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研究リポート
ホールディングス・グループ経営モデル研究会
6つのホールディング経営タイプをベースに、新たなグループ企業を研究します。自社がどのようなホールディングスモデルとして進化するのか、共に考えましょう。
研究リポート 2024.10.07

WELLZ UNITEDの成長の軌跡と、これからのホールディング経営 WELLZ UNITED

【第1回の趣旨】
今期のホールディングス・グループ経営モデル研究会のテーマは『ビジョナリーホールディングス~6つのモデルで逆風でも力強く成長する~』であり、第1回目のテーマは「ポートフォリオモデル」となる。
ビッグビジョンのもとに遠心力が働き、シナジーを発揮する事業ポートフォリオはいかにあるべきか。逆風の経営環境にあっても持続的な成長・進化をコミットするグループビジネスモデルを考える。
ゲストに株式会社WELLZ UNITED 代表取締役 井上 大輔氏を招き、事業ポートフォリオやそれを支える経営の在り方や組織体制を学ぶ。

開催日時:2024年9月30日(東京開催)

株式会社WELLZ UNITED 代表取締役 井上 大輔 氏

株式会社WELLZ UNITED
代表取締役 井上 大輔 氏

 

 

はじめに

 

第1回目のゲストである株式会社WELLZ UNITEDの代表取締役、井上大輔氏はホテルマンとして働いていたが、29歳の時に井上株式会社(事業会社)の3代目経営者に就任。就任時は借入金が多く、債務超過10億円の状態で会社を引き継いだ。就任後は企業を再生することに邁進していたが、就任8年目にフィロソフィー『毎日がちゃんと幸せで成長するいい会社』を掲げ、第二創業宣言を実施。直近では過去最高益となり成長を続けている。

 

企業経営をしていく中で、井上氏は「環境づくり」に徹底的に取り組んでこられた。VUCA時代の到来により事業・組織・経営・個人が大きく変化をする社会環境の中でその変化に対応する企業のかたちがホールディング経営である。

 

また、「環境づくり>実績」の考えのもと、ホールディングス体制を先に環境として整備し、事業・組織・経営・個人の成長を支えている。

 

 株式会社WELLZ UNITED代表取締役 井上氏による講演の様子。 同社の組織図は、経営側が「経営をサポートする」ことを表現するため、逆ピラミッド型となっている。
株式会社WELLZ UNITED代表取締役 井上氏による講演の様子。
同社の組織図は、経営側が「経営をサポートする」ことを表現するため、逆ピラミッド型となっている。


 

まなびのポイント1:多角化プラットフォームとしてのホールディングス

 

株式会社WELLZ UNITEDは、中核会社の井上株式会社の中に総合電気設備資材の販売・設計・施工・保守メンテナンスからIoTソリューション事業、DX・AIソリューション事業、防災ソリューション事業、いちご農園事業、クラフトビール事業と多くの事業を展開している。現在は中核会社内に多くの事業が存在しているが、「1社・1事業・1ブランド」を目標として事業の多角化を目指している。

 

ホールディングスの役割として、「経営を管理する」のではなく「経営をサポートする」ことがプラットフォームの役割であると定義している。「管理はコスト」であり「経営サポートは事業成長を共に実現する」ことである。同社は「サポート(成長支援)」するホールディングス体制で事業成長を実現している。

 

 

まなびのポイント2:マネジメントシステムの拡張性

 

株式会社WELLZ UNITEDでは『Wellz Management Design(信頼スパイラルマネジメント)』を提唱・実践している。「主体的実行・個の尊重・相互支援」をベースとして、

 

「We Training(ウィトレ)」=成長支援・成長機会の提供

「We Place(ウィプレ)」=最幸の場づくり、価値づくりの場の提供

「We Work(ウィワーク)」=働き方、成果分配、福利厚生

「Idea Spiral(アイデア提案)」=経営参画、卓越性の追求

 

これらをホールディングスが提供し、「互いに尊重し合い、信頼のもとで成り立つマネジメントシステム」で「管理しないマネジメント」を実践している。企業文化が一つのマネジメントシステムを構築し、ホールディングスが中心となって展開している。

 

株式会社WELLZ UNITEDが提唱・実践している「信頼スパイラルマネジメント」
株式会社WELLZ UNITEDが提唱・実践している「信頼スパイラルマネジメント」

 

 

まなびのポイント3:ホールディング経営は所有と運営の未来型再構築

 

ホールディングス体制に移行した背景として、「事業承継」は切っても切り離せない関係であり、井上氏はホールディング経営を「所有と運営」の分離と表現している。経営を任せられる経営者をつくることは簡単ではないが、事業責任者を多くつくり、事業運営を任せることは可能と考える。そのために事業別のP/L・B/S・CFを整理して各事業の理解を深め、事業運営を任せる体制の整備を進めている。

 

「所有と経営」という言葉はよく耳にするが「所有と運営」という表現を使っているのは斬新であり、新たなホールディング経営の形を表現していると言っても良い。

 

同社では事業承継に備え、「事業」「組織」「人」を未来型に作ることのできる経営スタイルがホールディング経営であると位置付けている。

タナベコンサルティング村上(写真左)と対談を行う井上氏(写真右)
タナベコンサルティング村上(写真左)と対談を行う井上氏(写真右)