やりがい・成長を感じられる職場づくり
3.仕事と生活のバランスを充実させること
4.限られた時間で最大限の成果を出す働き方の実現

 

プロジェクトは、全社横断型のチームにより、スモールスタートで段階的に広げる形で進められ、小さな成功体験を積み重ねることを重視している。知恵と工夫で働き方を見直すことを目指し、全社一丸で取り組んでいる。

 

 


社内報「さわやか」(左)/社内掲示板「さわやかProject通信」(右)

 


働き方改革報道ポスター

 

働き方改革の具体的な取り組み

 

働き方さわやかProjectでは、以下のような具体的な施策を実施した。

 

1.業務の見える化:例、 ホワイトボードを活用した個人業務の共有化や仕事量の平準化
2.ノー残業デー拡大:水曜日を「全員帰るのが当たり前」の日とし意識改革を促進
3.管理職の意識改革: 管理職の意識変革を最重要課題と位置づけ研修や啓発活動の実施
4.施工プロセスの変革: BIMやウェアラブルカメラ、3Dモデル、自動墨出しロボット等の技術を活用し、業務効率化と品質向上を実現
5.残業時間管理の徹底:就労管理システムとPCログの照合機能を活用し、正確な労働時間の管理を実施。PCログと就労管理システムの始業・終業時間に20分以上乖離がある場合、社員が乖離事由を入力し上席者が確認するようにした。また、残業予実管理アプリを導入し、年間の残業時間を計画的に管理できるようにした。
6.発注先等に対し働き方改革への協力依頼の要望書を提出し、協力体制を構築
7.給与体系の見直し: 残業時間減少による給与減少を補うため、給与体系を見直した

 

これらの取り組みを通じて、社員の働き方を見直し、効率的かつ健康的な職場環境の実現を目指してきた。

 


3Dモデルを活用した空間の住み分け調整

 


帰宅時間をアピールする工夫

 


「当社にとっての働き方改革について」の講義

 

働き方改革の成果と推進のポイント

 

働き方改革により、意識改革と業務効率化が進み、一定の成果を上げており、各種指標の改善が進んでいる。離職率、平均残業時間、従業員働き方への満足度調査の数値、有休取得日数が直近3か年連続で改善した。

 

また、働き方改革推進の足かせとなる残業手当の減少に対する不満を、ベースアップ、手当の新設によって払拭した。結果として、過去3年連続6%のベースアップ(計18%)を実現し、マイナビ・ベストバリューアワード給与アップ優良企業賞も受賞した。会社としての姿勢を示し続けることで、会社のカルチャー、社員の気持ちや考え方が大きく変わり、社員一人ひとりの活動になり、数字にも表れ、魅力ある企業になるための改革が進んだ。

 

働き方改革を進めるためのポイントは以下の通りである。

 

1.まずは意識改革を図ること。特に管理職の意識改革が最も重要である
2.できない理由を探さない。ポジティブに、できるところから始めることが重要である
3.皆で知恵を絞り工夫し、全員で取り組むこと。良い取り組みは真似をすることが重要
4.働き方改革に特効薬はないが、あきらめず継続すること、社員に何度もメッセージを発信すること。

 

同社の取り組みは、他企業にとっても参考となる事例であり、働き方改革のモデルケースと言える。

 

数字でみる働き方改革の成果


PROFILE
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加藤 生一 氏
新菱冷熱工業株式会社
管理本部人事部
ヒューマン リレーションズ コーディネーター