【第6回の趣旨】
日本国内において、人口減少、新築着工棟数の減少など、住宅・リフォーム・建設・不動産をはじめとする「住まいと暮らし業界」にとって厳しい未来が予測される。だが、当業界は人間の生き方に関わる領域であり、なくなることはない。当研究会では、自社の魅力を最大化し、本質的な価値を提供することで「顧客に選ばれる企業」であり続けるためのヒントを学ぶ。
第6回は、石山工務店より「旭川の住まい・暮らしにこだわり、継続的にナンバーワンの実績を誇る秘訣を学ぶ」をテーマに、同社の地域密着型ビジネスモデルについて学んだ。
開催日時:2024年7月18日(北海道開催)
はじめに
1958年創業の石山工務店は、2024年で66周年を迎える。代表取締役の石山実氏は、21歳で家業を継ぎ、「安定と継続」を理念に掲げて現在のビジネスモデルを構築してきた。
現在は、イシヤマホールディングスの傘下に、新築・リフォーム事業を展開する石山工務店、デイサービス事業を展開する弥栄、解体・廃棄物処理事業を展開するエースフォー環境開発というグループ経営を推進しており、旭川エリアにおける新築注文住宅では15年連続ナンバーワン、グループ売上高は40億円を超える。
石山氏は、エリア戦略において「会社の信用力が全て」と強調する。エリアにおける圧倒的な評判の良さが、80%を超える紹介率につながっているのだ。
石山工務店の創業66周年記念広告
※石山工務店ホームページより抜粋
顧客から感謝、紹介される仕組みをつくる
同社の紹介率が80%を超えているポイントとして、次の3つが挙げられる。
①年間100棟以上は受注しない
100棟以上建てると、アフターメンテナンスが疎かになる。これまでにも、棟数を100棟以上伸ばして営業担当者がアフターフォローできず、顧客が離れて衰退する企業を多く見てきた。また、旭川エリアの地域特性に徹底してこだわったプランを提出するため、設計・工務においては社長も確認するなど計8名がチェックに関わっている。
②やらないことを決める
本社から片道30分以上かかるエリアには施工しない、お願い・値引き営業をしない、などである。
③引き渡しとアフターメンテナンスに社長が徹底して取り組む
例えば、顧客の家族構成それぞれの名刺を作り、石山氏自ら引き渡し時に今後のアフターメンテナンスを約束する。
これらの取り組みによって、新卒1年目でも年間5、6棟売ることができる仕組みを構築しており、宣伝広告費も年間3000万円程度と同規模のビルダーと比較しても低い。
アフターメンテナンス地域ナンバーワン
同社は、アフターメンテナンスに徹底してこだわっている。ポイントは、次の3つだ。
①全社員がアフターメンテナンス要員
アフターメンテナンスを別組織にすると、組織が吹き溜まり化する。全社員がメンテナンスに対応できる体制を構築している。
②「住まいメイト」が2、3カ月に1度必ず訪問し、 30年間無料定期点検を実施
顧客のお困り事の解決が、その後のリフォーム受注につながっている。緊急メンテナンスは365日、24時間対応。1年目は4回、2年目以降は毎年1回、定期点検とアフターメンテナンスはハガキだけでなく、ホームページのオーナーさま専用サイトからも受け付けている。
③社長が全てのアフター金額や実施について判断を行う
同社は住宅データベースをつくっており、今まで施工した全ての物件について的確な判断ができるような仕組みを構築している。
アフターメンテナンス依頼は迅速かつ確実に対応し、「アフター工事書」を使って保管・管理している
※石山工務店ホームページより抜粋
グループ経営で顧客ニーズと地域課題に貢献
多様な顧客の要望に応えるために、フランチャイズ(FC)加盟を活用している。新しいことに取り組むことで、社員の活躍の場が増えていく。新事業については、2年は赤字でも継続、3年目も赤字の場合は検討、4年目に赤字の場合は撤退と定めている。
また、旭川地域では空き家や高齢化が重要な課題になっている。2020年にホールディングス化した同社は、解体を専門とする事業を立ち上げるなど、今後の地域課題に貢献するための歩みを進めている。

代表取締役