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研究リポート
住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会
人口減・高齢化・住宅への価値観の変化など「住まいと暮らし」領域を取り巻く環境は著しく変化しています。強みを明確にし勝ち続けるためのヒントを事例企業より学んで頂きます。
研究リポート 2025.07.09

グローバルにおける最先端DXソリューションの導入事例 MytePro Technology Japan

【第5回の趣旨】
住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会では、全国で成長している「住まいと暮らしドメイン」の優良企業を視察訪問している。
第11期のテーマを「事業領域拡大×事業サービス化の視点で挑むハイブリッド経営」とし、第5回では、東急コミュニティー、リコージャパン、Mytepro Technology Japanをゲストに招き、事業戦略についてご講演いただいた。
研究会3日目は、 MytePro Technology Japan様より、グローバルにおける最先端DXソリューションについてご講演いただき、住まいと暮らし関連企業がこれらの高度な技術をどこで使うべきか、顧客への提供価値につなげるポイントなどについて学びを深めた。

開催日時:2025年5月29日(東京開催)

 

はじめに

 

MytePro Technology Japanは1997年に設立され、世界の不動産・建設業向けに27年間にわたりDXソリューションを提供してきたグローバルベンダーである。同社は2025年より日本市場に進出し、不動産ビジネスの多様なニーズに応えるプロフェッショナルなワンストップソリューションを提供している。

 

創業以来、同社は世界7000社以上の不動産開発・運営企業のデジタル変革を加速させてきた。同社の提供するソリューションは、16600の販売ギャラリー、7500の建設現場、3億4400万平方メートルの不動産管理面積を誇り、業界における圧倒的な実績を示している。

 

同社のソリューションは、AI、VR、BIM(Building Information Modeling)、IoTなどの革新的な技術に基づいており、より優れた選択肢、より低価格、より便利なサービスを顧客に提供し続けている。これにより、不動産会社のデジタル競争力を向上させ、ビジネスの成功を支援している。


MytePro Technology Japanの使命
出所:MytePro Technology Japanホームページ

 


 

スマートバッジによる営業活動の革新と顧客体験価値の向上

 

海外の不動産デベロッパーが新築販売で活用しているスマートバッジは、音声認識技術を活用し、リアルタイムで商談内容を「見える化」する革新的なツールである。

 

このバッチは、顧客ニーズの分析や最適な提案、さらには成約率の予測を行い、PCを使用せずにスマートバッジとモバイル端末のみで営業プロセスを完結させることが可能である。

 

営業時には、AIが顧客プロフィール情報や商談内容をリアルタイムで把握・整理する。さらに、過去の営業商談記録や顧客プロフィール情報を基に、営業に必要なフォローアップ方法や営業アドバイスのスクリプトをモバイル端末を通じて提案する。この仕組みにより、営業担当者は効率的かつ的確に顧客対応を行うことができる。

 


スマートバッジを用いた商談サポート事例
出所: MytePro Technology Japan提供

 

効果を最大化する建設現場のDX:スマートヘルメット

 

建設業界では、労働人口の減少と高齢化が進む中、DXが急務となっている。しかし、現場の作業員にとって、従来と異なる対応が求められるDXを負担に感じることが多い。そこで、「ヘルメットを被るだけで良い」というシンプルなDXとして注目されているのがスマートヘルメットの導入である。

 

スマートヘルメットは、AIやIoT技術を活用し、5秒に1度データを取得・連携する仕組みを備えている。このヘルメットを使用することで、以下のような機能が実現される。

 

労務・安全管理:作業員の健康状態や動きをモニタリングし、異常があればアラートを発信
立ち入り禁止区域管理:作業員が禁止区域に立ち入った場合、管理者や本人に音で警告
作業進捗モニタリング:作業の進捗状況をリアルタイムで把握し、効率的な現場管理を実現

 

導入事例として紹介された香港では、98%の工事現場で工事遅延が発生しているという課題があった。スマートヘルメットを活用することで、作業者の移動導線などを分析し、工期短縮に向けた改善が行われている。

 


VRを活用した営業向けツール事例の説明を受ける研究会参加者

 

全体業務の再設計と価値創出を伴う変化こそがDXの本質

 

スマートバッジやスマートヘルメットといったDXツールは、作業者の業務プロセスを大きく変化させることなく、現場での負担を最小限に抑えつつも、管理者を含めた全体業務の再設計を促し、顧客や業務に新しい価値を加えている。これらのツールは、現場の課題に寄り添い、現場で実行可能な形でDXを推進することを意識して設計されている。

 

DXの本質は、単なるツールの導入で終わるのではなく、「DXによって生み出された価値をどのように顧客に提供し、新たな価値を創出するか」にある。

 

業界間、企業、さらには国境を越えた「知の融合」が、新しい価値の源泉となり、DXはそのための手段として機能する。DXは目的ではなく、新たなサービスや収益源を創出するためのビジネスモデルのアップデートを実現する手段である。そのため、DXをどのように活用し、戦略的に設計するかが肝要である。


DXに関する課題の理解を深める研究会参加者

PROFILE
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大島 洋 氏
MytePro Technology Japan株式会社
代表取締役 マネージングディレクター カントリーマネージャー