人的資本研究会は、「人材こそ“資本”!人への投資がこれからの企業価値を決める!」をテーマとしております。そこで重要になるのがエンゲージメントを高める取り組みです。エンゲージメント向上には「成果の見える化」と「社員へ現状と対策を見える化」の“2つの見える化“がポイントとなります。
第4回では、活育サイクル(採用・育成・活躍・定着)を磨くアプローチを特別ゲスト3社にご講演いただきます。2024年8月27日(愛知開催)
はじめに
愛知県岩倉市を拠点とする、 1819年創業の200年企業である石塚硝子。元々は硝子食器製造などからスタートした会社であるが、現在は紙容器やプラスチック容器まで事業展開を行っている。新型コロナウイルス感染症をキッカケとして、顕在化していなかった課題が前倒しで表面化したことや、ニューノーマルの定着により、消費者の行動や意識が大きく変化した背景で長期的な視点で会社の方向を示すべきと考え、2019年にISHIZUKAGROUP2030を策定。ISHIZUKAGROUP2030のコンセプトは、「挑戦し続けることにより、躍動する企業へ」に決め重点ポイントを3点に絞った。(1)2030年度連結営業利益50億円、(2)ISHIZUKAGROUPを支える「ヒトづくり」、(3)環境と調和した持続可能な未来社会への貢献としている。20230年の「ヒトづくり」を目標にする中で、少子高齢化による人財不足や、ライフスタイルの変化など将来考え得る困難な状況を突破していくために、事業部間シナジーを発揮すべく社長直轄の未来挑戦部を設立。あえて「委員会」や「プロジェクト」という枠ではなく「部」とすることで、事業部間のシナジーを活かせる組織づくりと、長期的な視点で同社グループを牽引できる人財を育てることに取り組んでいる。
未来挑戦部の設立の目的
未来挑戦部を経験したメンバーが2030年以降に多く在籍していることで、仮に人が減っても今に負けないスピードと質で意思決定ができる会社にしたいという目的がある。
社内の問題では、「今どうするのか」という直近の議論が多く、まだまだ知見や経験の乏しい中堅・若手メンバーが意見を言える場が少ないと感じており、未来挑戦部では未来を見据えてバックキャスティングすることを重視している。
これまでの同社は、「こんなことをしないといけない」という使命感で仕事をすることが多かったが、多様化している時代に中堅・若手の「こういうことがしたい」という気持ちを具現化することに重きを置いている。具現化するために人事KPIとして挑戦人財スコア(楽しくワクワクしているか)をアンケートしておりワクワク仕事をしたいという綺麗ごとを未来挑戦部を使って形にしている。目的の1つ目は、横断課題への挑戦。2つ目は、そこに関わる人財の育成としている。中堅・若手社員の意思決定が少ない会社だからこそ未来挑戦部では、多くの意思決定をする機会を創造している。2023年の設立時8名だったメンバーは2024年には40名超える集団になってきた。
ISHIZUKA GROUPを支えるヒトづくりマンダラチャート
未来挑戦部が果たす機能
未来挑戦部では人財育成、インナーブランディング、DX推進、新事業創出に至るまで幅広く活動をしている。
➀次世代幹部人財育成チームでは、係長を対象とした戦略リーダー研修の企画・実行をしている。②モノづくり人財育成チームでは、技能職を対象に、5S及び標準化を学ぶPコース研修、製造原価及び設備投資を学ぶEコース研修を実施している。③広報ハードチームでは、社内コミュニケーションの活性化を目指し、社内情報の透明化に取り組んでいる。④広報ソフトチームでは、若手社員が社内を取材し全社に発信するヤングライター活動の企画・運営をしている。⑤生産現場改革チームでは生産現場が抱える課題を抽出し改善を行っている。⑥DX推進チームでは、全従業員を巻き込んだDXの推進の旗振り役を担っている。⑦その他、次世代パートナー構築チーム、海外探索チームなど、多種多様なチームを作り、活動を実施展開している。
戦略リーダー研修の企画・実行 ~中堅若手人財の視座向上を目指して~
縦割り組織への解決
2016年度経営方針の目標・課題の1つを「会社を横断した機能の強化」と決め、組織の枠を超えたメンバーによるクロスファンクショナルプロジェクト(以下、CFP)を開始した。
当初のプロジェクトメンバーはジュニアボード、ネクストボード、クロスボードといった次期幹部候補を対象とした研修のメンバーであり、CFPはアウトプットの場として最適な環境であった。活動が進むにつれて中堅・若手がアサインされるようになり、活動はさらに活性化されていく一方で、中堅・若手にとっては責任・権限がないことや活動への評価がされにくいことなど、心理的にも肉体的にも負担を感じるメンバーが増え、不満の声は徐々に高まっていった。同じことを繰り返さぬよう、未来挑戦部では業務メンバーは本業の20%を、協力メンバーは10%の業務時間割合としている。また、未来挑戦部に関わる業務時間の労務費は本社が振替にすることで事業部の利益になるように仕組みに変化させ、未来挑戦部での評価を本業の上長に提出することで、未来挑戦部での評価が人事評価に反映できるような設計も行った。また、同社は人事異動が活発に行われないため専門性だけが高くなる傾向にある。汎用的な能力が問われる昇進試験や面接などを行う際に挫ける社員が多く、未来挑戦部では本業とは違う仕事をすることで、 「専門的能力」と「汎用的能力」を高いレベルで兼ね備えた人財を育てている。
グループ会社を横断する ~社内コミュニケーションの活性化~
未来挑戦部 部長 岡村 学 様
未来挑戦部 江﨑 結花 様