※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。
執行役員 NetSuite事業統括
日本代表 カントリーマネージャー
渋谷 由貴 氏
NetSuite の日本担当役員として、日本におけるビジネスの成長とカスタマー・サクセスの推進をミッションとし、日本における営業戦略とオペレーションの推進を担当。富士通、三井物産でのセールス経験を経て、日本マイクロソフト、日本オラクルでマーケティング、ビジネスディベロップメント、セールスマネジメントを歴任。Domo での VP、AWS でのエンタープライズクラウドセールス統括経験を経て、2023 年 7 月より現職。
日本オラクルは、米国に本社を置くOracle Corporationの日本法人であり、データベース管理システムやクラウドソリューション、エンタープライズ向けソフトウエアを展開している。外資系企業ではあるものの、日本の株式市場に上場し、日本に根付いたビジネスを展開している。
当社はクラウドやAI分野へ積極的な投資を行っており、日本市場に対しても今後10年間で80億ドル超の投資を計画している。当社の中堅・中小企業向けの主力製品である「NetSuite (ネットスイート)」はクラウドERPのパイオニアとして、現在では世界で4万社以上の企業に採用されている。
NetSuiteが提供する価値
出所:日本オラクル講演資料
当社は、中堅・中小企業が抱えるデジタル化の課題として、①システム、②カルチャーの2つを挙げている。日本の中堅・中小企業はデジタル化について多くの課題を抱えており、海外企業と比較して遅れをとっている印象である。
米国の経営者と話した際、彼らは「人に任せるとミスが多く信頼性に欠けるため、システムで対応できることはシステムに任せる」という考え方を持っていた。一方、日本の企業では“Excel(エクセル)職人”などの人材が手作業で業務をこなし、システム化されていないケースが多くみられる。
日本企業は優秀な人材が多く、その優秀さが逆に効率化を妨げている。システムにできることはシステムに任せて、優秀な人材はその人でなければできない業務に割り当てるべきである。
システム以上に深刻な課題は、カルチャー(文化)にある。日本の企業文化は、物事を「石橋をたたいて渡る」ように慎重に決める風土が根強く、意思決定に時間がかかることが多い。メンバーは、自分に与えられた仕事をこなすことに集中するばかりで、トップ層が判断を下すまで待つ傾向が強い。
デジタル化を進めるためには、トップの強い意思が不可欠だ。あるメーカーでは、システムがバラバラでエクセルによる属人的な作業が常態化しており、購買・販売・生産管理のデータが一元管理されていなかった。エクセル職人が業務を支えることで日常の業務は回っていたものの、この属人化がデジタル化の障壁となっていた。
そこで、タナベコンサルティングのサポートを得てNetSuiteを導入し、システムの統合に踏み切った。変革に着手した結果、属人化を脱却し、データの一元管理を実現したのだ。このように、トップの意思決定とリーダーシップがデジタル化の成功を左右する。
データ活用の最も重要な要素として「鮮度」が挙げられる。データが古かったり、誤った内容だったりすると、意思決定の精度を損なうだけでなく、企業の成長に悪影響を与える。そのため、鮮度の高いデータをリアルタイムで取得できる環境と、鮮度の高いデータを正確に把握し、管理できるツールの導入が不可欠である。
加えて、データの「統合性」にも注目すべきだ。企業が持つデータは、発注データや在庫データ、顧客データなど多岐にわたっている。個々のデータが新しくても、それらが単独で存在する限り、企業にとって真に価値のある洞察を得ることは難しい。異なるデータを統合して見ることで、新たな相関関係や全体像が浮かび上がり、経営に有益なインサイトを得ることができる。NetSuiteのようなクラウドERPは、この統合化を容易にし、多種多様なデータを1つのプラットフォーム上で管理できる。
かつては、トップだけが重要なデータや機密性の高い“マル秘”データにアクセスし、意思決定を行うことが経営陣の特権だったが、限られた層だけがデータを扱う状況では、組織全体での迅速な意思決定が難しく、変革が進まない。現代のビジネス環境では、「データの民主化」が不可欠である。経営層だけでなく、全社員がリアルタイムでデータにアクセスし、各自がデータに基づいて自発的に行動できる環境を構築することで、全社的なデータ活用が促進される。
NetSuiteは、この「データの民主化」を通じて、全社員が自らを経営の一部として捉え、オーナーシップを持って業務に取り組む「ガラス張り経営」の実現を目指している。いきなりデータドリブンになることは難しいが、トライ&エラーを繰り返しながらデータに触れる訓練を重ねていくことが重要だ。データを日々分析し、業務に生かすことを習慣化し、カルチャーとして根付かせることがデジタル化成功の鍵である。
また、経営者自らがデータを活用する姿勢を見せることで、社員も変革への一体感を感じることができる。社員一人一人が経営に参加している感覚を持つことで、会社の一員として自分事化し、チームが一丸となって目標達成に向かうことが可能となる。
クラウドERPの導入は、中堅・中小企業や成長企業にとって多くのメリットがある。クラウドERPの導入には高額な費用が発生すると思われがちだが、実際には企業の規模やニーズに応じたコスト設定が可能であるため、自社の成長ステージに合わせて無駄なく利用できる。ユーザー単位でのスモールスタートが可能であり、短期間で費用対効果の回収が期待できることが、クラウドERPの強みと言える。また、企業のリソースを効果的に活用し、本業に集中するための仕組みとして、成長志向のある企業に最適な選択肢となっている。
クラウドERP導入における主な障壁は、過剰なカスタマイズ文化にある。業務に合わせてシステムをつくり込みすぎると導入が長期化し、成果が出ないケースが多い。企業は、過去のやり方に固執せず、業界のベストプラクティスに合わせる「Fit to Standard」を採用することで、迅速かつ効果的な導入が可能となる。
ある企業では、基幹業務を別々のシステムで運用していたため、データの分断やレポート作成に膨大な時間がかかっていたが、NetSuiteを導入することでレポート作成時間を25%短縮し、リアルタイムでのデータアクセスを実現した。
日本企業が国際競争力を維持し、持続的な成長を遂げるためには、デジタルシフトが不可欠だ。特に、中堅・中小企業にとっては、クラウドERPの導入がビジネス効率化の鍵となる。
NetSuiteは、クラウドERPのパイオニアとして企業がデータを活用し、競争力を強化するための強力な支援を提供している。NetSuiteの強みは、27の言語、190以上の通貨、160以上の税制に対応したグローバル対応力にある。このインフラは政府や軍の厳しい基準にも適合しており、成長企業についても、高水準のセキュリティーと安定性のもと利用できる。さらに、NetSuiteのAI機能は、4万社以上の導入事例に基づいたFit to Standardのソリューションを提供し、業界ごとに最適化した対応が可能だ。
日本企業がデジタルシフトとクラウド活用を成功させるためには、経営者のリーダーシップと、データの民主化による全社的なデータドリブン文化の構築が重要である。日本オラクルは、こうした企業の成長を支える欠かせないパートナーであり、日本企業が未来に向けてデジタル化を進め、成長し続けるための力強い支援を提供している。