【第5回の趣旨】
DX戦略推進研究会では、データの活用による付加価値向上と人材育成の推進、そのための骨太のDX戦略をテーマとして、DX推進のヒントをご提供。生成AIなどの先進的なDX推進活動で顧客とのコミュニケーションモデルの創造や、革新的な業務改善を実現している企業をご紹介する。
第5回は「デジタル人材育成の要諦」をテーマに、マインドセットからリテラシー向上までの計画的な教育の必要性と、 「データを使いこなす人材育成」のポイントについて学んだ。
開催日時:2025年5月22日(福岡開催)
はじめに
北九州市に本社を置くグランド印刷では「新たな価値の創造で、世の中を楽しく、豊かにする」というミッションを掲げ、「印刷の枠を超えてお客さまの『課題解決』から『商売繁盛』までを全方位でサポート」している。シルクスクリーンやデジタルプリントを主体とする印刷全般および、屋内外サイン・装飾・POP、段ボールディスプレーなど、幅広い商材を扱っている。同社のDXは「DXで世の中をもっと楽しく、もっと豊かに」がテーマだ。新たな事業に取り組む中で浮上した「業務非効率」と「不安定な事業と営業スタイルの属人化」を改善するために始め、業務のデジタル化と新規事業創出をバランス良く推進した結果、「IT経営実践認定企業」(経済産業省)の認定や、「DXセレクション2023準グランプリ」(同)を獲得した。
自社製品である段ボールディスプレーやデジタルプリントを使った受付
社内業務の効率化・自動化のためのDX
ITシステムの構築においては「デジタル化で仕事を増やさない」ために、「反映」「蓄積」「通知」機能の疎結合されたシステム構築が重要である。1回の入力で反映、蓄積、通知ができるよう、同社では、受注伝票や見積書画面へ入力した情報が営業日報や顧客詳細画面に反映され、Chatworkへ通知される仕組みになっている。また、有給休暇申請は、Googleフォームで申請されたデータがスプレッドシートやカレンダーに反映され、Chatworkへ通知される仕組みになっている。
システム化を推進し始めた当初に委託していたシステムベンダーの倒産をきっかけに、これらのシステムを自社で構築・運用しており、現場の要望をタイムリーに反映・改善できているという。
新たな企業価値を創造するDX
創業当初は下請け中心の事業形態だった同社だが、専門店化、法人販売、インターネット活用によって、受注を拡大するための新規事業を創出している。新規事業の方針は、既存市場への新商品・サービス展開や、既存リソース(技術・ノウハウ・設備)での新市場展開といった2軸での事業化を検討している。この取り組みによって生まれた事業の1つに「GO!GO!不動産」事業がある。これは、不動産業者や仲介業者向けにデジタルを活用して安く効率よく集客促進商品を販売するため、デザイン製作業務をテンプレート化したツールだ。入居者募集や物件案内看板、のぼり、段ボール製ダミー家具などを注文できる。町の不動産・工務店など小規模な不動産業者をターゲットとしている。
好循環のスパイラルによって生まれた新規製品・サービスのカタログ
「減らす」と「生み出す」の好循環スパイラルで「成長する」
業務のデジタル化による基幹システム再構築やデータ蓄積など「社内視点のDX」と、新規事業創出や既存事業のデジタル化、デジタルマーケティングなど「顧客視点のDX」の融合によって、顧客価値の最大化、データ分析、集客の仕組み化などが実現できる。新たな顧客創出や、デジタル化による事業の仕組み化が構築されると、次の新規事業創出やその仕組み化が容易になるだけでなく、働き方、組織、事業の定義、社風などの変化を実感しやすくなる。そうすることでデジタルを中心とした好循環スパイラルが生まれ、自然とデジタルリスキリングも進む。この好循環を生み出し、企業成長につなげるためには、理念の共有が必須である。
「減らす」と「生み出す」の好循環スパイラルによる「成長」
(出所:小泊氏講演資料より抜粋)(出所:グランド印刷コーポレートサイトより抜粋)
(出所:講演内容を基にタナベコンサルティング作成)
