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コンサルティングケース
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コンサルティングケース 2025.01.07

社員の本音と向き合うため「Engagement KARTE」を活用 京王パスポートクラブ

京王パスポートクラブ 経営管理部 企画担当 兼 システムセンター マネージャー堀内 朋氏(右)
タナベコンサルティング 戦略総合研究所 本部長 細江 一樹(左)

 

関東の主要私鉄の1つである京王電鉄を中心に、不動産や流通など多角的に事業展開する京王グループ。その一員としてクレジットカードに関する業務やポイントプログラムの運営を行うのが、京王パスポートクラブである。同社は、タナベコンサルティングが提供するエンゲージメントサーベイ「Engagement KARTE(エンゲージメントカルテ)」を導入し、社員の声を経営に反映する取り組みを推進。自社の成長の基盤となる、より良い職場環境をつくる施策をどのように進めたのか、同社の経営管理部企画担当兼システムセンターマネージャーの堀内朋氏に聞いた。

 

京王パスポートクラブの事業概要

 

細江 まずは、京王パスポートクラブの概要についてお聞かせいただけますか。

 

堀内 京王パスポートクラブは、京王線沿線を中心に、便利でお得なコミュニティーカードを提供する企業です。三井住友カードと提携した「京王パスポートVISAカード」やポイント専用カードを発行し、会員様向けに京王線や関連施設の利用に応じたポイントサービスを提供。

 

顧客ロイヤルティーを向上させ、京王グループ全体をつなぐ役割を果たしています。

 

最近では住信SBIネット銀行を所属銀行とする銀行代理業者として、「京王NEOBANK(ネオバンク)」という銀行サービスも開始しました。このように、当社は常に新しいサービスを模索し、地域の皆さまにとって価値のある存在であり続けることを目指しています。

 

細江 カードの保有者数は何人くらいですか。

 

堀内 2024年11月現在、保有者は約170万人超です。沿線の住民の約半数が何らかの形でカードを持っている計算になります。これは、地域の皆さまにとって便利で価値のあるサービスを提供できている証拠だと考えています。

 

当社のカードは、単なる決済手段にとどまらず、地域の商店やサービスと連携することで、利用者に多くの特典を提供しています。例えば、特定の店舗での割引や、ポイントの還元率が高くなるキャンペーンなどを定期的に実施しています。

 

細江 それは素晴らしいですね。京王グループの一員として、地域のコミュニティーをつなぐ重要な役割を担っているのですね。

 

堀内 はい、その通りです。当社は、地域の皆さまにとって便利で価値のあるサービスを提供することを目指しています。特に、ポイントサービスを通じて、京王グループ全体のシナジーを高めることに注力しています。ポイントは、単に貯めるだけでなく、地域の商店での利用や、京王グループの他のサービスとの連携を通じて、地域経済の活性化にも寄与しています。

 

当社は、地域の皆さまと共に成長し、地域社会に貢献することを使命としています。

 

 

社員の声を客観的に聞くため、社外サーベイを活用

 

細江 タナベコンサルティングのEngagement KARTEを導入された経緯についてお聞かせください。

 

堀内 当社は従業員数が50名超となり、社員一人一人の声をしっかりと把握することが難しくなっていました。そこで、社員の本音を知るために、社外の力を借りてエンゲージメントサーベイを実施することにしました。

 

社内でアンケートを取ると匿名性が保たれにくく、正直な意見が集まりにくいと考えました。また、社外の専門家の視点を取り入れることで、より客観的で実効性のある改善策を見いだせるとも考えたからです。

 

細江 導入に至るまでのプロセスや、決定に際しての社内の反応についてもお聞かせいただけますか。

 

堀内 導入を決定するまでには、社内でいくつかのステップを踏みました。まず、エンゲージメントサーベイの必要性を経営陣に説明し、社員の声をしっかりと把握することの重要性を共有。特に、社員のエンゲージメントが企業の成長に直結するという点を強調しました。経営陣からは、専門家を活用することで、より客観的なデータを得られるという点が評価され、導入決定となりました。

 

細江 そのプロセスの中で、何か課題や障壁はありましたか。

 

堀内 コスト面での懸念がありました。コンサルティングサービスを利用するには、一定の投資が必要になります。しかし、社員のエンゲージメントを高めることが長期的な利益につながるという点を、具体的なデータや事例を用いて説明しました。例えば、エンゲージメントの高い企業は、離職率が低く、生産性が高いという研究結果を示し、投資の価値を理解してもらいました。

 

 


  Engagement KARTEのレポート見本

 

 

 

サーベイの結果を受け止め、職場環境改善の決意を表明

 

細江 実際にサーベイを実施して、どのような結果が得られましたか。

 

堀内 サーベイの結果は、当社にとって非常に貴重なものでした。社員のエンゲージメントスコアは予想よりも低く、経営陣はショックを受けていました。また、社員は50人50通りの考え方を持っていると可視化されたころが、変化への第一歩としてとても良かったと思います。

 

細江 スコアについて、具体的には、経営陣を信頼しているかという項目や、自社が将来成長していくと思うかという項目で低い評価が出ました。また、今の仕事以外にこの会社で取り組みたいことがあるか、将来この会社でなりたいイメージができるかといった項目でも、社員のモチベーションに課題があることが分かりました。

 

私が経営陣の皆さまに役員会でサーベイの結果報告をした時のことをお話ししましょう。報告を始めた時、役員の皆さんは非常に真剣な表情で耳を傾けていました。特に、経営陣への信頼度が低いという結果については、皆さん驚かれていました。私は、これが単なる数字ではなく、社員の本音を反映したものであることをはっきりとお伝えしました。

 

社長は毎月、トップメッセージを全社に発信するほかさまざまな取り組みをされ、社員とのコミュニケーションを取っていらっしゃったのですが、社員には伝わっていないということが、結果として表れた。役員陣も、社長が話されていることを日常の業務の中で社員に伝えていなかったということが、明確になった瞬間でした。

 

ただ、ここからが京王パスポートクラブの素晴らしいところです。この結果を正面から受け止め、さまざまな取り組みを開始されました。

 

まず、サーベイの結果を社員に伝えるリポートを作成されました。総合評価とエンゲージメント傾向の要約版です。項目別の分析では、実際のアンケート結果のダイジェスト版を、タナベコンサルティングも支援しながら作りました。そして、「スコアは低かったけれども、企業理念の理解・共感度は高いなど、良い評価項目もあった。しかし、全体として課題がある状態だということを、会社と社員の双方が強く認識する必要がある」という総合評価をしました。

 

実は、このレポートの一番下では、「今後に向けた取り組み」として、「この結果を踏まえ、より『働きやすい環境』を目指して全社を挙げて取り組んでいきます」という決意表明(宣言)をされています。こういう前向きな姿勢が、全3回の「ダイバーシティ研修」の実施にもつながったのだと思います。

 

 

改善に向け、ダイバーシティ研修や評価者研修を実施

 

細江 ダイバーシティ研修の内容について教えていただけますか。

 

堀内 ダイバーシティ研修では、まず社員が自分自身の価値観や偏見を見直すワークショップを行い、異なるバックグラウンドを持つ同僚とのコミュニケーションが円滑になることを目指しました。

 

グループワークには役員も参加し、フラットな立場で異なる意見を尊重し合うことや、実際の業務における具体的な事例を用いて、どのように多様性を生かすかを考えるセッションも設けました。

 

細江 さらに、評価者研修も実施されました。

 

堀内 評価者研修では、マネージャーが適切なフィードバックを行えるようにすることを目的としました。具体的には、フィードバックの際に注意すべきポイントや、建設的な評価の方法について学びました。また、評価基準を明確にし、社員が自分の成長を実感できるような評価制度を構築することを目指しました。この研修を通じて、マネージャー自身も成長し、より良いリーダーシップを発揮できるようになったと感じています。

 

細江 こうした1つずつの取り組みが積み重なって、最終的に大きな変化を生むのだと思います。他に実施された施策はありますか。

 

堀内 すぐにできることは何かと考え、処遇面で社員の年間休日を増やしました。また、60歳定年で再雇用される方の処遇も引き上げました。

 

さらに、社長と従業員会の代表の社員が直接話す場を設けました。社員がどういうことを望んでいるのか、声を上げてもらって、直接ディスカッションする機会です。こうした取り組みは初めてですが、社員の良い感想を耳にすると、社長と社員の距離が縮まっていると感じます。

 

細江 Engagement KARTEは、企業にとっての健康診断のようなものだと考えています。私たちも健康診断を受けると、肝臓の数値が悪いとか、さまざまな結果が出ます。それを見て見ぬふりをするのではなく、しっかりと向き合い、治療という対策を講じることが重要です。結果を真摯に受け止め、改善に向けて行動する京王パスポートクラブの姿勢は本当に素晴らしいと感銘を受けています。

 

 

調査には社員と向き合う覚悟が必要

 

細江 調査を行ったら、結果を伝えるだけでなく、社員の声に応えることが大切です。社員に対して、会社がどのような姿勢でいるのかを示すことが求められます。ですから、調査を実施するには、それ相応の覚悟が必要です。

 

多くの企業がサーベイの必要性を認識しているものの、実際に行動に移すには勇気がいるため、踏み切れないことも少なくありません。そうした中、社外サーベイの力を借りて正確な検証を行おうと決断されたことは、とても素晴らしいと思います。

 

堀内 今後も、社員の声を大切にしながら、社員が自分の成長を実感できる環境を提供し、自社全体の成長につなげていきたいと考えています。

 

細江 京王パスポートクラブは、調査結果をもとにさまざまな研修や施策を積み重ね、社員と向き合っている点が非常に印象的です。タナベコンサルティングとしても、Engagement KARTEを提供するだけでなく、結果を見て一緒に改善策を考え、伴走させていただくことができ、大変貴重な機会をいただいています。今後も研修以外の提案も含め、しっかりとサポートさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

 

 

 

対談者PROFILE

京王パスポートクラブ 経営管理部 企画担当 兼 システムセンター マネージャー 堀内 朋氏
大学卒業後、2008年に京王電鉄株式会社に新卒として入社。その後、鉄道現場での実習などを経て、京王プラザホテル札幌への出向や京王電鉄本社での業務(法務・М&A・ホテル戦略業務等)を経験し、2022年7月より京王パスポートクラブに出向し、現職に従事。現在は、京王パスポートクラブの年度計画作成、収支管理、人事業務およびシステムに関する業務など、全社的および一般管理に関する業務に広く携わっている。

タナベコンサルティング 戦略総合研究所 本部長 細江 一樹
タナベコンサルティング大阪本社と北海道支社にて、地域の大手・中堅企業のコンサルティングに従事。特に、学校・教育業界の経営改革やマネジメントシステム構築を強みとしており、大学・専門学校・高等学校・こども園などの経営改革の実績を持つ。HR分野に強く、制度構築を通じた人材育成はもちろんのこと、高齢者・女性の活躍を推進する制度の導入などを通じ、社員総活躍の場を広げるコンサルティングに高い評価を得ている。

 

 

  • (株)京王パスポートクラブ
  • 所在地 : 東京都渋谷区幡ヶ谷1-2-2 京王幡ヶ谷ビル
  • 設立 : 1985年
  • 代表者 : 代表取締役社長 安永 克彦
  • 従業員数 : 59名(パート・アルバイト含む、2024年12月現在)