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研究リポート
DX戦略推進研究会
本研究会では、データ活用による付加価値の向上と人材育成の推進の要諦を学びます。
研究リポート 2024.12.13

ITの力で余裕を持った物流を実現 サンコーインダストリー

第2回の趣旨
当研究会では、データの活用による付加価値向上と人材育成の推進、そのための骨太のDX戦略をテーマとしてDX推進のヒントを提供。生成AIなどの先進的なDX推進活動による顧客とのコミュニケーションモデルの創造や、革新的な業務改善に取り組む企業を紹介する。
第2回のテーマは、「データの源泉は現場にあり」。経営目的達成のために、いかに効率よく現場のデータを収集し、活用するか。全社員のベクトル統一、実行力強化の重要性について、特別ゲスト2社による講演を通じて参加企業へ提供した。
2024年11月15日(大阪開催)

 

はじめに

大阪市西区に本社を構えるサンコーインダストリーは、200万種類以上のネジおよびファスニング関連商品を扱う専門商社である。

同社の物流センターは、「ものづくり日本一」「ねじの製造日本一」と呼ばれる東大阪市にある。ねじの産地の近くに物流センターを配置することで、入荷の待ち時間削減を実現している。

また、自動倉庫化も実現しており、従来の倉庫に比べて垂直方向のスペースを最大限に活用できるため、限られた土地でより多くの在庫を保管している。さらに、商品の入出庫作業を迅速に行うことで、人力による作業に比べて時間を大幅に短縮。作業者の負担が軽減され、業務の生産性向上と顧客への迅速な対応を実現している。


サンコーインダストリー本社
出所:サンコーインダストリーホームページ


創立60周年記念特設サイトをオープン
出所:サンコーインダストリーホームページ

物流とサプライチェーンの最適化

産地に近い物流センターを設置することで、調達リードタイムの安定化と入荷に関する長時間の順番待ち回避を実現している同社は、上流工程を含めた全てのサプライチェーンを意識した物流設計に取り組んでいる。

現在は約200万種類の商材を取りそろえ、今後は約300万種類を目指す上で、受注の傾向を分析し、早期の締め処理を可能にする取り組みを行っている。独自の数理モデル・受注可能性リストを活用し、リードタイムに余裕を持たせている。


サンコーインダストリーの自動倉庫

データを活用した物流出荷業務の改善

同社の出荷業務は、1日のうちに何回もオーダーが発生し、あらゆる時間帯に受注が行われるという課題があった。荷合わせ作業が必要となるため、人力での業務が増え効率が低下していた。

発送個数の増加に伴いラストオーダーからの発送作業が増え、物流センターの終了時間も遅くなっていたが、解決策として、これまでの受注傾向を分析し、約5000社の顧客に対して最適な締め処理時間を設けることで業務の効率化に成功した。

顧客別に締め処理時間を設定することで、発送個数が増加しても物流センター内の残業時間は半減し、終了時間も平均1時間11分早まった。運送会社への荷渡し時間も大幅に短縮され、顧客の利便性も向上した。

同社が連携する荷渡し運送会社は22社におよび、得意先が自社に合った運送会社を選択することで、物流のリスク分散にも寄与している。


サンコーインダストリーの出荷自動判別システム

PROFILE
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奥山 淑英 氏
サンコーインダストリー株式会社
代表取締役社長